ビットコインの環境負荷議論は誇張されている【オピニオン】

ビットコインは、騒がしくパワフルな批判者を多く抱えている。ビットコインはかつて、詐欺だと言われていたが、今ではエルサルバドルの法定通貨になった。

現金が犯罪者の一番の友である状態は変わらないが、ビットコインは犯罪行為を助長すると非難される。そして、環境面での厄介者とも言われているが、こちらも騒がしい少数派による、根拠の薄弱な主張だ。

二酸化炭素の排出は、化石燃料を燃やすことによって引き起こされる。二酸化炭素を排出するからといって、私たちが自動車を禁止することはない。代わりに、よりクリーンなエネルギー源で動かすだけのことだ。

よりクリーンな発電に向けた同じようなトレンドが、ビットコインでも起こっている。ビットコインを嫌悪するのが大好きな人が多くいるが、彼らがその理由にできるものは、枯渇し始めている。

現在、ビットコインに関して最も幅広く出回っている偽情報は、現在の環境面での惨状に対して、ビットコインが不釣り合いなほど大きな悪影響をもたらしている、というものだ。気候変動や環境保護について真摯に心配する人々の気持ちに、古い金融システムに深く守られたビル・ゲイツやウォーレン・バフェット、チャーリー・マンガーといった人物がつけ込んでいるのだ。

ビットコインが気候変動を悪化させるという仮説は、表面的には筋が通っているように見える。コンピューターを動かすには、電力が必要だ。ビットコインとは、世界中に広がる何万ものコンピューターの分散型ネットワークであるから、大量の電力を消費する。BTCの価値が高まるに連れ、ネットワークの安全を確保するために使われる電力の量も、増加していくと見込まれている。

より正確な比較対象

トリニティ・カレッジ・ダブリンのブライアン・ルーシー(Brian Lucey)教授のようなビットコイン反対派たちは、「ビットコインだけで、中規模国家と同じ量の電力を消費する。(中略)悪質なビジネスであり、悪質な通貨だ」と、主張を進めていく。

しかしこのような主張は、選り好みしたデータと誤解を与えるような比較によって支えられている。例えば、デジタルトレンドがもたらす意図せぬ結果を伝えることに特化したプラットフォームDigiconomistの調査によれば、ビットコイン取引1件に必要な電力は、クレジットカードのビザによる45万3000件の取引分に相当する。

しかし、クレジットカードによる支払いは、ACHやFedwire、SWIFTといった既存の二酸化炭素を排出するインフラ、そしてアメリカ政府の軍事的、外交的強さに依存していることを忘れてはならない。

ビットコインを批判する人たちは、ビットコインと伝統的銀行システムを比較する時の計算に、そういった間接的な二酸化炭素排出量を含めてはいないのだ。これでは、コーヒー業界全体と、カフェ1店舗の二酸化炭素排出量を比べているようなものだ。

実際、そのような間接的な排出量も計算に入れれば、異なる現実が浮かび上がってくる。デジタル資産投資を手がけるギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)の最近のリサーチによって、ビットコインは1年に約113.89テラワット時、一方の銀行業界は、2倍以上の約263.72テラワット時の電力を消費することが明らかとなった。

ビットコインを比べる対象は、クレジットカード企業ではなく、ビットコインが取って代わろうとしている銀行システム全体であるべきだ。現代の銀行システムは、何万もの事務所や支店、毎日通勤する何百万人もの従業員、サービスを求めて銀行実店舗を訪れる何十億人もの顧客を支えるために、莫大な量の電力を消費している。

ビットコインは伝統的銀行サービスの必要性を大いに減らし、このような銀行業界による環境負荷の大半を無くすことができるのだ。ビットコインが大量の電力を消費することは確かだが、現状を完全に理解するためには、その電力がどこからやって来るかも見なければならない。

ビットコインマイナーが構成する「ビットコイン・マイニング協議会(Bitcoin Mining Council)」による最近の調査によれば、ビットコインの消費電力の56%は、クリーン(二酸化炭素排出量ゼロ)なエネルギー源由来のものだ。この数字は、あらゆる主要産業よりも高い割合である。例えば、アメリカで使われる電力のうち、クリーンなエネルギー源由来のものは40%に過ぎない。

根本的に異なるビジョン

しかし、環境に関する議論はいつでも、とりわけ知識をあまり持たない層に強い影響を及ぼす。自らの生存がビットコインによって脅かされていると人々が説得されてしまうと、現状の法定通貨システムの中に囚われたままでいる以外に選択肢はないと感じてしまうのだ。

ビットコインは、根本的に異なるビジョンを提供する。価値がデフレ的な性質によって、人々に短期的に消費するのではなく、長期的に貯蓄するよう促すのだ。要するに、ビットコインシステムにおける資本の寿命は、はるかに長いものとなる。

BTC価格は平均で、1年に100%以上値上がりしており、この先も力強い成長が見込まれている。ビットコインは、浪費的な消費に対して、大きな機会費用を生むのだ。手持ちの資産がインフレによって一貫して目減りしなければ、最新の消費財を購入するインセンティブは下がる。明日になったら今持っている資産の価値が上がるとしたら、今日それでiPhoneを買ってしまうことの意味は低くなる、ということだ。

このような個人の行動における自発的で小さな変化は、社会全体でまとまれば大きなものとなり、その影響は変容をもたらせるほどのものになる。環境を守るために、自由や繁栄を犠牲にする必要はないのだ。

ビットコイン反対派は、この革命的テクノロジーに反論するための理由を必死にかき集め続けるだろう。気候変動に関する恐怖心を煽ることが、最新の手法となっているが、その他の中途半端な主張と同じように、環境面への影響を根拠としたビットコイン反対議論は、基礎的な吟味にすら耐えないものなのだ。

ボビー・リー(Bobby Lee)氏は、暗号資産(仮想通貨)ウォレットを手がけるBalletの創業者兼CEO。著作にウォール・ストリート・ジャーナルのベストセラーにも輝いた『The Promise of Bitcoin』がある

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:Bitcoin’s ‘Energy Problem’ Is Overblown