Financial Timesは、ステーブルコインのテザー(USDT)を発行するテザー社(Tether)の準備金730億ドル(約9兆4000億円)の一部が「Capital Union」というバハマのあまり知られていない銀行に保管されているという記事を掲載した。
同行の資産は約10億ドルなので、テザー社の準備金のごく一部しか保管されていないようだ。振り返ると、テザー社は銀行を次々と変えており、最初は台湾に口座を開設したが、送金が遮断されると、モントリオールおよびプエルトリコに移している。
テザー社は、銀行取引の詳細を完全に開示することを拒んでいるが、ユーザーの要求に応じて、USDTを米ドルに変換できるため、そうしたことは、まったく問題ではないとしている。テザー社は「世界中の7、8行以上の銀行と強力な取引関係を維持している」というのが、開示の限界のようだ。実際、TerraUSD(UST)崩壊の影響を受け、テザー社は100億ドル(約1兆3000億円)のUSDTの払い戻しを処理した。
しかし、マーケットはそうは思わないだろう。USTの問題が表れ始めてから数週間、テザー社はUSDTのドルペッグを維持することに苦戦した。一方、サークル(Circle)のステーブルコイン、USDコイン(USDC)はそうした問題を抱えていない。実際、USDCは十分な準備金を背景に、ドルペッグを上回っている。
テザー社は、銀行取引や準備金の詳細をある程度開示すること(=現状の開示レベルに留めること)に、すでに1850万ドル(約24億円)を費やしている。ニューヨーク州司法長官との和解金だ。
おそらく同社は、ドルペッグの裏付け資産や銀行取引の詳細を完全に開示すれば、結果として生じるマーケットの混乱によって、1850万ドル以上のコストが発生すると考えたのだろう。確かに、危機の際にもUSDTの払い戻しは維持されている。だから、銀行取引の詳細を開示して、不必要な問題を生み出す必要はない…。
問題は、そうした考え方が維持できるかどうか。そしてこの先の弱気相場の中でもUSDTのドルペッグが維持されるかどうかだ。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
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|原文:First Mover Asia: Tether Is Quiet About Its Bankers. Will It Affect Its Peg?