米ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所は4月12日、北朝鮮が暗号資産(仮想通貨)を使って制裁を回避することを手助けしたとして、元イーサリアム開発者のバージル・グリフィス(Virgil Griffith)被告に懲役5年3カ月、罰金10万ドル(約1300万円)の判決を下した。
グリフィス被告は2019年4月、北朝鮮が平壌で開催したカンファレンスに出席し、暗号資産とブロックチェーンについてのプレゼンテーションを行い、同年11月に逮捕された。2021年9月には「国際緊急経済権限法」違反を認めている。
刑期が最長20年となる可能性もあったが、被告は連邦検事と司法取引を行い、求刑は5年3カ月〜6年6カ月に短縮されていた。被告はすでに10カ月収監されており、その期間は懲役期間に含まれる。
刑務所の厳しい状況
カーキ色の囚人服を着たグリフィス被告は、傍聴席の両親や数人の友人と視線を交わした。
判決の前に、グリフィス被告の主任弁護人ブライアン・クライン(Brian Klein)氏は、ケビン・キャステル(Kevin Castel)判事に対して、検察側の量刑が考慮していないと思われること、例えば、被告が収監されているメトロポリタン刑務所の厳しい環境などを考慮するよう求めた。
弁護人は、新型コロナウイルス感染拡大による長期の独房生活、家族との面会禁止、毛布や暖かい衣類の入手制限、さらには洗面台をトイレとして使うことを強制されたことなど、被告が刑務所で経験した「きわめて試練に満ち、非人道的な複数の状況」を訴えた。
また、刑務所ではキッチンと売店をギャングが支配下に置いているため、被告は1日に多くて2度の食事、しかもほとんどはピーナッツバターとジェリーサンドのみしか取ることができないと述べた。
こうした過酷な環境を考慮し、弁護人のクライン氏は判事にグリフィス被告がメトロポリタン刑務所で過ごした10カ月を20カ月相当とすること、また被告を家族に近く、環境が整ったペンシルベニア州のアレンウッドロー刑務所に移すことを求めた。
さらに弁護人は、グリフィス被告の心理評価についても触れ、情状酌量を求めた。
グリフィス被告自身も、刑務所で「教訓を学び、自分がここにいること、そして自分がしてきたことを深く恥じている」と述べた。
ヒーローになりたかったのか?
だが、グリフィス被告の「教訓を学んだ」という訴えも、弁護人の刑務所についての主張も判事には無関係だった。
被告は親切で思慮深い人物で「大きな個人的犠牲を払って」ブロックチェーン技術に関する資料を共有するために北朝鮮に行ったという議論があるが、「真実ではない」とキャステル判事は述べた。「ここに見られるものは意図的なものであり、(中略)制裁を回避する方法を教えたいという願望だ」。
判事が最も問題にしたのは、1枚の写真だろう。そこには、北朝鮮の伝統的な衣装に身を包み、「制裁なし!」と書かれた黒板の前に立つグリフィス被告の姿を写っている。
「事実として、ヴァージル・グリフィスは…(中略)暗号資産のヒーローとしてシンガポールなどに戻ることを望んでいた」とキャステル判事は断じた。「政府の制裁に立ち向かい、大胆不敵さと気高さで賞賛されることを望んでいた」。
判事も検察も、ロシアのウクライナ侵攻およびロシアに対するアメリカ政府の制裁措置に触れ、グリフィス被告や「似たような立場にある者」が将来、アメリカの制裁措置に違反することを防ぐために、厳しい判決を正当化した。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:元イーサリアム開発者のバージル・グリフィス氏(CoinDesk archives)
|原文:Former Ethereum Developer Virgil Griffith Sentenced to 5+ Years in Prison for North Korea Trip