ビットポイント:行政処分の解除から2週間で襲った不正流出──小田社長、声を震わせた90分会見

ビットコインやリップルなどの仮想通貨の不正流出を報告した、仮想通貨取引所のビットポイントは7月16日、都内で緊急記者会見を開いた。11日夜のわずか数時間で、国内と海外の取引所で管理するホットウォレットから約33億円相当の仮想通貨が消えた。

ビットポイントの小田玄紀社長はこう説明した。自主規制ルールは守っていた。顧客の預かり資産の大半をインターネットから隔離されたコールドウォレットで保管していた。ホットウォレットを利用するために必要な秘密鍵を暗号化して、複数人で管理(マルチシグネチャー)していた。それでも、その秘密鍵は何者かによって窃取され、その暗号は解読され、仮想通貨は引き出された。

ビットポイントに運営上の問題はあったのか?取引所が完全に顧客資産(仮想通貨)を守る方法はあるのか?

16日の記者会見に出席したビットポイント社長の小田玄紀氏(左)とCOOの朏仁雄氏。

16日午後3時、小田氏は都内の会見場に同社COO(最高執行責任者)の朏仁雄(みかづき・きみお)氏と共に姿を見せると、頭を深々と下げた。90分におよんだ会見で2人は、今回の流出の経緯を説明した。

ビットポイントが仮想通貨リップル(XRP)の送金に関するエラーを検知したのは、11日午後9時11分頃。それから日付けが変わるまでの間に、同社が管理する5種類すべての仮想通貨のホットウォレットの秘密鍵が盗まれ、暗号は解読され、それぞれの仮想通貨が不正に引き出された可能性が高いと判断した。

(ビットポイントの資料より)

ビットポイントの国内取引所から流出した仮想通貨の合計は、日本円で約30億2800万円に相当する。そのうち顧客から預っていた分は20億6000万円で、ビットポイントの全預かり資産の約13%にあたるという。およそ11万人の会員を有するビットポイントだが、今回の流出の被害対象者は約5万人だと小田氏は述べた。

国内に加えて、ビットポイントが運営する海外の取引所でも不正流出は起きた。流出額は最大で2億5000万円。同社は、韓国、台湾、香港、パナマ、タイ、マレーシアで取引所を運営するが、このうちの複数の取引所で流出を確認している。

(流出した仮想通貨を)「追跡できないかと考えており、いろいろな方に協力いただいて追跡しています」と小田氏は話した。ビットポイントは実際に、リップル財団や海外の主要な取引所の運営会社などに協力を要請した。

ビットポイントは流出被害の対象者に現物(仮想通貨)による払い戻しを行うとしているが、小田社長は「ウォレットなどにおけるセキュリティが確保されてから」と述べ、払い戻し時期に関しては明らかにしなかった。同社は、顧客資産の流出相当分を調達を行うなどしてすでに保有している。

ビットポイントと、その親会社で電力小売り事業や宿泊施設の開発や運営などを手がけるリミックスポイントは、両社あわせて約30億円の自己預金残高を保有しており、今後の事業の継続に問題はないと、小田氏は述べた。

しかし、小田氏は「30億円を超える流出であり、(リミックスポイントの)業績に与える影響は大きい」と加えた。

12日午前、ビットポイントは仮想通貨の取引や受送金を含むすべてのサービスを停止し、警視庁に被害相談を行った。同日午後には、金融庁に対して流出を報告。現在の段階で、流出の原因や経路などの詳細は分かっていない。

ビットポイントは2017年9月に金融庁から仮想通貨交換業者として登録され、取引所事業の海外展開を行うなど複数の業務提携を結ぶなどして、口座開設数を伸ばしてきた。同社が取り扱う仮想通貨は、ビットコイン(BTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)、イーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)、リップル(XRP)の5種類。

90人近くの報道関係者が集まった16日の記者会見。

会見に同席した朏氏によると、有害に動作させるソフトウェアのマルウェアがビットポイントに届くことはあると話す。「マルウェアメールが来ていた事実は、当局に届け出ていた」と述べた。

2018年1月、国内では取引所のコインチェック(現在はマネックスグループの傘下)から580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出した。北朝鮮のハッカー集団による犯行を示唆する報告書も出ているが、いまだに誰が奪ったのかは不明だ。

仮想通貨を利用したマネーロンダリングや、テロ資金供与の対策強化が国内外の取引所に迫られている中、今回のビットポイントの不正流出問題は、同業界の今後の発展にどう影響していくだろうか。

取材・文・写真:佐藤茂、小西雄志

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