マネックス、SBI、楽天、ポイントを暗号資産の入り口に──証券とクリプトの連携強化

国内の大手ネット証券各社が、個人投資家に付与するポイントを暗号資産(仮想通貨)投資を始める入り口として活用する動きを強めている。ポイントは、現預金と比べて気軽に利用する消費者も多く、暗号資産を購入する心理的ハードルを下げる狙いがある。

マネックス証券は、クレジットカードによる積立投資信託をスタートした。初回購入者は、4月下旬に最大550円分のマネックスポイントが手に入る。売れ筋は、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」(運用会社:三菱UFJ国際投信)など、米国株式を中心に投資する投資信託だという。

暗号資産交換業者のコインチェックをグループに持つマネックス証券は、溜まったポイントをビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、リップル(XRP)に交換できるサービスを展開している。

ポイントがもらえる投資信託

クレジットカード払いでポイントが貯まる積立投信には、大手ネット証券が次々に参入している。先行した楽天証券は2018年から、楽天カードによる投資信託の積立ができるサービスを開始。2021年4月に、クレカ投信積立設定が100万人を突破するなど、新規顧客の獲得に寄与してきた。

SBI証券は三井住友カードとタッグを組み、2021年6月からサービス展開。SBIグループと関わりの深いリップル(XRP)でキャンペーンも展開している。3月下旬には、auカブコム証券もサービスを始めた。

暗号資産に交換できるポイント

マネックス証券は2019年4月から、傘下のコインチェックとのシナジー効果を狙って、マネックスポイントを暗号資産に交換できるサービスを開始。Amazonギフト券や大手共通ポイントに比べて利用率は低いものの、暗号資産に交換するユーザー数は右肩上がりで伸びているという。

マネックス証券プロダクト部の木下直樹氏は、「ポイント交換は、新たな投資商品にチャレンジするときの心理的障壁が低い」とし、「暗号資産をアセットクラスの1つとして認知してほしい」と語る。

今後、交換できる銘柄を追加する方針だ。また、コインチェックが展開するNFTに関連したポイント交換サービスも検討するという。1月には、マネックス証券の清明祐子社長が「マネックスポイントをビットコインなどに交換している」と発言している。

発行総額2.5兆円の楽天ポイント

楽天グループは、累計発行2.5兆円分を超える楽天ポイントを運営していることでも知られる。暗号資産交換業者の楽天ウォレットでは、楽天ポイントを使った暗号資産購入が可能だ。

楽天ウォレットによると、手軽さが好評でポイントの利用者数と金額が伸長しているという。暗号資産を電子マネー「楽天キャッシュ」にチャージして、日常の買い物で使えることも特徴だ。

楽天グループは、実際の暗号資産を買い付けるのではなく、ポイントでビットコイン運用の疑似体験ができる「ポイントビットコイン」も展開。このサービスを経由して、楽天ウォレットの口座を開設するユーザーもいるという。

SBIはクレカ利用3%分のXRP

SBI証券は、ポイントではなく、クレカ利用額に応じて暗号資産の交換券を活用。通常のクレジットカードのポイントに加えて、利用額の3%分の「XRP交換券」を付与するキャンペーンを展開している。

クレカ利用の対象期間は1月から4月までで、「XRP交換券」はSBI VCトレードでXRPに交換できる。キャンペーンは、三井住友カードを保有し、SBI証券でクレカ積立投信を利用しているユーザーが対象だ。

SBI VCトレードによると、「還元率の高さもあり、想定の倍以上のエントリーがあった。他のプレゼントキャンペーンでも暗号資産が好まれるシーンが増え、証券顧客の中でも暗号資産が浸透している手応えを得ている」という。

証券から暗号資産の流れを作れるか

投資信託協会が3月に発表した調査によると、2021年における投資信託の保有率は約28%で、前年から4.5ポイント増加した。日本の人口を1.2億人とすると、3360万人が投信を保有していることになる。

日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が公開しているデータでは、日本における暗号資産取引口座は約562万口座。一部の暗号資産取引所では、ビットコインなどを積立投資できるサービスにより、個人の資産形成として提案している。

2019年に話題となった老後2000万円問題では、投資の知識を求め一般消費者がセミナーに殺到した。最近では、資源価格の高騰による物価高や急激な円安が与える生活への影響も大きく、資産形成を考えるシーンも増えそうだ。

金融庁や消費者庁が、暗号資産(仮想通貨)を名乗る詐欺行為などのトラブルに対して注意喚起を行っていることもあり、消費者の不安や警戒感は根強い。正当に業務を運営する業者のもとで、暗号資産のリスクとリターンを実感してもらうことが暗号資産取引の拡大につながるはずだ。

|取材・テキスト:菊池友信
|編集:佐藤茂
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