暗号資産企業、シンガポールからドバイに軒並み移転

暗号資産(仮想通貨)の取引サービス企業が、事業拠点をシンガポールからドバイに移転する動きが目立つようになっている。今回、暗号資産のトレーディングとベンチャーキャピタル事業を手がけるスリーアローズ・キャピタル(Three Arrows Capital=3AC)の本社移転が、明らかとなった。

3ACの共同創業者、スー・ズー(Su Zhu)氏は、「ドバイのデジタル資産業界のエネルギーは極めて高い。本社オフィスの移転を決定した」とCoinDeskの取材でコメント。関係者への取材によると、3ACは現在、外部の投資家から資金を募る投資ファンドの組成を計画している。

暗号資産の関連企業が拠点をシンガポールからアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに移転する背景には、シンガポールにおける規制環境の変化がある。

昨年秋、暗号資産取引所大手のバイナンス(Binance)は、シンガポール金融管理局が定める投資家警告リスト「Investor Alert List(IAL)」に追加された。同社はその後、ドバイでVASP(Virtual Asset Service Provider)として事業を運営する免許を取得し、シンガポールを回避する取り組みを進めてきた。

中央銀行と金融庁としての機能を持つMASは、複数の暗号資産企業をIALに追加。MASは、IALに属する企業を、「実際には規制を受けていないが、あたかも認可・規制対象になっていると誤認されている個人・団体」と定義している。

バイナンスはシンガポールでサービスを運営するための「Digital Payment Token License」を申請していたが、昨年12月に同申請を取り下げると発表。今年2月までに、同国内で運営していたサイト「Binance.sg」を停止するとしていた。

「シンガポールはある程度、暗号資産に対して好意的な取り決めを行ってきたが、その方針に変化が起きている」と、暗号資産領域のベンチャーキャピタル、マルチコイン・キャピタルを創業したカイル・サマニ(Kyle Samani)氏は述べている。

|編集:佐藤茂
|写真:ドバイの中心地(Shutterstock)
|原文:Three Arrows Capital to Move Headquarters to Dubai, Raise External Capital