この記事では、投資アドバイザーとして私がたどってきた個人的な道のりについて振り返ってみたいと思う。私の失敗や成功から学び、知識や経験を生かしてもらえれば幸いだ。
暗号資産を初めて購入する
私が暗号資産(仮想通貨)に携わるようになった経緯から話を始めよう。2017年の秋、私のパートナーに説得されて、暗号資産を初めて買ったのが、すべての始まりだった。
顧客確認(KYC)やアンチマネーロンダリング(AML)のプロセスにイライラさせられながら、コインベース(米暗号資産取引所のCoinbase)でアカウントを開設した。すると、ビットコイン(BTC)だけがすべてではないということに衝撃を受けた。
甘い考えで、まずはイーサ(ETH)を購入することにした。ビットコインはすでに5000ドルまで到達しているのだから、この私がまったく知らない暗号資産も、同じような成長を遂げるだろうと考えたのだ。
暗号資産市場は年中無休だ。コインベースのアカウントをほぼ15秒ごとにチェックした。夜中に目を覚ましては、チェック。朝起きて最初にすることも、価格のチェック。赤信号で止まっている時は、価格チェックの時だ。投資しているものが何なのか、価格がなぜ変動しているのかまったく分からなかったが、簡単に投資できるところが気に入っていた。
次なるステップは、いくつかの取引所で暗号資産を取引することだった。この場合にもまたKYCのプロセスを経なければならなかったが、これらの取引所はアメリカに拠点を置くところではなかった。いくつもの暗号資産をビットコインに対して取引していたが、そのほとんどについて私は何も知らなかった。より多くのビットコインを集めることを目標としていた。
経験を重ねて暗号資産取引を学ぶ
暗号資産について、ひいてはどんな資産の取引についてもほとんど知らなかったため、今では一般的に「パンプ・アンド・ダンプ(吊り上げと売り叩き)グループ」と呼ばれるような、テレグラムのグループに参加し始めた。その当時は、何かひどいことに加担しているという意識はなかったのだ。こちらも、朝から晩までひっきりなしにアップデートをチェックし、それに合わせて取引を行おうとしていた。
たいていの場合、取引に出遅れて、最高値近くで買うことになるか、欲をかきすぎて適切なタイミングで手放さず、リターンすべてを失うことになっていた。このプロセスを通じて、支持線や抵抗線、RSI(相対力指数)、ストップロス、利益確定など、トレーディングについて学んだ。
自らが取引している暗号資産について知りたいと思ったことから、迷路のような穴にはまって行くこととなった。ビットコイン、ブロックチェーンテクノロジー、カストディ、後に分散型金融(DeFi)やウェブ3と呼ばれることになる多くの展開について、でき得る限りすべてを学んでいったのだ。こうして、暗号資産テクノロジーにすっかり夢中になった。
私とパートナーが、コンサルティングで利益を出す方法を見極めようする中、私は人々に暗号資産、ブロックチェーン、デジタル資産について教える方が向いていることに気づいた。
取引ビギナーからユーチューバーに
そこで2019年半ば、YouTubeチャンネルを開設。暗号資産、DeFi、ブロックチェーンが金融、ビジネス、暮らしにどのように影響を与えるかという点にフォーカスして、テクノロジーや新しいシステムをより簡単に理解できるよう助けることに重点を置いた。
それ以来、いくつかの異なるウォレットを試し、少なくとも100のトークン、イールドファーミング、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)に投資した。その中には、プロセス、プロトコル、チャンスをよりよく理解するために行ったものもある。リサーチを行い、中長期的な成長の可能性が大いに気に入ったものもある。すばやく稼ぐために、あまりリサーチをせずに買ったものもある。
買うのが遅すぎたものや、売るのが早すぎたもの、売るのが遅すぎたものもあった。「FOMO」(機会を逃すことへの恐怖:fear of missing out)の犠牲になったことは間違いなく、今でもその対処には苦慮している。詐欺にあったことも、詐欺に遭いそうになったことも、ハッキングされたこともある。
投資からのリターン、知識や理解から得られたものという点で素晴らしい成功も収めたし、人的ネットワークを成長させ、維持することもできた。
良いものも悪いものもひっくるめたすべての経験の中から、暗号資産に投資する時に留意すべきものをいくつか選び抜いてみた。
1. すばやい儲けを狙うな
自分ほど賢くない人を犠牲にして、すばやく利益を出せると考えてトレーディングを試したことがある。しかしもっと賢い人たちがいて、彼らは私のような人間を待っているのだ。
