先週、著名投資家で「オマハの賢人」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイが、ラテンアメリカ最大のデジタル銀行「Nubank」に投資した。
「ネオバンク」とも呼ばれるブラジルのNubankは、暗号資産(仮想通貨)にきわめて近い分野に注力しており、バフェット氏は長年、暗号資産やブロックチェーンに嫌悪感を示していたことから、この投資は大きな波紋を呼んだ。
毎朝、マクドナルドの同じ朝食メニューを食べることで知られるバフェット氏は、考えを変えたのだろうか? もしそうなら、画期的な出来事だ。
バークシャー・ハサウェイは史上最も利益をあげている企業のひとつ。バフェット氏の投資理論は世界中のビジネススクールで教えられている。リーマン・ブラザーズは2008年、破綻直前にバフェット氏に救済を依頼している(バフェット氏は依頼を断った)。
そしてこれまでバフェット氏はビットコインとは距離を置き、ビットコインを「殺鼠剤の2乗」と呼んだことは有名な話だ。だが、今回の方針転換──仮にそれが筆者の甘い見方だったとしても──は、考える価値がある。
できることに時間を費やす
しかし、やや大げさな面もある。そもそも、Nubankへのバークシャーの投資は今回が初めてではない。Nubankが2021年12月に上場する数カ月前に5億ドルを出資している。また、Nubankは投資部門を通じて間接的にビットコインに投資しているが、現時点では単なるビットコインETF(上場投資信託)のようだ。
バフェット氏の右腕、副会長のチャーリー・マンガー氏は、記者会見で誤解を解いた。マンガー氏はバフェット氏と自身が、暗号資産を嫌っていることを改めて強調した。「私は暗号資産にまったく投資していない。避けたという事実を誇りに思う」と米Yahoo Financeの編集長、アンディ・セルワー(Andy Serwer)氏に語った。
とはいえ、同じインタビューでマンガー氏は、暗号資産が「発明されなかったこと」あるいは「規制によって消滅したこと」を望んでいたが、暗号資産は長期にわたって存続する可能性が高いことを示した。
「暗号資産について、我々ができることは少ない。だから、できることに時間を費やしている」とマンガー氏は述べた(同氏は、もし自分が「世界の良識ある独裁者」なら、証券で短期的に利益をあげることは「不可能」にするだろうと述べている)。
もはや避けられない
今回のニュースは、暗号資産市場の現状について、より深く、より興味深い何かを示している。暗号資産は、金融システムにますます組み込まれている。過去2年あまりの間に、以前は暗号資産に懐疑的だった複数の金融機関が暗号資産関連サービスを展開し始めた。
JPモルガン・チェースは、ジェイミー・ダイモンCEOがきわめて懐疑的な姿勢を示しているにもかかわらず、富裕層投資家に暗号資産を提供している。競合も同じようなサービスを提供している。レイ・ダリオ氏のようなビリオネア投資家は、ビットコインのインフレヘッジとしての可能性を考えている。
マンガー氏はビットコインを否定している。だが、好むと好まざるとにかかわらず、多くの人にとって、もはや避けることができない産業でもある。
Nubankは暗号資産企業ではないにせよ、この地域のブロックチェーン産業への投資をますます増やしていくだろう。ラテンアメリカ・プライベートエクイティ&ベンチャーキャピタル協会(LAVCA)によると、2021年の暗号資産関連ベンチャーへの投資は前年比10倍となった。ラテンアメリカの直近の2社のユニコーン(評価額10億ドル以上の未公開企業)は、暗号資産取引所だ。
暗号資産業界は利益をあげている。その一部は、バークシャー・ハサウェイが利益をあげた業界や慣習を破壊している。だからといって、暗号資産がバフェット氏の「バリュー投資」の信条には不相応とは限らない。
暗号資産は、他の市場と同じように、基本的に誰でも参加できる。それが、マンガー氏の言うような「投機的な熱狂」になるのか、それとも成長を続けるものになるかは、まだわからない。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Warren Buffett and Charlie Munger Still Hate Crypto