ブロックチェーン業界は独特で新しく、目まぐるしく動いているように見えるかもしれないが、新しい業界が時とともに進化していくパターンは、不気味なくらい一貫している。カリフォルニアでのゴールドラッシュ、世界的な石油ブーム、インターネットの台頭などを考えてみて欲しい。
これらの経済的ディスラプション(創造的な破壊)はそれぞれ、似たようなパターンを持っていた。まずは、投機から実体のあるものへのシフト。生き残りに成功してきた業界はそれぞれ、富の約束とマーケティングが加速させる新しい世界への投機から始まったのだ。それはすべて、真の信奉者を生み出し、普及を促進するための戦略である。
経済的ディスラプションの2番目の要素は、関係者層のシフトだ。時間とともに、早くから取り入れる人たちのグループが移り変わり、他のタイプの個人や組織、企業が参入を始める。新規参入者たちは、新しい業界構築を成功させるのに必要なものを導入するように、圧力をかける。
3番目に、初期の混乱が収まると、新しい業界には価値観が生まれる。2番目にやって来る参加者集団が、持続的な成長の基盤となる原理を持って、真のビジネスを構築する方向へと舵取りを行うのだ。
ブロックチェーン業界は、実質的なものへと移行している。何が可能になるかという基本的な理解ははるかに明確になった。たくさんのユースケースが生まれた。関係者の層もシフトした。機関投資家の資本が参入してきている。
ブロックチェーンを使っていると知らないうちに何千万もの人がブロックチェーンを使ったり、そのような可能性が出てくれば、業界としてかなりいいところまで来ているということが分かる。
ブロックチェーンにとっての吉報は、ますます多くの人がブロックチェーンテクノロジーを理解して、意義のある形で価値を生み出す方法を知りたいと考えていることだ。参加者が高度な知識を持つほどに、業界に対する需要は高まる。ブロックチェーン分野での価値を理解するために、過去に使われていた従来型のモデルは有効ではない。
目先の利益から持続的な価値へ
短期的な価値にあまりに力を入れてきた業界において、持続的な価値を生み出すにはどうしたら良いのか?そもそも、持続的な価値とはどんなものだろうか?
持続的価値というものに、確かな定義がある訳ではない。しかし私は、競争上の優位や、長期的な経済的意思決定に重点を置く戦略について多くの著作を残した経営学者マイケル・ポーター(Michael Porter)氏のコンセプトを採用している。
ポーター氏によれば、テクノロジーや変化の速度に関わらず、価値の創造の中核的な特徴は一貫している。この考え方によると、ブロックチェーンや暗号資産(仮想通貨)市場のボラティリティをめぐる盛り上がりはすべて、価値の本質とは関係ないのだ。本当に重要なのは、ブロックチェーンテクノロジーが可能にしてくれること、そしてそれが真の持続的な価値なのだ。
アルゴランドでは当初から、価値を構築することを考える際に、長期的なフォーカスを中核としてきた。2019年に会社を立ち上げた時、何を作ろうとしているのかを説明するのに私は苦戦していた。
私たちは、あらゆる価値、データ、変更不可能な記録が、国際的な規模で作られ、交換できる、国家経済や国家とは異なる新しいタイプの経済エンジンを作っているというのが、私が思いついた最善の説明だった。
伝統的経済に求められる性質は何だろうか?
インフラの質:道路、橋、パイプ、通信接続など。これらインフラが、自信を持って価値を交換する力を与えてくれる。
事業を行う容易さ:経済の中にいる人々の集団が経済活動に参加するのを阻む障壁は何だろうか?起業の難しさ、税金や関税、入国管理などが挙げられる。これらの問題は障壁を生むのだ。
教育へのアクセス:人々が情報に簡単にアクセスし、開発を行う方法を理解できる場所を生み出す必要がある。そのような場が、革新のための中心地となるからだ。それがなければ、停滞する可能性が高い。
持続可能性:例えば、主要自動車メーカーは現在、電気自動車へとシフトしている。もちろん、経済活動がその中心となる。
単純に考えれば、これらの要素すべてが組み合わさって、革新の速度が決まる。例えば、シンガポールは50年前、教育、テクノロジー、貿易優遇措置、事業活動を簡単にできるようにすることに大きく投資した。シンガポールの1人当たりのGDPは50年前、1000ドルに満たなかった。それが今では、約6万ドルだ。
成功するブロックチェーンの条件とは?
国のパフォーマンスを他国と差別化する最も大きな要因は何だろうか?これら4つの各要素における摩擦の大きさだろうか?摩擦が大きければ、革新のスピードは遅くなり、これら4つの要素が効果的に力を合わせることができなくなる。
一から新しい経済を構築できたらと、創造してみよう。しかも、摩擦を取り除くような形でできたらどうだろう?
金融の未来が構築されるブロックチェーンは、ダウンタイムがゼロ、フォーク(分岐)もゼロで、完全なるファイナリティ(決済が完了する確実性)のある場所だ。活発な開発者、増加するユーザーとユースケースから成る力強いコミュニティが必要となる。持続可能性を考慮して構築することも必要だ。
ブロックチェーン分野における最終的な勝者は、摩擦を除去することを絶え間なく追い求め、持続的価値を構築することに重点を置く人たちだ。
ブロックチェーン業界は、次にどこに向かうのだろう。私たちにできる最善のことは、あらゆるウェブプロトコルで一貫して測定、適応できる経済指標の堅固な標準規格を準備することだ。
どのプロジェクトが真の価値を生み出すかを示す適切な指標を見つけ、真の勝者が成功を収め、すばやく前進できるようにするのだ。
成功するブロックチェーンは、世界最高の技術インフラ上で、持続的な価値を持つ新しい経済的エンジンを革新、開発、創造することを続けていく。それこそが、究極的に大切なことだ。
W・ショーン・フォード(W. Sean Ford)氏は、クリエーターエコノミーや、伝統的金融と分散型金融を統合させるような幅広いプロジェクトを支えるブロックチェーンプラットフォーム、アルゴランド(Algorand)の最高執行責任者である。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
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|原文:How to Make Blockchain a New Kind of Economic Engine