今年は暗号資産(仮想通貨)の年となった。この見事な2021年を、通貨がどのように捉え直されたかに注目して、振り返ってみよう。
2021年、通貨は次のようなものになった。
ミーム
ドージコイン(DOGE)に対する熱狂、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)への関心の高まり、米人気掲示板サイト「レディット(Reddit)」上の投資コミュニティ「WallStreetBets」が、ゲームストップ(GameStop)などの「ミーム株」の価格を動かす力など、私たちは、金融と大衆文化の奇妙な融合を目の当たりにした。
伝統的金融の世界の人たち、ビットコインの世界の人たちの両方が懐疑的ではあるが、CoinDeskとしては、自分たちの正しさが証明されたような気がしている。それと言うのも、このようなトレンドは、私たちが繰り返し伝えてきたテーマを明確に示しているからだ。それはすなわち、通貨システムには、共通の価値に対する信念が必要だ、ということだ。
このような新しい通貨の時代には、新しいシステムを中心に形成される帰属意識と、コミュニティ間の信念を支えるために、アート、図像、ストーリー、その他の文化的産物が利用されることになるだろう。
政治化されたアイディア
過去1世紀、通貨システムの性質や構造について、真に疑問を提起した人はいなかった。通貨は政府によって発行され、銀行によって運用される。以上。
それが、ビットコインの登場に伴って、物事を考える新しい方法が突然登場した。ビットコイン誕生から長い間、政治階級はビットコインを無視できると考えてきた。
しかし2021年には、そのようなおめでたい無知状態は突然、不可能となった。私たちがそれを初めて目の当たりにしたのは、米上院におけるインフラ法案をめぐる議論においてだ。
暗号資産販売に対する税務申告条項の押し付けは、暗号資産がアメリカの政治の中心地・ワシントンにまでたどり着いたことを告げる、皮肉とも言える効果を持っていた。
政治家たちが暗号資産に課税を求めたという事実は、暗号資産が長期的な見込みを持つもの、信頼できる税源として認識されているというサインだ。
同じくらい重要なことに、暗号資産のロビー団体は、その条項のより厳格な部分に対する変更を求める取り組みにおいては最終的に失敗したが、米議会におけるその影響力が著しく大きくなったことを示した。
彼らがより好ましいと考えた修正を支持する政治化たちによる、党派を超えた大規模な連合が誕生し、この先も影響力を持つ存在になったことを示した。
同時期に、中央銀行デジタル通貨(CBDC)への代替としてのステーブルコインをめぐる議論も、アメリカ政府によりよく理解されるようになり始めた。11月に辞職したFRB(米連邦準備制度理事会)の元副議長ランドル・クォールズ(Randal Quarles)氏は、ステーブルコインは、中央銀行がアクセスできない民間セクターのイノベーションを活用することで、国外におけるアメリカの権力を支えることができるとさえ主張した。
それによって、夏から秋にかけて、ステーブルコインをめぐり、とりわけ、テザー(USDC)やパックス(PAX)など、ステーブルコインの発行業者が銀行ライセンス取得を義務付けられるべきかどうかをめぐる熾烈な議論の準備が整ったのだ。
そしてついに12月、下院の暗号資産公聴会では、1年前には誰も予想し得なかった事態が起こった。議員から、非常にしっかりとした知識に基づいた質問が出たのだ。議員の多くがついに、暗号資産を勉強してきたように思われた。
地政学的に重要な問題
暗号資産や、中央銀行が主導する代替的暗号資産の政治的影響に対して、連邦議員たちが目を覚ますのには時間がかかったが、中国が中央銀行デジタル通貨を急速に開発していることは、学術界やシンクタンクの関心を集めた。
彼らは、2021年に大がかりな試験が行われた、中国政府によるデジタル通貨電子決済(DCEP)システムの導入が、アメリカによるグローバル金融システムの支配を揺るがす可能性があることを認識したのだ。
ほとんど誰も予測できなかったことは、中国が国中でビットコインマイニングを取り締まることで、長年にわたるビットコインマイニングにおける支配的立場を失うことであった。
世界的なハッシュレートの約半分が停止したために、ビットコインネットワークの容量は大きく低下した。しかし、そのハッシュパワーもまもなく別の国々、特にアメリカへ移動した。10月までには、アメリカが世界最大のビットコインマイニング中心地へと躍り出たのだ。
中国が中央集権化された通貨ソリューションを世界へと押し出そうとする中、人々はすでに、分散型通貨におけるアメリカの役割の増大が、アメリカにとって何を意味するのかについて、議論をしている。
社会的イノベーションのための投機的力
2020年、分散型金融(DeFi)をめぐる投機的盛り上がりは、投資資本とイノベーションに非常に力強い弾みをつけた。2021年には、そのような現象が次なる高みへと上がり、NFTをめぐる投機が、メディア、アート、コレクション品に関するアイディアを立て続けに生み出し、それがさらに、NFT業界へとますます多くの資金を惹きつけるという循環が見られた。
バブルのように感じられたが、この場合の投機とはバグではなく特徴であり、変化の力強い原動力であったことは明らかだった。その変化が最終的に、どこに向かっているのかは、まだ分かっていないとしてもだ。
ディナーパーティーでの話題
2021年最大のテーマはおそらく、一般の認知度という点で、暗号資産がどれほどメインストリームになったか、という点であろう。
時代を席巻したNFT、高騰するトークン価格、アメリカ政治の世界が暗号資産について学ぼうとしている事実、ビットコインは衰退する通貨システムへのヘッジであることをめぐる考えなど、暗号資産は突如、至る所に存在している。
皆が暗号資産を理解しようとした。そして、確かに理解した多くの人々、そして理解しなかった多くの人々が、暗号資産のメリット、デメリットについて強い意見を持ち始めた。年末年始に家族が集まったら、自分の見解を説明するよう迫られるかもしれないので、くれぐれも注意しよう。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:5 Ways Money Was Reimagined in 2021