ビットコインとイーサリアムに依存しない:暗号資産の分散投資【基礎知識】

暗号資産(仮想通貨)の投資初心者は、ビットコイン(BTC)と、イーサリアムのネイティブ通貨イーサ(ETH)だけが、安定して安全な投資オプションだという考えに陥ってしまいがちだ。

ビットコインやイーサだけを信じる多くの人たちは、そのような考えは正しいと言うかもしれないが、アルトコインとも呼ばれるその他のオプションも、明らかに台頭してきている。

最新のデータによれば、ビットコインのドミナンス(暗号資産全体の時価総額に占めるビットコインの時価総額の割合)は昨年、69%から42%に低下。一方のアルトコインの割合は、11%から21%へと増加した。

ノン・ファンジブル・トークン(NFT)やDeFi関連プロトコルが、このような変化のきっかけとなっている可能性が高い。これら2つの急速に成長するエコシステムに関連するトークンへと投資を分散させる投資家の数が、ますます増えているからだ。

ポートフォリオを成長させていくためには、分散投資は大切だ。投資を始めたばかりならば、なおさらだ。大物投資家のウォーレン・バフェット氏は、「分散投資は、無知から身を守る方法だ」と述べた。

1万7000を超える選択肢の中から、わずか2つのコインに投資を絞ってしまうことは、リスクを高めるだけでなく、リターンの可能性も狭めてしまう。

そのため、ビットコインとイーサ以外にも目を向け、ポートフォリオの一部を、期待できるその他の暗号資産に分散させることを検討することが望ましい。

アルトコイン選びのポイント

暗号資産市場で代替投資オプションを探す時には、自分の投資戦略に最も合うコインを見極めることが大切だ。検討するべき要素には、以下のようなものがある。

入手しやすさ:どれほど多くの取引所やプラットフォームが、その暗号資産を扱っているだろうか?大量の売買は簡単か?複数のブロックチェーンが対応するトークンだろうか?

将来的計画:長期的に投資する場合には、プロジェクトがしっかりとした将来的な開発計画を持っているかを確認したい。例えば、新機能の追加や、パートナーシップ、アップデートなどの計画だ。このような計画は、長期的にトークン価格を支え、新しい投資家を惹きつけることができるだろう。

投資の継続性:投資を検討するデジタル資産の存続能力を分析することは欠かせない。自分の投資期間が終了する前に、その価値が低下してしまう暗号資産への投資は避けたいものだ。そのため、トークンの有用性やトークンを支えるコミュニティの強さを検討し、競合プロジェクトと比較することが不可欠だ。

暗号資産セクター:ポートフォリオに追加するコインを選ぶ場合、足並みを揃えて値動きするような一連のコインに投資するのを避けるのが肝要だ。暗号資産市場においては、似たような分野に取り組むデジタル資産の価格はしばしば、同時に上下する。

例えば、あまりに多くのDeFiトークンを保有すれば、とりわけDeFi市場が低迷した場合に、不必要なリスクにさらされるだろう。このような事態を避けるために、NFT、DeFi、レイヤー2、取引所、メタバースなど幅広いセクターにポートフォリオを分散させるべきだ。

ここからは、検討しておきたいデジタル資産を紹介していこう。

分散型アプリプラットフォームのコイン

ソラナ(SOL)

ソラナは、分散型アプリ(Dapp)の最大中心地としてイーサリアムに取って代わろうとする、急速に成長するブロックチェーンエコシステムである。バイナンス・スマート・チェーンと同様、ソラナの目指すところは、ブロックチェーンアプリ上での取引をより安価で高速にすることだ。

ソラナは特に、DeFiアプリが大規模に利用可能になるよう、DeFiの最適化に力を入れている。さらに、NFTの分野にも進出し、ユーザーが利用するべき理由は増えている。そのため、ソラナのネイティブ通貨であるSOLは投資家にもDappユーザーにとっても魅力を増しており、その価格は2021年、1万%も上昇した。

ソラナではまた、ステーキングも活発で、SOLの流通量のうち、74%以上が現在、ステーキングされている。ステーキングという言葉に馴染みがない人のために説明しておくと、ネットワークの積極的な参加者バリデーターとなり、その見返りに報酬をもらえるように、ブロックチェーン上に一定数のトークンをロックアップするプロセスのことである。

カルダノ(ADA)

ソラナやバイナンス・スマート・チェーンがイーサリアムに取って代わろうとしているのと同様、カルダノも、既存暗号資産ネットワークが抱える欠陥を改善するための非常に高度なインフラを作り上げている。

カルダノの開発は2017年にスタートしたが、スマートコントラクトに対応できるようなアップグレードが実施されたのは、2021年のことであった。これによって、カルダノがスマートコントラクトを必要とするネイティブ分散型アプリの作成に対応できるようになった。このインフラ改善やその他の要素のおかげで、ネイティブトークンであるADAは2021年、650%の値上がりを記録した。

さらにカルダノは、最も魅力的なステーキングエコシステムの1つを抱えており、現在流通するADAのうち、64%がステーキングされている。

レイヤー2プロジェクト

ポリゴン(MATIC)

ここ1年、力強いパフォーマンスを見せたデジタル資産の1つが、ポリゴンである。これまでに紹介したデジタル資産とは異なり、ポリゴンは「イーサリアムキラー」という立ち位置ではない。

むしろ、複数の異なるブロックチェーン間の架け橋を作り、相互運用性を改善させることで、イーサリアムエコシステムを最適化しようとしているのだ。ポリゴンブロックチェーン上でイーサリアムの取引にも対応できるので、取引コストが下がり、イーサリアム上の混雑緩和にも役立つ。

