NFT投資家のマイケル・レビー(Michael Levy)氏は、暗号資産(仮想通貨)界の起業家でもある。現在は、NFTを担保にした貸付プラットフォーム「フローティ(Flowty)」の立ち上げに取り組んでいる。
レビー氏は、筋金入りの「暗号資産ネイティブ」というわけではない。そこが彼の強みと言えるだろう。
指導的立場にいる人や、多くの開発者のように、技術の方から暗号資産分野に入ったのではない。昔からのスポーツコレクションへの情熱を追いかけているうちに、理にかなった未来の形として、この分野に引き込まれていった。
幼い頃からのコレクター
「NFTに出会う前、最も情熱を持ってコレクションしていたのは、MLBのバブルヘッド(首振り人形)だった」と、レビー氏は語る。「友達と一緒に、毎年新しいスタジアムを選んで、バブルヘッドを集めていた」
それはもちろん、新型コロナウイルスのパンデミック前の話だ。他のほとんどの人と同じように、ロックダウン期間中はレビー氏も退屈してしまった。しかし、虚しさを埋めるためにロビンフッドやコインベースで投資を始めたトレーディング初心者とは違い、レビー氏はコロナ禍前の趣味からそれほど遠ざかる必要はなかったのだ。
「2020年9月、NBAがデジタルコレクション品を発表し、リリースしたというツイートを見た」とレビー氏。彼はすぐに、NBAのプレーのハイライトを集めたNFTシリーズ「NBA Top Shot」にサインアップしようとしたが、当時プラットフォームはまだ、限定ベータ版であった。
しかし、Top Shotチームに直接メッセージを送って、何とか参加に漕ぎつけた。「おそらくアクティブユーザーが200〜250人しかいない初期の頃」だったと、レビー氏は振り返る。
Top Shotはまもなく、真に成功した初の主要NFTブランドとなり、2021年初頭には大きな関心を集め、価格も高騰した。その後、NFTブームが落ち着くに伴って、大きく後退した。
レビー氏は初期に参加できたことで、大きな利益を手にした。しかし、彼がチャンスをしっかり見据えることができたのは、暗号資産に関する専門知識のおかげではなかった。
「子供の頃からスポーツカードを集めてきた人間として、NFTを見ていた」とレビー氏は話す。「多くの点で、NFTはスポーツカード2.0のようなものだ。はるかにシェアしやすくて、ボーダーレスと言っても良いだろう」
もちろん、バブルヘッドや野球カードには、実際に手にすることができる、という大きな違いがある。しかし、ベテランコレクターのレビー氏は、そこが大きな差を生むとは考えていない。
「実際に手にできるカードが魅力的な理由を分析すると、(中略)すべてとは言わずともその多くが、デジタル資産にも共通するんだ」とレビー氏は主張する。
「意義を与えているのは、手にできる紙でもなければ、写真でもなければ、その写真が呼び起こす反応でもない。周りの人たちに『私はバスケットボールファンで、希少なアイテムに価値を見出していて、このプレイヤーとこのチームが好きなんだ』と伝えることができる、という点だ」と説明した。
NFTを担保に
暗号資産テクノロジーは、コレクション品を使って、信じられないような新しいことも実現する。例えば、ローンの担保として簡単に使えるようにするのだ。
レビー氏が立ち上げる新しいプラットフォーム「フローティ」は、NFTを担保として使うのを簡単にするためのもの。さらにそのピアツーピアの性質が、ボラティリティの高いデジタル資産を担保としてどのように評価するかという、大きな課題を部分的に解決してくれる。
その仕組みについて、レビー氏は次のように説明した。
「手持ちのNFTを選んで、求めている(ローンの)パラメーターを入力する。例えば、NFTを持っていて、5000ドルの価値があると思っているとする。そして、それに対し2000ドルを借りたくて、30日間で3%の利子を払う用意がある。(貸し手が)そのオファーを気に入れば、そのローンは成立だ。貸し手はローンを返済してもらうか、担保(のNFT)を回収し、それに対し相手方は敵対的なことはできない。すべてがトラストレス(信頼できる第三者の介入が不要)で、分散化している」
NFTを金融化することには、予測不能な市場の影響があったり、持ち手のリスクが高まるかもしれないという懸念もある。しかし、レビー氏が指摘する通り、テクノロジーの部分以外は、フローティはとりたてて過激なことをやっている訳でもないのだ。
「腕時計や絵画を質屋に持っていって、お金を借りることができる。それと非常に似た取引なんだ」と、レビー氏は説明した。
ブリッジという弱点
NFTの分野について、レビー氏が不確実だと考えている点は、あるブロックチェーンから別のブロックチェーンへと資産を「ブリッジ」する技術的課題だ。
NBA Top ShotやCryptoKitties同様、フローティもブロックチェーン「フロー(Flow)」を基盤としている。「比較的普通の人間である私としても、フローは近づきやすく、ユーザーフレンドリー。そして大手ブランドとも手を組んでいる」とレビー氏は、フローの魅力について語った。
しかし、使いやすさにはトレードオフも伴う。例えば、「分散化やセキュリティの一部を諦めること」だと、レビー氏は語る。
それは、他のブロックチェーンにつなげることで緩和できるかもしれないが、ローニン(Ronin)やワームホール(Wormhole)など、「ブリッジ(暗号資産をあるブロックチェーンから別のブロックチェーンに移動させるための機能)」への大規模ハッキングが最近では問題となっており、「クロスチェーン」接続の可能性に疑問が投げかけられている。
「単なる近接誤差(最近の出来事の印象が強く、それによって判断が偏る傾向)なのかもしれないが、ブリッジの問題を解決できなければ、(クロスチェーンの)未来とはならないかもしれない、と多くの人が言っている」と、レビー氏は語った。
そのような主張が正しければ、孤立化したチェーンは有用性を失い、長期的には統合していくだろうと、レビー私は考えている。「スピンオフや代替チェーンも登場するだろうが、時とともに、4つか5つのチェーンのグループが台頭してくるだろう」とレビー氏は予測した。
当然レビー氏は、フローも生き残るチェーンの1つになるだろうと考えている。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:マイケル・レビー氏(CoinDesk)
|原文:Michael Levy: How to Turn Your NFT Into a Loan