世界的に注目を集めるGameFi事業に参入するサイバーエージェントは、10億円を超える資金を初期フェーズに投下し、同市場で世界トップ5にランクインする構想を進める。
新たに設立されたCA GameFiで取締役を務める川村猛プロダクトプロデューサーと、西原政比彦ビジネスプロデューサーが、coindesk JAPANのインタビューで明らかにした。
GameFi:ゲーム(Game)と金融(Finance)を掛け合わせた用語。特に、ゲームをプレイすることでトークンや金銭などを獲得できるものをPlay to Earn(プレー・ツー・アーン)と呼ぶ。東南アジアではゲームで得た収益で生活をするケースも出ている。
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サイバーエージェントは3月23日に、ブロックチェーンゲーム事業子会社のCA GameFiを設立。グループで培ってきた大規模ゲームの開発・運用ノウハウとクリエイティブ力を生かし、英語圏ユーザーを対象に展開していく。
ゲームをコア事業の一つに据えるサイバーエージェントグループは2021年度、1043億円の営業利益を計上しているが、そのうちの964億円をゲーム事業が稼いだ。ゲーム事業の主力子会社Cygamesは、サイバーエージェントに加え、任天堂やディー・エヌ・エーが株主として名を連ねる。
角川アスキー総合研究所によると、Cygamesは2021年のパブリッシャー別の売上で国内トップで、競馬をテーマとした「ウマ娘 プリティーダービー」の売上は1295億円と推計されている。
GameFiの可能性
川村氏は、このタイミングでGameFiに参入する理由として、「市場としても、エンターテイメントとしても、新たな可能性を感じた」と話す。また、グループで蓄積したノウハウが生かせると自信を見せる。
ブロックチェーン関連事業を生み出したいと考えていたなかで、最初はNFTに注目していたという。その後、GameFiに出会い、将来性を感じた。
Web3の新たな潮流によって、市場規模は拡大を続け、国内海外のゲーム会社が、次々に参入を表明している。川村氏は「Web3はゲームから進んでいく」と予測し、「まだまだ黎明期。この市場にいち早く挑戦し、市場とともに成長させていく」と意気込む。
2021年秋には、Play-to-Earnゲームの「アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)」を開発・運営するベトナムのスタートアップ、Sky Mavisの企業評価額が3340億円に達した。
NFT(ノン・ファンジブル・トークン=非代替性トークン):ブロックチェーン上で発行される代替不可能なデジタルトークンで、アートやイラスト、写真、アニメ、ゲーム、動画などのコンテンツの固有性を証明することができる。NFTを利用した事業は世界的に拡大している。
Web3:Web3.0とも呼ばれ、ブロックチェーンなどのピアツーピア技術に基づく新しいインターネット構想で、Web2.0におけるデータの独占や改ざんの問題を解決する可能性があるとして注目されている。
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Play-to-Earnの衝撃
川村氏は初めてアクシー・インフィニティをプレーしたことを振り返り、「ゲームを通じて、お金を稼げることが新鮮だった」と語る。
オンラインゲームで金銭を稼ぐ行為では、これまでもオンラインゲームのアイテムを法定通貨で売買するRMT(リアル・マネー・トレード)という手法があった。しかし、基本的にはゲームの利用規約で禁止されている。
GameFiでは、ユーザーの権利として、ゲーム上のアイテムなどをNFTとして受け取れることに加え、売買も可能だ。トークンエコノミーが広がることで、今までなかった体験ができると期待する。
人員倍増で大規模開発へ
ゲーム開発では、国内のサイバーエージェントグループの開発ノウハウを活用する。CA GameFiの従業員は現在、約30名。将来的には、70~80名になると見込んでおり、開発は全て内製化する方針だと、西原氏は明かした。
グループでは、国内のIPコンテンツホルダーとの連携実績も多い。国内大手版元とのリレーションシップを生かす。マーケティング戦略では、スマホゲームのマーケティング手法を取り入れる。トークンエコノミーでは、ブロックチェーン関係の企業と連携し、専門知見を取り入れながら事業開発を進めているという。
現状のGameFiの問題点について「通貨の価値が短期的に跳ね上がるものの、それを持続させることが非常に難しい」と、川村氏は指摘する。CA GameFiでは、グループの大規模開発のノウハウを背景に、「ゲームの価値が作り込まれていて、長期にわたって継続するサービスを展開したい」と意気込む。
|取材・テキスト:菊池友信
|編集:佐藤茂
|フォトグラファー:多田圭佑