ポリゴンのネイティブトークンMATICは、イーサリアムベースのデジタル資産。ポリゴン上での決済通貨として使われ、手数料支払いにも利用できる。驚くことに、MATICの価格は2021年、1万3000%も上昇。投資家にとっては、魅力的なオプションとなっている。

ループリング(LRC)

ポリゴン同様、ループリングもイーサリアムエコシステム最適化を目指すレイヤー2ソリューションである。より具体的に言うと、ループリングはイーサリアムブロックチェーン上に置かれるオフチェーンソリューションを提供し、ゼロ知識(zk)ロールアップと呼ばれるスケーリングテクノロジーを使って取引を処理する。

zkロールアップは、一連の取引をひとつにまとめ、ロールアップの中に含まれるすべての取引が有効なものであるという有効性証明を作りだす。そしてロールアップされた取引が、ブロックチェーンに記録される。つまり、取引をひとまとめにし、処理を一段と高速、安価、効率的にするのだ。

ループリングのオフチェーン処理のおかげで、イーサリアムはスループットを1000倍に高められるとされている。

ループリングのネイティブトークンLRCの価格は2021年、1160%上昇し、3.86ドルの最高値を更新した。

メタバーストークン

ディセントラランド(MANA)

ディセントラランドは、爆発的な成長を見せるNFT市場を牽引する存在だ。メタバースのような同プラットフォームは、NFTと、バーチャル世界の一端を所有できるという魅力によって支えられた、活発な経済を抱えている。

簡単に言うとディセントラランドは、ユーザーが土地を購入し、カジノやテーマパークなどを作り、そこから収益をあげることのできる、イーサリアムベースのバーチャル世界で、拡大を続けている。

ディセントラランド上の土地はLANDと呼ばれるNFTで表されるが、MANAと呼ばれる独自ユーティリティトークンも発行されている。プレイヤーはMANAを使って、ネイティブマーケットプレースでアバターや装飾品などのインゲームアイテムを購入できる。

ユーザーは、LANDトークンを獲得する前にMANAをバーン(焼却)しなければならない。これは、MANAの価値を維持するために用意された仕組みの一部である。2021年はNFT市場だけでなく、MANAにとっても記録的な年となり、その価格は4000%上昇した。

ザ・サンドボックス(SAND)

ザ・サンドボックスは、NFTが支えるバーチャル世界という点で、ディセントラランドに似ている。ユーザーがNFTベースのデジタル資産を構築し、そこから収益を得たり、取引できるようにする開発ツールを提供することで、クリエイティビティを奨励している。

ユーザーが作るコンテンツが支えるプラットフォームであることから、ザ・サンドボックスはプロジェクトのガバナンスや将来設計にユーザーが参加できるようにしている。そこで、SANDトークンの出番だ。

SANDトークンは、プラットフォームのガバナンスシステムに不可欠な存在で、保有者がプロジェクトの発展に積極的に貢献できるようにする。さらに、ザ・サンドボックスのマーケットプレース上でNFTを購入する場合の決済通貨でもある。MANA同様、SANDも2021年には驚異的なパフォーマンスを見せ、価格は1万5000%以上も上昇した。

暗号資産取引所ユーティリティトークン

バイナンスコイン(BNB)

バイナンスコイン(BNB)は、取引所サービス、ステーキングソリューション、支払いサービス、ブロックチェーンアプリケーションネットワーク、暗号資産ローンプロダクトなどを手がけるバイナンスエコシステムのユーティリティトークンである。簡単に言うと、バイナンス・スマートチェーンにとってのBNBは、イーサリアムブロックチェーンにとってのイーサのような存在だ。

2021年の大半において、BNBは時価総額トップ5の暗号資産として注目され、ビットコインやイーサよりを上回る値動きを見せた。2021年、ビットコインは73%値上がり、イーサは455%値上がりしたのに対し、BNBは1344%値上がりしたのだ。

これは主に、DeFiやNFTユーザーと開発者の間で、バイナンス・スマート・チェーンが普及したことが理由だ。バイナンス・スマート・チェーンとは、その取引手数料の低さと取引処理能力の高さから、イーサリアムの主要代替オプションの1つと考えられている。そのため、ネイティブトークンであるBNBが好成績を収めたことも、驚きではない。

クリプト・ドットコム(クロノス)・コイン(CRO)

シンガポールに拠点を置くクリプト・ドットコム(Crypto.com)は、暗号資産取引所、支払いソリューション、ブロックチェーンアプリケーションネットワークを手がけている。同社は昨年11月、ロサンゼルスにある競技場(旧称ステイプルズ・センター)の命名権を勝ち取った。

クリプト・ドットコムのエコシステムの中心にあるのが、CRO。ユーザーはCROを報酬として受け取ったり、手数料支払いのための通貨として利用する。

さらにCROは、クリプト・ドットコム・チェーンと、イーサリアム・バーチャル・マシーン(EVM: Ethereum Virtual Machine)対応のクロノス(Cronos)チェーンという、クリプト・ドットコムの2つのブロックチェーンのネイティブトークンである。

CROのオンチェーンでの有用性の1つは、クロノスとクリプト・ドットコム・チェーンのステーキングを支える点だ。クリプト・ドットコムの資金が増大していること、ユーザーが無数のアプリケーションにアクセスできることを考えれば、CROが暗号資産取引所ユーティリティトークンの中でも最も有望なものの1つであるのも驚きではない。CROは2021年、850%値上がりした。

クリプト・ドットコムは18日、「コインの分散化と、クロノスエコシステムの驚異的な成長を反映」させるために、CROをクリプト・ドットコム・コインからクロノスへと改名すると発表した。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:Investing in Crypto: Alternatives to Bitcoin and Ether