アンカー(Anchor)は、テラ(Terra)ブロックチェーン上に構築されたDeFi(分散型金融)プロジェクトで、ユーザーに高利回りを提供していたが、この数日間で預り金の3分の1以上に相当する約50億ドルを失った。ブロックチェーン業界で最も人気の高いレンディングサービスの1つに対する「取り付け騒動」のような状況だ。
最大19.5%の利回りを提供していたアンカーの預り金は、アンカーのダッシュボードを見ると、6日の140億ドル(約1兆8000億円)から9日には87億ドル(約1兆1000億円)まで急減している。
アンカーの預り金は、ほとんどがテラブロックチェーンのステーブルコイン「terraUSD(UST)」。USTはCoinMarketCapの最新データによると、9日に0.9009ドルまで下落してドルペッグから逸脱した。6日もドルペッグを失っており、3日間で2回目。一部のトレーダーや投資家は信用危機と考えている。
「週末、テラのエコシステムでは、特にUSTのドルペッグまわりでかなり荒っぽいことが起きていた」とConsenSysの分散型金融(DeFi)エコノミスト、デビッド・シャトルワース(David Shuttleworth)氏はメールでコメントした。「これは、ある種の市場パニックを引き起こし、ユーザーがアンカーから撤退する原因となった」。
アルゴリズム型ステーブルコイン「UST」の危機
USTとUSTを中心にして構築された金融システムは、USTがわずか3日間で2度もドルペッグを失ったことで、プレッシャーにさらされている。USTはアルゴリズム型ステーブルコインとしては最大の時価総額を誇る。アルゴリズム型ステーブルコインは、米ドル連動した暗号資産の一種で、ドルやゴールドのような資産に裏付けられておらず、別の暗号資産、USTの場合は暗号資産テラ(LUNA)との交換を通じて供給をコントロールすることで価格を維持している。
多くの投資家は10%を超える利回りを提供するアンカーに群がり、アンカーは預り金としてUSTを必要としたため、USTの流通供給量はこの1年で20億ドルから一時は185億ドルまで急増した。だがアンカーの金利収入はユーザーへの利回り支払いをカバーできず、準備金で埋め合わせていたため、こうした高利回りは持続不可能と批判されていた。Mirror Trackerによると、アンカーの準備金「Anchor Yield Reserve」は早ければ1カ月で枯渇する勢いであり、過去30日で3億2300万ドルから1億7600万ドルに減少している。
カナダにあるカルガリー大学のライアン・クレメンツ(Ryan Clements)教授は、アルゴリズム型ステーブルコインは投資家が価格の安定性を信頼しなくなれば、ドルペッグは崩れ、デススパイラルに陥る脆弱性を本質的に内包していると指摘した。
こうした懸念に対応するために、テラブロックチェーンを開発したテラフォーム・ラボ(Terraform Labs)と投資家は、USTの裏付け資産を強化するためにLuna Foundation Guard(LFG)を設立した。LFGの準備金は、6日に15億ドル相当のビットコイン(BTC)を追加購入した後、約35億ドルとなっていた。
週末にUSTが0.98ドルまで下落した後、LFGはUSTのドルペッグを守るために、ビットコインとUSTで15億ドルを貸し出すと発表。CoinGeckoによると、アンカーのガバナンストークン「ANC」は24時間で35%下落し、2021年3月19日の史上最高値から87%下落している。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Anchor Dashboard
|原文:Investors Flee Terra’s Anchor as UST Stablecoin Repeatedly Loses $1 Peg