ビットコイン、上抜け成功が見えてきたか──45000ドルの抵抗線をリトライ【bitbankレポート】

3月に入りビットコイン(BTC)の対ドル相場は早くもチャート上の重要な節目を試そうとしている。昨年までは4.5万ドルがビットコイン相場のサポートとして機能していたが、年初以来、同水準がレジスタンスに転じており、3月までに相場は同水準の上抜けに3度トライし、いずれも失敗に終わっている。

(図1.BTC対ドルチャート 日足 出所:Glassnodeより作成)

1月には、米連邦公開市場委員会(FOMC)12月会合で量的引き締め(QT)の議論が前進していたことが議事要旨から明らかとなり、BTCは米株の下落に連れ安となり4.5万ドル防衛に失敗、その後、ナスダック総合指数が調整局面入り(最高値から10%超下落)となると心理的節目の4万ドルをも割り込んだ。

一方、その後は売り疲れ感や米株の下げ止まり、さらにはウクライナ東部の国境からロシア軍の一部兵隊が撤退したとの報道もあり、相場は戻りを試したが、バイデン米大統領とブリンケン米国務長官からロシアによるウクライナ侵攻を警戒する発言が相次ぎ、ビットコインは再び米株の下落に連れ安となる格好で4.5万ドル上抜けに失敗した。

ロシア国内で取引高が急増

2月は概ね「株安、ドル高、金(ゴールド)相場高」と、市場がリスク回避ムード全開となる中で、ビットコインは上値を伸ばすことができなかった。しかし、月末にかけてのルーブル暴落や、露金融機関のSWIFTからの排除など先進国による厳格な対露経済制裁に伴い、ロシア国内での暗号資産(仮想通貨)取引高が急増。

そこにルーブル防衛阻止を目的とした欧米によるロシア中銀との取引停止と資産凍結が相まって、ロシアでの仮想通貨需要がさらに伸びるとの思惑がはたらき、足元、再び4.5万ドルをトライしている。

それまでは株安に連動していたビットコインだったが、実際に経済的自由を極端に制限された環境での需要の伸びが確認されたことに加え、仮想通貨を用いたウクライナへの支援額が急速に増加したこともポジティブな印象を与えたか。

制裁逃れに対応する米・EU

ただ、制裁の対象となっているロシアによる仮想通貨を用いた制裁逃れも同時に警戒されており、欧州連合では早くも対策が検討され始めた。3月2日に行われた米連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長の議会証言でも、不正を防止するための法的枠組の必要性を議会に訴えており、具体的にどういった措置が取られるか市場では警戒感が広がった。

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仮想通貨の取引自体に制限をかけることは、実際には実効性に乏しいと想定されるものの、これは業界への風当たりが悪化する材料ともなりかねない。また、取引所のオペレーションの観点から鑑みても、今後は本件が切っ掛けで海外送金時のアカウント・デューディリジェンスの厳格化やその他の制限が求められる可能性すらでてくることも想定される。

インフレとFRBの利上げ

他方、パウエル議長の議会証言では、3月FOMC会合での政策金利引き上げ幅について、議長は25ベーシスポイント(bp)の引き上げを支持した。直近では、米国の物価指数の伸びは一層顕著になっており、1月の消費者物価指数(CPI)個人消費支出(PCE)、卸売物価指数市場(PPI)は、それぞれ前年同月比で7.5%、6.1%、9.7%とショッキングな水準で高止まりしている。

(図2.米消費者物価指数、個人消費支出、卸売物価指数の前年同月比チャート 出所:FREDより作成)

これ受けて、市場では3月のFOMC会合で50bpの利上げが決定される可能性が織り込まれていたが、足元の株式市場ではこうした観測は後退し、買い戻しが入っている様子がうかがえる。

ウクライナ情勢を巡り依然として警戒を要する状況が続くと想定しているが、ビットコイン相場の4.5万ドル上抜け成功余地が見えてきたと指摘される。

上抜け成功後、どこまで上げる?

ビットコイン相場が4.5万ドル上抜けに成功すれば、上値目途はどれくらいになるだろうか。

(図3.BTC対ドル、先物資金調達率チャート 日足 出所:Glassnodeより作成)

図表からも明確だが、相場が4万ドル以下で推移していた際に先物の資金調達率はマイナス振れており、ある程度ショートポジションが積み上げられていることが指摘され、中期レジスタンスとなる4.5万ドルの突破でショートポジションが踏み上げられる可能性があるか。

また、テクニカル的にも揉み合い相場は長くなれば長くなるほど次のトレンドに向けてエネルギーを溜めるとされており、ブレイクアウトには高いボラティリティが伴ってもおかしくない。

わかりやすい上値目途としては、まず、長期トレンドとして意識される200日移動平均線が走る4.92万ドル、心理的節目の5万ドル、それから昨年12月に相場のレジスタンスとして機能した5.2万ドル(図3内橙点線)が密集する、4.92万ドル〜5.2万ドルエリアとなりそうだ。

反落の場合、1月24日安値と2月24日安値を基点とするトレンドライン(図3内青線)が相場のサポートとして機能するかが、安値圏での値固め継続の条件となりそうだ。


長谷川友哉:ビットバンク(bitbank)マーケット・アナリスト──英大学院修了後、金融機関出身者からなるベンチャーでFinTech業界と仮想通貨市場のアナリストとして従事。2019年よりビットバンク株式会社にてマーケットアナリスト。国内主要金融メディアへのコメント提供、海外メディアへの寄稿実績多数。


|編集・構成:菊池友信、佐藤茂
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