Web3技術者が次世代エンジニアに送ったアドバイス:「トレンドは無視してもいい。大事なのは…」

ソラナ・ブロックチェーン上でアプリケーション(dApps)の開発を行う開発者向けのイベント「Tokyo Hacker House」が5月25日に、東京・品川で始まった。5日間のイベントの初日は、実際に世界で活躍するdApps開発者が「日本でWeb3開発者になるには」をテーマに議論を行い、若い参加者の注目を集めた。

冒頭、「現状のWeb3ビジネスを、日本でくくる必要がない」と口火を切ったのは、レイヤー1ブロックチェーン「Aster Network」COOの石川駿氏だ。

(写真:東京・品川で開催されているSolana Tokyo Hacker Houseに登壇した石川駿氏)

「Web3はどこの国の人でも触れるし、どこの国でも開発できる。作っているモノが日本独特の何かに紐付いている場合を除いて、ジャパンという括りを気にする必要がないのでは?」

この意見に、ソラナのDEX(分散型取引所)「Orca」共同創業者の森優太郎氏も、「100%そうだと思う。日本のマーケットを無理に意識する必要はない」と同調。石川氏も続けて、「日本のマーケットは中途半端に大きかったり、盛り上がっていたりする。そこに向けて作ってしまうと、実はWeb3全体で見るとキメラだった、みたいな話になりかねない」という懸念も表明した。

セプテーニ・インキュベート取締役の斎藤彼野人氏も、「現状パブリックチェーンの領域では、Day1からグローバルを目指したほうがいい」という。日本市場については「今後のマス・アダプションを前提につくっていくサービスであれば日本であってもいいが、現状ではユーザー数がまだ少ない。世界展開をしないとマネタイズが難しいのでは」と語っていた。

日本のエンジニアが、世界で勝負するためには?

一方、開発者が「世界を目指す」のなら、どこにいようがチャンスは平等にあるということだ。最前線で戦うためには、どんな「修行」をすれば良いのか?たとえば、ソラナでスマート・コントラクトを書くためのプログラミング言語「Rust」を自在に操れる必要はあるのだろうか?

森氏は、「スマート・コントラクトが書けないエンジニアでも、Web3界隈で活躍することは可能」と指摘する。たとえばOrcaの開発でも、スマートコントラクトが必要なのは全体の2〜3割にすぎないからだ。

一方で、Rustを習得するなら、重要なのは「基礎力」だという。JavaScriptやTypeScriptを「使える」人でも、Rustはそう簡単に習得できない。カギを握るのは、コンピューターサイエンスの基礎を学んだかどうかだと、森氏は言う。

どうやって学ぶべきか?

最前線で活躍するエンジニアたちは、いったいどうやって真の実力を身に着けているのか?

「開発チームに入ったら、どうやって知識を学んで行くのか?」と問われた石川氏は「チームに入っても結局、独学が必要」と返答した。まだ新しく定番書籍などもない分野。さまざまなドキュメントや公開されているプログラムを参考にしながら、「違いは実際にやるか、やらないかしかない」という。

森氏は「最近プログラムを始めた人は、最新のWeb3トレンドを無視して、プログラミングの基本をマスターしたほうがキャリアとしては伸びる」と述べる。「すでに基本をマスターしている人でも、焦ってWeb3を始める必要はない。スマート・コントラクトなど仮想通貨の仕組みを深く勉強しつつ、自分の考えに近いコミュニティを探していくほうが良い」とアドバイスを送った。

|取材・テキスト・撮影:渡辺一樹
|編集:佐藤茂
|トップ画像:セプテーニ・インキュベート取締役の斎藤彼野人氏(一番左)、Aster Network・COOの石川駿氏(右から2人目)、「Orca」共同創業者の森優太郎氏(左から2人目)