三菱UFJがデジタルウォレット──優待券、チケットをNFT化

ブロックチェーンを活用して、デジタル証券や日本円に連動するデジタル通貨などの発行・管理基盤を開発してきた三菱UFJ信託銀行が、デジタル資産用ウォレットの商業化を進める。

三菱UFJ信託は2月21日、同ウォレットを提供する計画を発表。また、株券に付随する優待券や、チケット、会員証などをNFT(非代替性トークン)として発行できる「Progmat UT」の提供を開始する。

企業がデジタル証券(セキュリティトークン)を発行でき、日本円に連動するデジタル通貨(ステーブルコイン)による決済を行い、さまざまな種類のデジタルトークンを保有できるウォレットを開発することで、三菱UFJ信託は次世代のデジタルトークン金融の基盤整備を一気に進める。

今回明らかにされたProgmat UTで発行できるNFTは、機能型NFTやユーティリティトークン(UT)と呼ばれ、暗号資産やセキュリティトークンとは異なる。不動産や企業などが保有する動産、社債などを裏付けるセキュリティトークン(ST=デジタル証券)に対して、UTは優待券や会員権、イベントなどへの参加チケットなどをトークン化したもの。

ウォレットとチェーンが人と企業を繋ぐ

(画像:Progmat UTの取り組みイメージ/三菱UFJ信託の発表文より)

例えば、企業が社債をSTとして発行し、それに付随する優待券をUTで発行できれば、個人の投資家はスマートフォンでウォレットを利用して、STとUTを保管することができる。UTに記録されている優待サービスを利用しきれない場合は、ウォレットを介して第三者に譲渡することができる。

この一連の流れをブロックチェーン上でリアルタイムに行えるのが、三菱UFJ信託が開発したProgmatで、円連動型ステーブルコインのProgmat Coinを組み合わせることで、企業と投資家・顧客・ファンをコネクトして、デジタル資産の流通を可能にする。

事業者は株主や顧客、ファンなどに対して、魅力のある優待サービスをUTとして提供し、STを使った資金調達を行うことができる。個人にとっては、スマホウォレットを軸に、投資目的にSTを購入・取引し、優待券やチケットはUTとして管理することが可能になる。三菱UFJ信託が発行を計画しているProgmat Coinを利用すれば、取引決済はスマホで瞬時に完了する。

開発したウォレットシステムは、事業会社向けには、STとUTの発行・管理が簡単に行える「トークンマネージャー」機能を完備し、事業担当者が使いやすいユーザーインターフェース(UI)を準備した。一方の個人ユーザーに対しては、様々なSTやUTを一元管理できるウォレット設計を施し、秘密鍵の保全など、セキュリティ対策の強化にも重点を置いた。

欧米では暗号資産(仮想通貨)取引が急激に増大し、アニメや音楽、アート作品を中心とするNFT(非代替性トークン)に対する人気は世界的に高まっているが、Progmatは将来的に、STやUTに限らず、様々なデジタルトークンに対応できる基盤となることが見込まれる。

|テキスト:佐藤茂
|トップ写真:インドネシア・ジャカルタで撮影/Shutterstock.com