暗号資産やその他のあらゆる資産のトレーディングに秀でた人たちは、投資家とは異なったスキルと動機を持っている。私たちのほとんどは、市場の頃合いを測ることなどできず、そのプロセスで痛手を追う。トレーディングやトレーディングのウェブサイト、ソーシャルメディアのフィード、ユーチューブチャンネルは、そのようなすばやい儲けを出すプロたちに任せておくのが最善だ。
2. 勉強しよう
新しいテクノロジーやインフラに投資するための最善の方法は、それについて理解することだ。私はビットコインやその他の暗号資産の仕組みをより良く理解して初めて、特定のトークンを闇雲に買ってしまいたい衝動や、マイナス材料に見えるニュースを聞いて時期尚早に売ってしまいたい衝動の多くに抗えるようになった。
3. 投資プランを持とう
それぞれの人が、異なるリスク許容度、目標、ニーズ、ライフスタイルを持っている。それに合わせたプランが大切だ。
リサーチ中のプロジェクトのために危険にさらしても構わない資金と、長期的に本当にメリットがあると考えたプロジェクトのための資金について、私はプランを持つ必要があった。自分の投資テーゼが覆ったと感じたこともあった。テクノロジーに対して感じる安心度、リスク選好、専念できる時間などを根拠にプランを立てるのだ。
例えば、良いチームを抱えているが、スマートコントラクトが監査されていない新規プロジェクトに数百ドルを投資すると決断したことがあった。チームを信じている場合には、価値がすばやく低下しても、投資を急いでやめることはなかった。最初に投資した資金が倍になったら一部を売却して、残りはそのままにしておいた。
より確立されたプロトコルの場合には、より多くを投資することを厭わないが、期待するリターンはより低くなる。価値に影響を与えるものが何なのか、価値を低下させる要因は何であるかも、把握できる。
4. すべてに手を出すことはできない
私が暗号資産について学び始めた頃は、暗号資産がすべてだった。その後、暗号資産はDeFiへと広がっていった。そしてNFTが加わり、今では自律分散型組織(DAO)も仲間入りした。
新しい分野が加わるたびに、不遇な境遇から一晩と思えるような短期間でミリオネアが生まれていった。ウーバーイーツの配達人のような人物が、数週間で数千億ドルを持つ暗号資産ベンチャーキャピタリストに変身するのだ。
暗号資産の各サブカテゴリーが実際には、専門家、価値を高める存在、詐欺師、利益の動機を抱えた、それぞれに1つの投資エコシステムであるという事実を受け入れなければならなかった。
これらすべての分野において優れた投資家になることは不可能なのだから、すべてに投資しようとするべきではないのだ。多くの人が一瞬で、一生安泰なお金を手にするのを目の当たりにする中、これは受け入れるのが本当に難しい学びであった。
5. セキュリティと安全性が鍵だ
セルフカストディを伴った暗号資産の性質から、自らの資産のセキュリティが私の優先事項となった。私は自分の資産の過半数を、暗号資産あるいはステーブルコインというデジタルの形で保管することを選んだ。さらに稼ぐことができるようにするためだ。
セキュリティと安全性のプラン、さらに財産のプランを作るために、しっかりと取り組まなければならなかった。夫婦の財産の多くが暗号資産とつながっているため、資産にアクセスする方法、安全に保管する方法について、妻にも教える必要があった。
6. 確信を持つことも大切だ
ここ数年間を振り返ると、下り坂の時にも、一部のトークンや投資を手放さない確信を持てればよかったのに、と思うことが多くある。保有する暗号資産の価値が飛躍的に増加したことによって、一晩でミリオネアになったように見える人たちは、自分の投資が無価値に思えた時期を苦しみ抜いた人たちなのだということに、気づいたのだ。
リサーチをして気に入ったプロジェクトに投資したが、多くの場合、成功しなさそうだと思って、手を引いてしまった。さらに多くの場合、FOMOに突き動かされて、そのような資金を流行の暗号資産投資へと移動させてしまった。多くの場合、どちらでも損失を出した。
自らの投資テーゼの一環として、上り調子の時も、下り調子の時も確信を持つことにしたいくつかのプロジェクトをピックアップした。これらのトークンを早期に手放すとしたら、それは私の投資テーゼか、その投資に見出している価値が大きく変わった場合だけだ。
まとめ
この記事は、長編の教訓話のようになってしまったが、重要なのは、他のあらゆる投資と同じように、暗号資産、DeFi、デジタル資産投資を考えることだ。リサーチをすること。プランを立てること。プランに従うこと。そして、自分を信じることだ。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Lessons I’ve Learned About Crypto as an Advisor