暗号資産における量的引き締めに相当:米モルガン・スタンレー

暗号資産(仮想通貨)市場の弱さ、テラUSD(UST)の失敗、分散型金融(DeFi)のレバレッジの減少は、結果的に「暗号資産における量的引き締めに相当するもの」を引き起こしたと米モルガン・スタンレー6月7日、レポートで述べた。

米ドル連動型ステーブルコインのテラUSD(UST)の崩壊により、テザー(USDT)も一時的にドルペッグを失い、暗号資産市場の下落につながったという。

テザー(USDT)の時価総額は730億ドル(約9兆7000億円)、1日あたりの取引高が最も多く、取引所で売買されているビットコイン(BTC)の半分以上がテザーを使って取引されている。

投資家は記録的なペースでテザーの払い戻しを行っているとモルガン・スタンレーは述べた。先月だけで約106億ドル(約1兆4000億円)が払い戻されたが、他のステーブルコインの発行量は増えていない。

モルガン・スタンレーはこうした状況を「暗号資産における量的引き締めに相当し、ステーブルコインの時価総額は減少し、分散型取引所の流動性やレンディング・プラットフォームのレバレッジがさらに大きく減少している」と述べた。

テザーの約106億ドルの払い戻しのうち、59億ドルはトロン(TRON)ブロックチェーンが占め、イーサリアム(Ethereum)ブロックチェーンはかなり少ないという。暗号資産取引所バイナンス(Binance)は、テザーの最大の保有者で210億ドルを保有し、トロン上で発行されたテザーの49%を占めるとレポートは付け加えた。

レポートによると、バイナンス、FTX、ビットフィネックス(Bitfinex)がテザーを大量に払い戻した。分散型取引所(DEX)のカーブ(Curve)は、DeFiプラットフォームにおけるテザーの3分の1以上を保有しており、トレーダーはカーブでテザーを他のステーブルコインに交換していたという。

暗号資産市場から法定通貨を使った銀行システムへの「システム的な波及」リスクは限られているように思えると同行は述べた。だがテザーがドルペッグを大幅に下回った場合、暗号資産とリスク市場に大きなマイナスの影響を与えるだろう。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Morgan Stanley Sees Crypto Equivalent of Quantitative Tightening