ステーブルコイン「TerraUSD(UST)」は人気が高まっているが、ドルと1対1の価値を維持するためにアルゴリズムを使っているため、少なからぬリスクがある。
「時価総額が50億ドル、100億ドルのステーブルコインなら、すべては楽しいゲームみたいなもの」とステーブルコイン「USDT」を手がけるテザー社の最高技術責任者(CTO)パオロ・アルドイノ(Paolo Ardoino)氏はParis Blockchain Week Summitでのインタビューで述べた。時価総額が大きくなればなるほど、状況は変わるだろう。
USTは現在、テザーのUSDT、サークルのUSDコイン(USDC)に次いで、時価総額第3位のステーブルコインだが、差はかなり大きい。とはいえ、USTは2021年はじめの時価総額1億8000万ドルから、4月18日時点では170億ドル超と急成長している。
100倍以上の急成長
Terraform Labsが、ステーブルコイン「UST」と暗号資産テラ(LUNA)を手がけている。
USTは、スマートコントラクトをベースとしたアルゴリズムを使って、ドルとの1対1の価値、つまり1UST=1ドルを保っている。具体的には、USTを発行するために、暗号資産テラ(LUNA)を焼却している。
だがアルドイノ氏は「(UST規模のアルゴリズム型ステーブルコインで)清算が発生しても対応できる。しかし、USDTのような時価総額1000億ドル規模のステーブルコインが、暗号資産を主な裏付け資産としていたら、どうだろうか。何が起こるかを予測することは本当に難しいし、十分な流動性が保障されているかどうかもわからない」と考えている。
USDTの時価総額は820億ドル、USDコインは490億ドルと、USTと比べるとはるかに大きい。それなのになぜ、同氏はUSTを気にかけているのだろうか。おそらく、USTが2021年に138倍の成長を遂げ、ステーブルコインの2大トップを急速に追い上げているからだろう。
アルゴリズム型ステーブルコインへの懸念
しかし、急成長にはリスクが伴う。アルゴリズム型ステーブルコインは問題点も指摘されており、例えば、USTの仕組みには、暗号資産テラ(LUNA)が組み込まれているため、テラの変動がUSTのドル連動の大きな脅威となり得る。
もう一つの懸念は、UST需要の67%以上がAnchor Protocolによるものであることだろう。
テラ(Terra)ブロックチェーンを基盤とする分散型貯蓄プロトコルであるAnchor Protocolは、USTに対して19.5%という驚異的な高利回りを提供している。仮に利回りが維持できなければ、UST保有者はUSTの売却に動き、取り付け騒ぎに発展する恐れもあると考えているアナリストやトレーダーもいる。
Terraform Labsに取材を試みているが、また返答はない。
投資家が懸念を持っているステーブルコインはUSTだけではない。時価総額最大のステーブルコイン「USDT」の発行元であり、アルドイノ氏自身が所属するテザー社は、USDTのドルとの1対1の価値を裏付けるために十分な担保(裏付け資産)があるかどうかが疑問視されている。
USTの急速な成長によって、一部のトレーダーは、今後の安定性と暗号資産市場に及ぼすリスクについて懸念している。一方、アルドイノ氏は「USTの成功を願っている」と述べた。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:テザー社のCTO、パオロ・アルドイノ氏(Twitter/Bitfinex, modified by CoinDesk)
|原文:Tether’s Paolo Ardoino on UST: ‘It’s All Fun and Games’ Until You’re a $100B Coin