ウクライナ、富裕層が仮想通貨を物色──資産の逃避先探る動き

ウクライナの富裕層は、ロシアとの緊張が高まるなか、資産の安全な避難先として暗号資産(仮想通貨)に注目している。だが米ドル連動型ステーブルコイン「テザー(USDT)」の供給量には限りがあり、交換レートが上昇している。

ウクライナの暗号資産取引所Kunaの創業者、マイケル・チョバニアン(Michael Chobanian)氏は23日、CoinDeskのインタビューに答えて、そう語った。同氏は、暗号資産を購入することの難しさ、現地経済の不確かな先行き、現在の地政学的混乱の中でのブロックチェーン利用の可能性に触れた。

バイデン大統領は18日、ロシアが今後数日から数週間のうちに首都キエフを目標にウクライナに侵攻することを「確信している」と発言。ウクライナ政府は、ロシアの侵攻の脅威に備えて23日、30日間の非常事態を宣言した。

「金融パニックという点では、確かにパニックになっている。皆、現金を手放したがっている」(チョバニアン氏)

チョバニアン氏は、暗号資産でリスクヘッジしたいと考える人のほとんどは、現金をUSDTに交換し、それをビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産に変えていると述べた。問題は、現地ではUSDTの供給が制限されているため、4%のプレミアム(上乗せ価格)でも購入できないことだという。

状況は、ウクライナの通貨「フリヴニャ」の切り下げでさらに悪化している。フリヴニャは16日以降、現在の不安定な状況を反映して6%下落している。

「今ここで、現金を使ってできることは何もない」とチョバニアン氏はウクライナの現状を語った。「政府を信用していない。銀行システムも信用できないし、自国通貨も信用できない」。

最悪の場合、ウクライナではインターネットと銀行システムが崩壊する可能性があり、暗号資産は安全な避難先になる可能性があると同氏は述べた。

数百万ドルの現金

多くの人にとって、暗号資産以外に選択肢はなく、すでに暗号資産を保有している人は安全だが、多くの人は懸命に暗号資産を手に入れようとしているという。だが難しいようだ。

「数百万ドルの現金が暗号資産を購入したがっている。だが、売り手がいない」とチョバニアン氏は述べた。

今回の危機における暗号資産の先行きについて、チョバニアン氏はウクライナ国内の投資不足と、近い将来の暗い見通しを懸念していると述べた。だが、ブロックチェーン企業のような新しい企業が参入してくるチャンスもある。

同氏は、暗号資産取引所Kunaの最大の問題は、ウクライナの現地通貨で運営されていることで、「戦争の瀬戸際にあることを考えると、今は誰もウクライナの銀行システムと統合したいとは思わないだろう」と語った。

「我々は少し追い詰められている」。Kunaには約40万件の口座があり、9割はウクライナの人々だ。

車の中で仕事をしているというチョバニアン氏は、数日前と比べると街は間違いなく静かになっていると述べた。多くの富裕層だけでなく、「ビジネスマンや暗号資産保有者」もウクライナを離れただろうが、同氏の知人の多くは家族を国外に送り出したあと、祖国を守るためにウクライナに留まっているという。

「それが今、我々がやらなければならないことだ」と同氏は述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:「CoinDesk TV」のスクリーンショット
|原文:Ukraine’s Wealthy Finding It Hard to Buy Crypto Amid Geopolitical Tension