「クジラ」の考えが変わったようだ。特にイーサリアムブロックチェーンでは大口保有者たちは、ステーブルコインとして時価総額No.1のテザー(USDT)ではなく、No.2のUSDコイン(USDC)を選ぶようになっている。
クジラ(大口保有者)とは、機関投資家、取引所、裕福な個人などで、大量の暗号資産を動かし、価格に影響を与える。アナリストはクジラの動向を注意深く観察し、トレンドを発見して、大きな値動きを予測する。
ブロックチェーン分析会社CoinMetricsによると、イーサリアムブロックチェーンにおいて100万ドル(約1億2700万円)以上のUSDコインを保有するウォレットの数が、テザーを保有するウォレットの数を上回った。
Oandaのシニア・マーケットアナリスト、エドワード・モヤ(Edward Moya)氏は「現在の市場状況では、多くの人がUSDコインを安全で望ましいステーブルコインと考えている」と述べた。
UST崩壊の影響
180億ドルの時価総額を誇ったNo.3のステーブルコインTerraUSD(UST)が崩壊し、テザーのドルペッグが一時的に揺らいで以来、USDコインがシェアを伸ばしている。
CoinMetricsは、USTがドルペッグを失った5月9日以降のブロックチェーンデータを調査。USDコインの残高を100万ドル以上増やし、テザーの残高を100万ドル以上減らした147のイーサリアムブロックチェーンで上のウォレットアドレスを特定した。
さらにそのなかで、23のウォレットは、USDコインを1000万ドル以上増やし、テザーを1000万ドル以上減らしていた。こうしたアドレスの多くは、取引所、カストディサービス、または分散型金融(DeFi)プロジェクトという。
CoinMetricsのアナリスト、カイル・ウォーターズ(Kyle Waters)氏は「一般的に大口保有者だけが、USDTを換金し、USDCを手に入れて裁定取引を行うことができるという事実を反映しているだろう」とレポートに記した。「だがそれはまた、一部の大規模アカウントは、USDコインの毎月の保証報告書と準備金に100%裏付けられている確実さに目を向けて、保有資産をデリスキングしている可能性もある」。
DeFiで人気のUSDコイン
USDTの発行元であるテザー社(Tether)は、準備金に関する最新の保証報告書によると、第1四半期(1〜3月期)に準備金のコマーシャルペーパーを242億ドルから201億ドルに17%削減した。しかし、準備金のうち2億8600万ドルを満期が180日未満のアメリカ以外の国債で保有していたとも述べた。
USDTはUST崩壊以降、100億ドル(約1兆2700億円)が引き出され、ステーブルコインの全般的な安定性に対する投資家の信頼を揺るがした。USDTの流通供給量は10日間で830億ドルから730億ドルに減少、一方でUSDCのそれは480億ドルから530億ドルに増加した。
USTの価値がわずか数日でほぼゼロになるなか、USDTは一時、ドルペッグから逸脱。価格はすぐに1ドルまで回復したとはいえ、逸脱はUSDTを裏付ける資産についての不確実性を新たにした。
分散型金融(DeFi)取引のほとんどはイーサリアムブロックチェーンで行われ、USDCはDeFiで使用されるステーブルコインとして人気を集めてきた。例えば、最大の分散型ステーブルコインであるダイ(DAI)は、準備金としてUSDCを保有している。ダイは、60億ドル以上の時価総額を持ち、流通しているすべてのダイの時価総額をはるかに上回る暗号資産を保有することで、米ドルとの交換比率を1:1に保っている。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:CoinMetrics
|原文:Crypto Whales Ditched Tether for USDC After Stablecoin Panic