「Yield Guild Games(YGG)」の2240万ドル(約26億円)の資金調達や「GuildFi」の600万ドル(約7億円)のシードラウンドに見られるように、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)やパンテラ・キャピタル(Pantera Capital)、DeFiance Capitalなどの大手ベンチャーキャピタル(VC)は暗号資産やNFTを活用したゲーム(以下、NFTゲーム)そのものではなく、NFTゲーム、あるいはメタバースの共同組合ともいえる「ゲームギルド」に注目している。
ゲームギルドは、プレーヤーに必要な資金とツールを提供することで「プレー・ツー・アーン(プレーして稼ぐ)」ゲーム市場を拡大している。そしてVCは、ゲームギルドに出資することで、間接的にプレーヤーがゲームで得た収益の一部を手にしている。
例えば、人気のNFTゲーム「アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)」では、最初にプレーに必要なキャラクターの「アクシー」を購入するためには、今ではかなり高額な初期投資が必要になる。そこでユーザーは、ゲームギルドから必要なキャラクターを借り、ゲームで稼いだ収益の一部をギルドに支払っている。
2021年がNFTゲームとゲームトークンの1年だったとすれば、2022年は「アクシー・インフィニティ」や「ザ・サンドボックス(The Sandbox)」など、人気ゲームをサポートするゲームギルドの1年になるのだろうか。判断は時期尚早だが、暗号資産投資家はすでに資金を注ぎ込んでいる。
ギルドが注目される理由
従来のゲームギルドは、ゲームを一緒にプレーする人たちが集まった組織だったが、NFTゲームギルドはゲームを一緒にプレーしない。その代わり、新規ゲーマーをサポートするプラットフォームになろうとしている。
DappRadarによると、アクシー・インフォグラミーのデイリーアクティブユーザーは、当記事執筆時点、約10万6000人にのぼる(11月のピーク時の約13万5800人からは減少している)。
投資家がNFTゲームギルドに投資する理由はここにある。数多くのゲームが、次のアクシー・インフィニティを目指している。
「ハイクオリティなギルドは事実上、最高のゲーム環境を備えたメタバースを示す指標となるだろう」と暗号資産投資会社DeFinance Capitalのシニア投資アナリスト、ダリル・ワン(Darryl Wang)氏はツイートしている。
DeFinance Capitalは、GuildFiとMerit Circleをはじめ、複数のNFTゲームギルドに投資している。
プラスのフィードバック・ループ
GuildFiの共同創業者アカラデット・ディオパニッチ(Akaradet Diawpanich)氏によると、NFTゲームギルドは、新しいプレーヤーをゲームに参加させ、ゲームに必要なアイテムを購入してプレーヤーに貸し出すとともに、さまざまなゲームに投資し、潜在ユーザーの獲得を支援するという「プラスのフィードバック・ループ」を作り出す可能性があるという。
またディオパニッチ氏は、新型コロナウイルス感染拡大の間にゲーム内アイテムのレンタル需要が高まり、GuildFiは拡大を始めたと述べた。
GuildFiはまた、さまざまなゲームに対応したサービスも展開している。例えば、アクシー・インフィニティのプレイヤーは、ゲームで使うトークン「SLP」の保有量などをGuildFiで確認できる。
GuildFiは最終的にNFTゲームの動画配信プラットフォームを目指しているという。
なぜトークンなのか?
当然ながら、YGG、GuildFi、Merit Circleといった2021年に成功したギルドは、すべて独自トークンを備えている。だが、その中で最も評価されているYGGでさえ、CoinGeckoによると、時価総額は4億6100万ドル。アクシー・インフィニティ(AXS)の66億ドル、ディセントラランド(MANA)の44億ドルにはまだまだ及ばない。
北京のブロックチェーンデータ会社「TokenInsight」のウェイン・ジャオ(Wayne Zhao)氏は、NFTゲームギルドに関するレポートに、従来のゲームではいくつかのギルドはコミュニティのリーダーが特定のゲームを盛り上げるために、ゲーム会社からお金を受け取っていたことが明らかになり、良くない結末を迎えたと記した。
だがトークンによって、従来のゲームギルドの中央集権的な課題を解決できる可能性があるという。
「コアとなるのは、メンバーにとってトークンはグループの意思決定プロセスに参加するインセンティブになっていること」とジャオ氏はギルドのガバナンスに触れ、異なる動機を持つさまざまな人たちをまとめ、共通のインセンティブに向かわせることができると述べた。
一方、DeFiance Capitalのワン氏は「従来のゲームギルドは、ソーシャルなコーディネーターとして機能するが、それ以上ではない。NFTゲームギルドは、プレーヤーが使用し、興味を持っている暗号資産の性質を考えると、より重要な経済的役割を担っている」とコメントした。
ゲームギルドのデメリット
とはいえ、ゲームギルドがトークンを持つことの問題点も明らかだ。
YGGのホワイトペーパーによると、YGGトークンの価値は、NFTを含めて、YGGが保有する資産の利回りに大きく依存するという。つまり、トークンのパフォーマンスは、NFTのみならず、NFTゲームの人気にも依存する。
これはまた、NFTゲームギルドの最大のリスクでもある。つまり、NFTゲームがセクターとして失敗に終われば、ギルドも必然的に失敗する。
「NFTゲームは今、プレー・ツー・アーンに集中しており、多くのNFTゲームは本質的にねずみ講的な色彩を帯びているように見える」とジャオ氏はレポートで述べている。
当記事執筆時点、CoinMarketCapによると、NFTゲームセクターの時価総額は24時間で3.97%上昇した。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto VCs Are Making a Big Bet on Gaming Guilds. Why?
※編集部より:タイトルと本文を一部変更して、更新しました。