暗号資産(仮想通貨)市場では先週、主要通貨のほぼすべてが急落。年初には2兆3000億ドルもあった時価総額のうち、7000億ドル(約80兆円)が吹き飛んだ。
暗号資産急落に影響されないNFT価格
イーサリアムネットワークのネイティブ通貨イーサ(ETH)は、昨年7月以来初めて、2200ドル付近まで下落。ビットコイン(BTC)も同様に、6カ月ぶりの安値となる3万3000ドル台まで値を下げた。アルトコインのソル(SOL)、ポルカドット(DOT)、アバランチ(AVAX)は7日間で、約40%も値下がりした。
市場急落に伴って、口先だけの暗号資産予言者たちからは、様々な「解釈」が寄せられている。人によって、短期的なマクロトレンド(ペロトンやネットフリックスなどのテック企業株も大幅に下落している)であったり、2018年の大暴落後に見られたような、約束された「暗号資産の冬」の最初の足音と、解釈は分かれている。
もう1つ別の解釈をお伝えしよう。デイトレードをするには良くない時期であるが、その利益や損失がイーサ価格に左右されやすいNFTを転売する人にとっても、良い時期とは言えない。先週、イーサ価格が下落したにも関わらず、人気の高いNFTコレクションの取引で処理されたETHの平均額は、比較的一貫したままだったのだ。
特定の消費財の価格をまとめた消費者物価指数が、実世界での比較対象としてぴったりだろう。消費者物価指数は、インフレを測る大まかな指標として考えられている。ドルの価値が下がれば、ドル建ての価格は上がるだろうという見込みだ。
この消費者物価指数が2021年12月、前年同月比で7%増と、1982年以来最大の上げ幅となった。つまり、毎日使う一部の消費財に対して、これまでよりもう少し多くのお金を支払うことになるのだ。
しかしなぜかこのような論理が、主要なNFTコレクションには当てはまらないようなのだ。
1週間前、NFT界で現在最も高値で取引される2大プロジェクト、クリプトパンク(CryptoPunk)とBored Ape Yacht Clubのトークン最低価格はそれぞれ、60ETHと82ETHであった。
それぞれ、60ETHから66ETH、82ETHから86ETHへと、少し値上がりしたが、このような小幅な値上がりは、ここ7日間で30%値下がりしたETH価格の、大幅な下げ幅を相殺するような規模ではなない。
同じことが、その他の人気NFTコレクションにも言える。クリプトパンクと同じ開発チームが手がける3DコレクションのMeebitsや、CyberKongzはむしろ、先週にかけて値下がりしたのだ。
ここ7日間でのNFTの平均販売価格も、同じような状況だ。ところどころ値上がりしたり、値下がりしてはいるが、イーサの急落を相殺するようなものではない。
貴重なNFTの価格はなぜ、ETHの値下がりを反映していないのだろうか?
筋金入りの暗号資産ファンたちの信念
NFTを買っている人がどんな人なのか、という点と関係があるのではないかと、私は考えている。現時点では、クリプトパンクやBored Apesの世界は、筋金入りの暗号資産ファン(ベンチャーキャピタルやフルタイムの投資家)とリッチな有名人の領土となっている。
おそらくリスク許容度がもう少し低い平均的なETHトレーダーは、このようなコレクションには重点を置いていないのだろう。
筋金入りのETH支持者たちは、ETHをそのものとして解釈している。暗号資産の世界で十分に時間を過ごすと、1ETHは2200ドルの価値を持ったものとしてではなく、単に1ETHに見えてくるのだ。
NFT(そしてその延長で、その市場の大半を支えているETH)をめぐるテーゼを心から信じているのなら、トークンの力そのものも信じることになる。ETHが月に届くほどに値上がりすると信じていれば、短期的な価格修正なんて気にならないのかもしれない。
今日は損失のように思えるものは、長期的なETHの価値に対する賭け、とも捉えられる。売ってしまうまでは、リアルなものなんてないのだから。
とにかく今のところは、NFTがお買い得だ。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Bored Ape Yacht ClubのNFTコレクション(mundissima / Shutterstock.com)
|原文:JPEGs On Sale, Baby