人気NFTコレクション「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」を手がけるYuga Labsは4月30日、メタバース「Otherside」内の仮想土地を販売し、約2億8500万ドル(約370億円)を売り上げた。だがその一方で、取引手数料が24時間で1億7600万ドル(約229億円)に達した。
この結果を受けて、Yuga LabsとApeCoin DAOの双方の理事会メンバーは、ApeCoinのイーサリアムからの移行について2つの提案を受けているという。
提案を行ったのは、アバランチ(Avalanche)とFlow(フロー)。この2つのブロックチェーンは、Yuga Labsが構築しているような大規模なNFTエコシステムのホスティングに適しているとアピールしたという。
Yuga Labsは4月30日、ツイッターで初めてApeCoin移行の可能性を示唆し、APE保有者で構成される自律分散型組織(DAO)にその可能性を検討することを促した。
This has been the largest NFT mint in history by several multiples, and yet the gas used during the mint shows that demand far exceeded anyone’s wildest expectations. The scale of this mint was so large that Etherscan crashed.
— Yuga Labs (@yugalabs) May 1, 2022
「これは、従来の数倍となる過去最大のNFT発行であり、ガス使用量は誰も予想できない規模となった。発行規模はEthescanがクラッシュするほどだった」
ApeCoin Foundationの関係者は、理事会はこれまで他のレイヤー1への移行を考えていなかったが、このツイートはDAOメンバーに移行の可能性についての議論を促し、議論は今も進行中と語った。
DAOの理事会は新しいチェーンを「積極的に検討」しているわけではないが、提案が投票を通過した場合、チェーン移行を含め、DAOの要望を実現する責任があることを認識しているという。
ApeCoinの理事会メンバーには、レディット(Reddit)の共同創業者のアレックス・オハニアン(Alex Ohanian)氏、アニモカブランズ(Animoca Brands)の会長ヤット・シウ(Yat Siu)氏、FTXのゲーム部門責任者のAmy Wu(エイミー・ウー)氏などがいる。
DAOは3月の設立以来、これまでに11の提案について投票を行った。我々はYuga Labsに、意思決定プロセスへの影響力について取材を試みているが、Yuga Labsはコメントを控えた。
アバランチとフローの場合
アバランチを使った場合、Yuga Labsのエコシステムは独自のサブネットを利用でき、トランザクションが他のアプリケーションの影響を受けることはない。
アバランチは3月、サブネットの活用に2億9000万ドルを投じているが、Yuga Labsとの協議はまだ予備段階に過ぎない。
Ava Labsの共同創業者兼最高執行責任者のケビン・セクニーキ(Kevin Sekniqi)氏は「我々はサブネットについて(ApeCoin DAO)と初期段階の協議を行っいる。プレゼンテーションの準備はもうできている」「我々は、あの規模のNFTエコシステムは、スケーラブルな環境にあるべきだと土地販売を見て確信している」と語った。
フローは、毎日数万件のトランザクションにのぼる「NBA Top Shot」で、高トランザクションを処理する能力を証明している。
フローを展開するダッパーラボ(Dapper Labs)も、Othersideの仮想土地販売と同じように、過去に人気ゲーム「CryptoKitties」のNFTでイーサリアムブロックチェーンを一時的に遅延させたことがあり、独自ブロックチェーン開発に乗り出した経緯がある。
「我々は(ApeCoin DAOの)理事会メンバーと複数回協議している。この件は投票が行われると考えている」とダッパーラボの最高ビジネス責任者ミク・ナーヤム(Mik Naayem)氏は述べた。
「CryptoKittiesは同様の課題に直面した。私はフローが(ApeCoinの)素晴らしいベースになると考えている。ただしまだイーサリアム上には多くの資産があり、考慮すべきことがある」
メリット/デメリット
Yuga Labsがエコシステムを独自チェーンに移行させることのメリットは明らかだ──取引コストの低下、より速いネットワーク速度、APEで取引手数料を支払うことができるなどだ。しかし、移行にまつわる潜在的な問題も明らかだ。例えば同社は10億ドル以上の資産をイーサリアムブロックチェーン上に持っている。
独自チェーンを使っても、多くの複雑な問題が続く可能性はある。人気のプレー・ツー・アーンNFTゲーム「アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)」はその象徴的な事例。最近ではゲーム専用のレイヤー2ソリューション「Ronin」から6億2500万ドルがハッキングされた。一方、アバランチのサブネットを基盤とするCrabadaは、Web3ゲームのヒット作となっている。
ダッパーラボのナーヤム氏が述べたように、チェーン移行に関する決定は、最終的にはApeCoin DAOのメンバーが決定する。DAOに対して、大きな影響力を持つがコントロールはできないとYuga Labsは述べている。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:ApeCoin Migration Draws Interest From Avalanche, Flow
※編集部より:本文を一部修正して、更新しました。