シンガポールの税務当局は、交換媒体として機能する、もしくは機能することを目的とした仮想通貨トランザクションに対して、物品サービス税(GST)を免除することを提案している。
シンガポール内国歳入庁(IRAS)は、2019年7月5日(現地時間)、同庁が「デジタル・ペイメント・トークン(Digital Payment Token)」と呼ぶものの扱いについてのガイドライン案「IRAS e-Tax Guide」を発表した。本ガイドラインは、このようなデジタル資産を扱うすべての事業体に対して、物品サービス税を免除しようとするものである。
本法案が成立すれば、2020年1月1日から「デジタル・ペイメント・トークンの特徴をより適切に反映する」ために、以下の変更が適用される。
- 商品やサービスの支払いとしてデジタル・ペイメント・トークンを使用しても、(課税対象である)トークンの供給として扱われない。
- デジタル・ペイメント・トークンを法定通貨またはその他のデジタル・ペイメント・トークンと交換する時、物品サービス税は免除される。
IRASによると、同ガイドラインはまだ草案段階で、シンガポール財務省は「デジタル・ペイメント・トークン関連法の改正」について、7月26日までパブリック・コンサルテーションを行う予定。
このガイドライン案は、デジタル・ペイメント・トークンを定義する詳細な項目も設けており、デジタル・ペイメント・トークンは以下の全ての特徴を含んでいる必要がある。
- 単位で表される。
- 代替可能である。
- いずれの通貨建てでもなく、また、発行者によっていずれの通貨にもペッグされていない。
- 電子的に移動、保管、取引が可能。
- 公衆又は公衆の一部が受け入れる交換媒体であり、対価としての使用に実質的な制限がない、またはそのように意図されている。
「デジタル・ペイメント・トークンの例としては、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)、ダッシュ(DASH)、モネロ(XMR)、リップル(XRP)、ジーキャッシュ(ZEC)などが挙げられる」とIRASは草案の中で付け加えている。
IRASが、法定通貨に価値がペッグ(連動)されている、ステーブルコインは、GST免除の対象にはならないとしていることは特筆に値するだろう。
IRASは草案の中で、「いかなる法定通貨建てのデジタルトークン、もしくは価値が法定通貨にペッグされたデジタルトークンも、デジタル・ペイメント・トークンと見なされない」と述べている。「例えば、米ドルにペッグされたデジタルトークンは、デジタル・ペイメント・トークンと見なされない」
IRASは、仮想通貨に対するGST免除の取り組みは、各国が仮想通貨利用の世界的な発展と成長を受けて、これまでの方針を見直したことに従ったものだとしている。同庁も「この発展に遅れないよう、物品サービス税の位置づけを見直した」と述べている。
現在の法律において、デジタル・ペイメント・トークンの供給は、依然として課税対象のサービス供給と見なされている。「従って、GST登録事業者がトークンを対価として、販売、発行、または移動する場合は、物品サービス税の課税対象となる。トークンが物品やサービスの購入に対する決済に使用される時、この取引により、課税対象となるトークン供給と物品・サービス供給という、2つの異なる供給が発生する」と草案には記されている。
2017年10月、オーストラリア議会では、仮想通貨購入時に課されていたGSTを撤廃し、いわゆる二重課税を廃止する法案が可決された。
翻訳:新井朝子
編集:町田優太
写真:Singapore image via Shutterstock
原文:Singapore’s Tax Agency Proposes to Exempt Cryptos From GST