SBI北尾社長、Web3.0時代のビジネスに注力──メタバースの業界団体設立へ【FIN/SUM】

SBIホールディングスの北尾吉孝社長は3月29日、Web3.0時代に即したビジネスに注力することを明らかにした。金融庁と日本経済新聞社が主催するフィンテックイベント「FIN/SUM2022」に登壇し、暗号資産やメタバースへの取り組みを説明した。

Web3.0:Web3とも呼ばれ、ブロックチェーンなどのピアツーピア技術に基づく新しいインターネット構想で、Web2.0におけるデータの独占や改ざんの問題を解決する可能性があるとして注目されている。
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ブロックチェーンや暗号資産に関する事業開発は、今後の成長に不可欠であるという認識を示し、「まだなにもしていないところは、すでに時代遅れ」と述べた。

北尾氏は、機関投資家の暗号資産取引が増加していることを紹介し、成長性に期待を示した。大手暗号資産取引所のコインベースにおける2021年の機関投資家の取引額は1兆1400億ドル(約132兆円)で、前年から約10倍まで急増したことを挙げた。

また、同氏はメタバースにおいて新たな業界団体を設立する方針を明らかにした。デジタルスペースの発展に寄与する政策提言や情報発信を実施していくという。

暗号資産のマネロン対策でパネル

「FIN/SUM2022」では3月30日、暗号資産をテーマとしたセッションも予定。「ブロックチェーン時代のAML/CFT:FATF改訂暗号資産ガイダンスと今後の展望」と題したパネルディスカッションを実施する。

FATFが2021年10月に公表した「暗号資産及び暗号資産交換業者に対するリスクベース・アプローチに関するガイダンス」の主なポイントについて講演する。

法定通貨に連動するステーブルコインやP2P取引、 分散型金融(DeFi)に加え、暗号資産交換業者がいかにしてFATF基準に対応するかを議論する。FATFコンタクト・グループ共同議長の金融庁・羽渕国際政策管理官がモデレーターを務める。

AML/CFT:犯罪行為で得た収益の出どころを分からなくするマネーロンダリング対策と、テロ組織への送金などを防ぐテロ資金供与対策を指す。

FATF(金融活動作業部会):マネーロンダリングやテロリストへの資金供給を防ぐ対策の基準をつくる国際組織。

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ブロックチェーンデータ分析のチェイナリシス(Chainalysis)によると、暗号通貨を利用した犯罪は2021年に過去最高を記録。不正アドレスへの流入額は140億ドルにのぼり、前年の78億ドルから大幅に増加している。

NFTでは平議員が登壇

プラットフォーマーやIPコンテンツホルダーなどの参入が相次ぐNFTでは3月30日、NFT政策検討PT座長を務める自民党の平将明議員が登壇する。

NFT(ノン・ファンジブル・トークン=非代替性トークン):ブロックチェーン上で発行される代替不可能なデジタルトークンで、アートやイラスト、写真、アニメ、ゲーム、動画などのコンテンツの固有性を証明することができる。NFTを利用した事業は世界的に拡大している。

「NFTのルール形成と市場成長」をテーマに、平氏が政策の方向性について講演した後、ルールの在り方や市場成長に向けてパネルディスカッションを実施する。

暮らしを変えるフィンテック

「ビジネスと暮らしの二刀流」をテーマに、3日間にわたって講演が実施される。キャッシュレス決済や保険、新たな投資商品など、消費者の生活に直結するフィンテックの可能性について、パネルディスカッションなどで討議する。

また、ESGやサステナビリティに関するセッションも設けられ、金融と社会の調和についても議論される。同イベントは、東京・丸の内の会場とオンラインのハイブリットで3月31日まで開催される。

|取材・テキスト:菊池友信
|編集:佐藤茂
|トップ画像:SBIホールディングス北尾吉孝社長(撮影:菊池友信)