まわりから見れば、金持ち集団がどうでもいい議論をしているように思えるかもしれない。
だが「Web 3.0」をめぐって、ジャック・ドーシー氏とベンチャーキャピタリスト(VC)らがツイッターで議論していることは、長年の問題、すなわち、どの暗号資産(仮想通貨)がベストかのみならず、何のために存在するのかという議論への答えになるかもしれない。
マキシマリストの不信感
議論は、真に分散化された(=非中央集権型の)インターネットとはどのようなものか、そしてその構築において、さまざまなステークホルダーはどのような役割を果たすのかという重要な問題を浮き彫りにしている。
ビットコイン支持派として知られるドーシー氏は、いわゆる「マキシマリスト」と呼ばれる陣営に加わったようだ。マキシマリストはビットコインのライバルとなる暗号資産や、ブロックチェーン技術の非通貨的な応用に強い疑いを持っている。
Web 3.0の議論では、マキシマリストもVCも、少数の大規模プラットフォーム(特に先月、ドーシー氏がCEOを退任したツイッター)に支配されているインターネットの現状を嘆いている。
さらにマキシマリストは、Web 3.0に携わる人たちが資金調達方法としてトークンを使うことに不信感を抱いている。VCがそうしたトークンの大口保有者であるという事実は、マキシマリストにとっては非難すべきことだ。
VCを含むWeb 3.0支持派は、インターネットの自由主義的な理想を実現するにはさまざまなアプローチが必要と反論している。つまり、トークンはネットワークの参加者の利益を調整でき、Web 3.0の開発者がVCに依存しているのは時代遅れの証券法の悪影響で、ビットコインは正真正銘のブレイクスルーだが、その有用性は限られており、マキシマリストは近視眼的だとしている。
「別のラベルを貼った中央集権的存在」
ドーシ氏は12月20日、Web 3.0を支配しているのはユーザーではなくVCであり、Web 3.0を「別のラベルを貼った中央集権的存在」にしているとツイートして物議を呼んで以来、多くの人をフォロー解除している。
You don’t own “web3.”
— jack⚡️ (@jack) December 21, 2021
The VCs and their LPs do. It will never escape their incentives. It’s ultimately a centralized entity with a different label.
Know what you’re getting into…
「あなたたちは『Web 3.0』を所有していない。
VCとLP(出資者)が所有している。彼らから逃れることはできない。Web 3.0は結局のところ、別のラベルを貼った中央集権的存在だ。
あなたが何に踏み入れようとしているのか知ってほしい…」
VC大手アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)の共同創業者マーク・アンドリーセン、コインベースCEOのブライアン・アームストロング氏、ジェミニの共同創業者のタイラー・ウィンクルボスなど、暗号資産業界の大物たちがドーシー氏からフォロー解除されている。アンドリーセン氏はその後、ドーシー氏をブロックした。
VCからの反発
ドーシー氏のようなビットコイン支持派は、人々が使う自由化のツールとして、金融の検閲に抵抗する方法として、ハイパーインフレに対抗する手段として、ビットコインネットワークの有用性を長い間、アピールしてきた。その点については、Web 3.0陣営にも異論を唱える人はいないだろう。
現在進行中の議論の争点は、急成長しているWeb 3.0における分散化のレベルだ。大口投資家はWeb 3.0に資金を注ぎ込んでおり、批判者の目には、資金と引き換えに過度のコントロールを手にしているように映っている。
ドーシー氏は、ビットコイン以外の暗号資産プロジェクトへの批判を強めている。ビットコインの分散化の精神に反すると考えているからだ。ツイッターでの議論は20日夜、最高潮に達した。
Web 3.0の投資家や支持派は、Web 3.0は「VCから逃れられない」というドーシー氏の主張に反発している。
コインベースの元CTOでa16zの元パートナー、バラジ・スリニバサン氏は、ドーシー氏のツイートに対して反対意見を述べ、ツイッター社の利益追求の姿勢が、いかに初期のスローガン「the free speech wing of the free speech party」を裏切る形で同社を形づくってきたかを指摘した。
「すべて嘘」とドーシー氏は応じ、議論が衰える気配はない。
Ethereum raised $0 from VCs. https://t.co/NE9xDTSEld
— Balaji Srinivasan (@balajis) December 22, 2021
21日、ドーシー氏は、Web 3.0の蛇口が肥えたベンチャーキャピタリストの口に水を注ぎ、痩せた個人投資家水滴が落ちるのを待っている様子を描いた画像をリツイートした。一方、スリニバサン氏もこの画像を引用して、イーサリアムプロジェクトは2014年、VCからではなく、パブリッククラウドセールで資金調達を行ったと指摘した。
その日の夕方、ドーシー氏はより直接的なツイートを行った。「VCが問題だ」と。
「aとzの間のどこかにある」
ドーシー氏の“煽り”は、暗号資産に積極的に関与しているもう1人の大物CEO、イーロン・マスク氏を連想させる。マスク氏も20日夜に「誰かWeb 3.0を見たか? 見つからない」とツイートして論争に加わった。
ドーシー氏は「aとzの間のどこかにある」とリプライし、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)のWeb 3.0支配をほのめかした。
またアンドリーセン氏がドーシー氏をブロックした際、ドーシー氏はスクリーンショットとともに、「I’m officially banned from web3(公式にWeb 3.0から追放された)」とツイートした。
I’m officially banned from web3 pic.twitter.com/RrEIAuqE6f
— jack⚡️ (@jack) December 22, 2021
Web 3.0支持派の大物たちをフォロー解除した後、ドーシー氏は複数のビットコインマキシマリストやオープンソースソフトウェア開発者をフォローした。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:ジャック・ドーシー氏(CoinDesk archives)
|原文:Jack Dorsey Goes on Unfollowing Frenzy After Web 3 Beef