致命的な欠陥を抱えたテラブロックチェーンの崩壊と、無謀なまでの尊大さによってドー・クォン(Do Kwon)氏がもたらした損害と苦痛の全貌が、少しづつ明らかになり続けている。
テラネットワークのAnchorプロトコルに預け入れた「安定した」ステーブルコインに対する20%のリターンが、一般の人たちを惹きつけ、壊滅的な結果を招いたことが明白となった。
再建計画
被害者たちが、テラを再興し、手元に残ったほぼ無価値のトークンの価値を回復させる計画に興味を持つのも当然だ。クォン氏のブロックチェーンは、ステーブルコインのUSTと、USTとドルとのペッグをアルゴリズムによって維持することになっていた変動型暗号資産のLUNAを中心に築かれたものであった。
打ちのめされたLUNAコミュニティは現在、新しいチェーンに資産をフォークし、テラチームが抱える準備金の残りを、旧チェーンでいつどれくらいのトークン保有していたかに基づいて、「小口」トレーダーたちに再分配するための計画を議論している。
The “Terra 2” token airdrop proposal has been amended as per our community suggestions to include pre-attack aUST holders using the small holder model. 10% of the tokens will go to 99.7% of holders (but only 26.72% of aUST). 20% of the airdrop will still go to new holders. pic.twitter.com/McJ5gZ8YVC
— FatMan (@FatManTerra) 2022年5月18日
「FatMan:
『Terra 2』トークンのエアドロップ提案は、コミュニティからの提案によって修正され、小口保有者モデルを使って、攻撃前のaUST(ラップドAnchor UST)保有者も含むものになった。トークンの10%が、保有者の99.7%(ただしaUSTの26.72%)に分配される。エアドロップの20%は新規保有者たちに分配される。
この分配に関する議論は複雑なもので、まったくの時間の無駄だ。なぜならば、テラを再建するべきではないからだ。
テラは、最初に欠陥のあるネットワークを開発したチームによって再構築されるべきではない。さらに、テラは、クォン氏を信頼するという間違いを犯してしまった人に返還されるべき資金を使って再建されるべきではないのだ。
LUNAの保有者たちも同じ意見のようだ。クォン氏の最新の「再建計画」に対し、90%以上が反対票を投じたのだ。
再建すべきではない
テラをそのまま破滅させるべき理由は数多く存在する。
まず第一に、テラのステーブルコインの仕組みはすでに、破綻していることが証明されたからだ。クォン氏もかつて、そのことを自ら認めていた。事実、クォン氏の再構築計画の数少ない戦略的で技術的な要素の1つが、USTをLUNAから切り離すことである。
「USTだけがテラではない」とするクォン氏の宣言は、人を惑わせるバカげた発言で知られる彼としても、特にひどい発言だった。テラはUST以上の何物でもない。「分散型ドル」は、テラの主な目的であり、存在理由だったのだ。それ以外のものは、飾りに過ぎなかった。
バイナンスのCEO、チャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)氏も同じ意見のようで、フォークしてLUNAを再ローンチする提案を「甘い考え」と一蹴した。
Personal opinion. NFA.
— CZ 🔶 Binance (@cz_binance) 2022年5月14日
This won’t work.
– forking does not give the new fork any value. That’s wishful thinking.
– one cannot void all transactions after an old snapshot, both on-chain and off-chain (exchanges).
Where is all the BTC that was supposed to be used as reserves? https://t.co/9pvLOTlCYf
「ジャオ氏:
個人的見解で、金融に関するアドバイスではない。
これは上手くいかない。
・フォークすることによって新しいフォークに価値はもたされない。考えが甘い。
・オンチェーンでもオフチェーン(取引所)でも、古いスナップショット後のすべてのトランザクションを無効にすることはできない。
準備金として使われるはずだったBTCはどこに行ったんだ?
Lionel:
テラとクォン氏、コミュニティにとっての最終解決策
1)TERRA2へとハードフォーク
2)暴落前のすべての保有資産のスナップショットによって、保有者に新しいLUNA2トークンを提供する
3)LUNA2とUST2を伴うより良い新チェーンを作成する
4)旧USTペッグを払い戻すために資金をプールする
5)開発作業を行う
つまり、USTをテラから取り除けば、存在理由を持たず、価格復活や安定を期待できる理由もないようなチェーンが生まれる。クォン氏がテラコミュニティは最高だと言い張っているのは、「私にはアイディアがないから、コミュニティに聞いてみよう」とフレンドリーに言っているだけのことなのだ。
テラを復興させるべきではない2つ目の理由は、1つ目と関連するものだ。首脳陣への信頼がなくなり、存在理由がなければ、(計画にはロックアップも含まれているが)新しいトークンはローンチ直後から、大いに売られると推定できるだろう。
こうなると内部関係者たちは、根本的に無価値だと分かっているトークンを宣伝し、それを希望と絶望の混ざり合った混乱状態にいる個人投資家たちに売りつけることが可能だ。ここ数日で、あまり情報を持たない投機家たちが、無価値なLUNAトークンを買い続けているのを、私たちは目の当たりにしてきた。新しいチェーンでそのようなことをしないと考える理由はないのだ。
LUNA再興に反対する最後の理由は、クォン氏がブロックチェーン業界内でプラットフォームを持ち続けるべきではないからだ。彼は自分がいかに無能で有害であるかを証明したし、明らかに人々を騙すような行為をしていた証拠がますます浮上してきている。
それには、Basis Cashと呼ばれるアルゴリズム型ステーブルコインで失敗したことを公表していなかったこと、USTの安定性を大いに誇張する宣伝を行なったことなどが含まれる。
クォン氏とテラフォーム・ラボ(Terraform Labs)に対して、民事および刑事で一連の訴訟手続きが進められていると報道される中、この先、クォン氏の選択についてより多くが明らかになっていくだろう。訴訟はさらに、この件において正義に近いものをもたらす唯一のチャンスでもある。クォン氏やその協力者たちの資産を没収し、裏切られた人たちに返還するのだ。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Hasbi Sahin / Shutterstock.com
|原文:Let Terra Die