1月の暗号資産(仮想通貨)マーケットは、昨年末から引き続き低調な展開だった。ビットコインは1月は19%下落し、1月としては過去3番目に低いパフォーマンス結果となった。
時価総額2位のイーサリアムはビットコインより低いマイナス29%を記録し、一時、6カ月ぶりの低水準となる2401ドルをつけた。マーケット全体が調整局面を迎える中、ビットコインの大口投資家であるいわゆるクジラとイーサリアムのクジラは異なる動きを見せた。
クラーケン・インテリジェンスによると、ビットコインのクジラの数は1月に減少した一方、クジラのビットコイン保有量は増加した。対照的にイーサリアムのクジラの数は増え、クジラのイーサリアム保有量は減少している。
ビットコインとリスク資産
マーケット全体の冴えない展開の背景には、オミクロンへの恐怖と連邦準備理事会(FRB)のタカ派路線への転換によるリスク資産の売却があるかもしれない。そして、その余波がビットコインをはじめとして仮想通貨マーケットに広がった可能性がある。
1月、ビットコインとリスク資産の相関係数が上昇。ナスダックとS&P500との相関係数はそれぞれ0.69ポイントと0.44ポイント上がった。ビットコインやイーサリアムから、金融緩和によって流れていた「リスクマネー」が逆流している可能性がある。
ビットコインは少数精鋭、イーサリアムは裾野広がる
クラーケン・インテリジェンスは、ビットコインとイーサリアムのクジラをそれぞれ1000BTC(43億円)、1万ETH(約30億円)以上を持つウォレットと定義している。
ビットコインのクジラの数は1月に2153から2137まで減少し、2021年9月中旬以降の最低水準まで落ち込んだ。ただ、あくまでレンジ内の動きであり、2021年12月につけた直近の高水準である2168が依然として射程圏内だ。もし2168を再び上回れば、ビットコインを蓄積して新たにクジラとなるウォレットが誕生することを示唆するかもしれない。
対照的に、イーサリアムのクジラの数は、1月、1157から1163へとわずかに増加した。1月30日には今年最高となる1167をつけた。暗号資産マーケット全体は低調だったものの、依然として根強い世界的なNFTブームが背景にあるのかもしれない。
一方、クジラが保有する暗号資産の総額には逆転現象が見らた。
ビットコインのクジラが保有するビットコインの総額は、1月、791万6000BTCから801万3000BTCへと増加。少ない数のクジラが押し目買いをして、さらなるビットコインの蓄積を進めたことが考察できる。
対照的に、イーサリアムのクジラが保有するイーサリアムの総額は、8128万6000ETHから8124万1000ETHまで減少した。イーサリアムのクジラは増えたが、一部利益確定をしたクジラが多かったようだ。
千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社し、2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。
※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。
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