イーサリアム・レイヤー2「zkSync」、稼働時期を前倒し──スケーリング問題に挑む

イーサリアム(Ethereum)ブロックチェーンのスケーリングを実現するレイヤー2ソリューション「zkSync」が予想外の成果をあげた。EVM(イーサリアム仮想マシン)と互換性を持つZK(ゼロ知識証明)ロールアップ「zkEVM」のテストネットを予定より数年早く稼働させた。

新しいテストネットは、イーサリアムブロックチェーンとの完全な互換性を実現した初めてのZKロールアップであり、ZK技術がイーサリアムブロックチェーンのスケーリングにおいて、どの程度の能力を発揮するかを確認することができる。

過去数年、イーサリアムブロックチェーンの代表的なスケーリング技術である「ロールアップ」は、2つの方向性に分かれていた。OptimisticとZero-Knowledge(ZK:ゼロ知識証明)だ。

どちらもある程度の採用実績があり、Optimisticの代表例としてはArbitrum(アービトラム)が知られている。一方、ZKはDeFi(分散型金融)プロジェクトのDyDxが使用している。ZKロールアップはアプリケーションに特化することに焦点を合わせてきた。あらゆるアプリケーションに対応すると、イーサリアムブロックチェーンでは計算量が多くなるためだ。

Optimistic vs ZK

これまでは2つを比較すると、Optimisticが優勢と考えられてきた。だがzkSyncは、その状況を変える可能性がある。

Optimisticは現在、OpenSea(オープンシー)のようなNFTマーケットプレイスから、Aave(アーベ)のようなDeFiまで、さまざまなアプリケーションに対応できる環境をユーザーに提供している。一方、zkEVMは同じようなユーザー体験を実現するとともに、ほぼ即時の資金引き出しを実現する。Optimisticでは資金の引き出しに、1〜2週間必要だ。

ZKロールアップは計算量が多く、ノードに負担をかけるが、コストをOptimisticの数分の1に抑えることができる。L2Fees.Infoによると、zkSyncでは取引手数料はイーサリアムのメインネットの200分の1となる。

zkEVMが他のZKロールアップと同様の取引手数料を実現できれば、イーサリアムのスケーリング問題は予想より早く解決できるかもしれない。zkEVMは理論的には、流動性、分散化、サービスの特徴を損なうことなく、人気アプリケーションを簡単に展開できるようになる。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:zkSyncのWebサイト(スクリーンショット)
|原文:Ethereum Gets an Upgraded Scaling Testnet – And It’s Actually Years Ahead of Schedule