イーサリアムは、時価総額で2番目に大きい暗号資産(仮想通貨)のイーサ(ETH)を支えるブロックチェーンベースのソフトウェアプラットフォームだ。他の暗号資産と同様に、イーサは第三者が監視したり、介入することなく、世界的に価値の受け取りを行うことができる。
価値の交換は現在、主にネイティブ通貨のイーサを通じて、イーサリアムブロックチェーンの主要ユースケースとなっている。
しかし、多くの開発者がイーサリアムに取り組んでいるのは、ユーザーが自らの金融やオンラインデータをよりコントロールできるようにするという、長期的な可能性と野心的なビジョンのためである。
イーサリアムは、「世界のコンピューター」になると言われているが、そのような野心的な考えは上手くいかないだろうという批判的な意見も寄せられている。
しかし、この実験が計画通りに進めば、ユーザーが知ってか知らずかデータを信頼して預けてしまっているフェイスブックやグーグルとは、非常に異なるアプリケーションが生まれることになる。
イーサリアム支持者たちは、ブロックチェーンの助けを借りて、ユーザーにデータの管理権限を返すことを目指している。ブロックチェーンとは、データを分散化して、世界中の多くの人が同じデータのコピーを持つようにするテクノロジーだ。
開発者は、イーサリアムを使って「リーダーレス」なアプリを開発することができる。つまり、ユーザーのデータが、サービスの作り手によって改ざんできないということだ。
イーサリアムは2013年、当時19歳の開発者ヴィタリック・ブテリン氏が提案した。彼はビットコインを支えるテクノロジーであるブロックチェーンを、取引以外のユースケースに拡大しようとする考えの先駆者の1人だった。
ビットコインは、オンラインバンキングや日常的な取引をディスラプト(創造的に破壊)するという目標を掲げて作られたのに対し、イーサリアムの生みの親たちは、それと同じテクノロジーを、データを保管したり、抵当権を委譲したり、複雑な金融商品を追跡するような、インターネット上の仲介業者を排除するために使おうとしているのだ。
仲介的な役割をするアプリは、ソーシャルメディア上で写真をシェアする道を開くなど、数え切れないほどの形で人々の役に立っている。しかし同時に、データを検閲するなどして自分たちの管轄権を悪用したり、ハッキングで機密情報を流出するなどして非難されている。
イーサリアムは2015年に正式に立ち上げられ、前述のようなアイディアを、機能するネットワークへと形にしている。
イーサリアムと分散型インターネット
イーサリアムを理解するには、まず仲介業者を理解するのが助けになるかもしれない。
今、仲介業者は至るところに溢れている。舞台裏で彼らは、あらゆるデジタルのタスクをこなすのを助けてくれている。例えば、GメールはEメールの送信を助け、ベンモ(Venmo)は友達に10ドル送るのを助けてくれる。
しかし、これは私たちの個人情報や金融関連の情報が、フェイスブックやグーグル、ペイパルなどの企業が所有するクラウドやサーバーや、他人のコンピューターなどに保管されていることも意味する。この記事でさえも、第三者が管理するサーバーに保管されているのだ。
分散化推進派によれば、このような仕組みには問題がつきまとう。ユーザーにとっては直接管理できるものが減り、さらには仲介業者が介入して、株の購入や、ソーシャルメディアでの投稿など、ユーザーのアクションを妨げるような検閲への扉を開くことになるからだ。
イーサリアムは、現在のインターネット上のアプリの仕組みを変え、自動的にルールを実行するスマートコントラクトで仲介業者を置き換えることで、ユーザーにより多くの管理権限を与えようとしているのだ。
インターネットを開発した人たちも含め多くの人は、インターネットは常に分散型であることを意図されて作られたと信じている。その目的を果たすために、新しいツールを使うことに関してムーブメントも生まれている。イーサリアムは、そのようなムーブメントに加わるテクノロジーの1つだ。
イーサリアムFAQ
イーサリアムはビットコインとどう違うのか?
イーサリアムはビットコインからインスピレーションを受けており、どちらも暗号資産だ。ビットコインを支えるテクノロジーであるブロックチェーンを使っている。ブロックチェーンは、ネットワークが単独の存在の管理下にないよう分散化するために、公開された共有の分散型台帳を使っている。
しかし、ビットコインが主に価値の保管手段として使われるのに対し、イーサリアムは、ソーシャルメディアネットワークから、より複雑な金融関連の合意まで、他のアプリやサービスを分散化しようとするものだ。
なぜイーサリアムは「世界のコンピューター」と呼ばれるのか?
支持者の多くは、イーサリアムがインターネットを分散化できる「世界のコンピューター」だと主張する。
イーサリアムによって、世界中のボランティアが実行する何千ものいわゆる「ノード」が、中央集権型サーバーに取って代わり、「世界のコンピューター」を作り上げる。いつの日か、世界中の誰もがそれを使えるようになるというのが願いである。
イーサリアムアプリはどのように動くのか?
典型的なアプリストアを覗くと、バンキング(銀行サービス)からフィットネス、メッセージ用のものまで、ありとあらゆるアプリを表すカラフルなアイコンが目に入る。イーサリアムコミュニティが掲げる長期的ビジョンは、そのようなアプリと同じように見えるが、仕組みは異なるアプリを作り上げることだ。
つまり、イーサリアムの目標は、このようなサービスのデータの管理権限を、ユーザーに返すことなのだ。イーサリアム上で開発されたこのような機能を持つアプリは、分散型アプリ(Dapp)と呼ばれる。使うには、イーサが必要だ。
イーサリアムのこの先は?
イーサリアムには、当然とも言える疑念も寄せられている。まず、イーサリアムはスケーラブルな状態からはほど遠い。つまり、現状では多くのユーザーに対応できず、グーグルやフェイスブック、その他の中央集権型プラットフォームをディスラプトする「世界のコンピューター」というアイディアが実現しないのだ。
2020年12月1日に移行がスタートしたイーサリアム2.0では、そのような問題点を解決しようとしている。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:What Is Ethereum?