ビットコイン(BTC)はインフレヘッジと考えられている。つまり、理論的にはロシアのウクライナ侵攻で原油が2008年以来の高値になるなか、ビットコイン市場は盛り上がるはずだ。
だが、話は単純ではない。原油高によって米連邦準備理事会(FRB)はインフレへの懸念を深め、金融引き締めを強化するかもしれない。
この数カ月、ビットコインはFRBのタカ派姿勢に反応して下落しており、一見すると、株式市場と同期しているように見える。
一部の暗号資産アナリストは、ビットコインが株式市場から切り離され、ゴールドのような安全資産として取引されるかどうかを問い始めている。株式が下落しているときに上昇したり、価値を維持できる資産になるのだろうか。
Quantum Economicsのアナリスト、ジェイソン・ディーン(Jason Deane)氏は「ビットコインは安全資産として成熟する最初のサインを示し始めているのではないかと考えている。もしそうなら、理論的にはビットコインにとってプラスになるだろう」と述べた。
ロシアのウクライナ侵攻で当初、3万ドル台まで下がったビットコインは4万ドル台を回復している。
原油価格、13年ぶりの高値
原油価格は3日未明に上昇し、2008年以来の高値となった。アメリカの原油指標であるWTI(West Texas Intermediate:ウェスト・テキサス・インターミディエート)原油はが一時1バレル116.57ドルまで上昇した。
多くのエコノミストが述べている懸念は、原油価格の上昇により、ガソリン価格が上昇し、さらには製造業や運輸業のコストも上昇する可能性があることだ。さらにすでに過去40年で最高水準となっているインフレをさらに悪化させる可能性がある。
パウエルFRB議長は2日、下院金融サービス委員会の公聴会で、FRBは今月末に0.25%の利上げを行うとの見通しを述べ、金融引き締めの理由として、高いインフレ率、厳しい労働市場、旺盛な経済需要をあげた。
2日の議会証言では、原油については直接触れなかった。パウエル議長は3日、上院銀行委員会に出席する。
スタグフレーションの可能性も
フィッチ(Fitch)のチーフエコノミスト、ブライアン・コールトン(Brian Coulton)氏は「ロシアとウクライナの戦争は原油とガソリンの価格を押し上げ、世界とアメリカでのインフレ圧力を強めると考えている」と述べた。
コールトン氏は、多くのエコノミストは、価格変動が大きな食品やエネルギー価格の影響を除いた「コア・インフレ率」に注目しているが、原油価格によるショックが繰り返されると問題は大きくなりかねないと述べた。
こうした議論は、2022年の現時点までに、ビットコインが多くのトレーダーが期待していたインフレヘッジとして機能していないことに起因している。一方で、ゴールドのパフォーマンスはビットコインを上回っている。
消費者物価指数の上昇がエコノミストに衝撃を与え続けているなか、ビットコインは年初から8%下落。インフレ率は高いが、経済成長はごくわずか、あるいはゼロ成長という「スタグフレーション」の可能性さえ語られている。
「暗号資産は、ボラティリティと規制の不確実性、予測不可能な価格変動によって、インフレや原油、経済の弱さに対する効力が損なわれている」とNationwideの投資リサーチ責任者マーク・ハチェット(Mark Hackett)氏は語った。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin Analysts Ponder Impact as Oil at Highest Price Since 2008