アメリカの連邦小企業庁(Small Business Administration)によると、従業員が500人以下の小企業はアメリカの全企業の99.9%で、有給の従業員を抱える会社の99.7%を占めている。そこでこの記事では、ビットコイン(BTC)がいかにしてスモールビジネスに影響を与え、利鞘の拡大や資金の節約に貢献するかを検討していこう。
ビットコインには多くのユースケースがあり、何を利点と感じるかは人それぞれだ。米決済大手ブロックは先日、『Bitcoin: Knowledge and Perceptions(ビットコイン:知識と認識)』と題されたレポートを発表した。
このレポートでは、より高所得の個人は、ビットコインを投資というレンズを通して「利益を上げる可能性」として見る一方、より所得の低い個人は、支払いというレンズを通して「他の人たちに送金する簡単な方法」と見ている、と報告された。
そんな中、どちらの層でも同じくらいの重要性を持ち、2番目に位置付けられた用途は「モノやサービスの購入」である。
支払いというレンズを通して、スモールビジネスはより良い金融の未来を見ることができると、私は考えている。
コストの漸増と戦う
先日、地元のレストランで、オーナーとビットコインや決済について話をする機会があった。彼のレストランではかつて、取引の35〜40%が現金で行われていたが、今ではその割合は5%となっているそうだ。決済処理の手数料として、1年に10万ドル近くを支払っていると、彼は教えてくれた。
一方、食材の値段は2桁台の値上がりをみせている。彼に残されたオプションは、提供する料理の値段を上げ、客が減るリスクを冒すか、質の低い食材を仕入れて、評判を落とすリスクを冒すか。あるいは、利鞘を復活させる方法を見つけるかだ。
消費者がクレジットカードをますます利用するに伴って、決済事業者への手数料も同様に増加している。一般的な決済手数料は3.25%。つまり、収入が100万ドルの企業にとっては、3万2500ドルが消える計算だ。
金融関連の教育を手がけるコーポレート・ファイナンス・インスティテュート(Corporate Finance Institute)によると、アメリカの平均的スモールビジネスの利鞘が10%であること、小企業のわずか40%しか黒字ではないことを考えると、決済手数料の負担は甚大だ。
ここで、1つの解決策がある。スモールビジネスはビットコインによる支払いを受け入れて、法定通貨での支払いに割増料金を課すことができるかもしれない。そうすれば、ビットコインの普及を促しつつ、利鞘を守ることができるだろう。
ビットコインに稼がせる
さらにビットコインの保有によって、小規模事業主は、将来のための貯蓄もより良くできるようになる。ビットコインでの支払いを受け入れる企業は日々、ドル・コスト平均法を実施することになるのだ。ビットコインの年平均成長率は変動するが、低調な時があったにも関わらず、48%となっている。
しかし、メリットはさらにある。ビットコインでの支払いを処理するコストは、クレジットカード支払いの場合より少ないので、「より優良な」資産を保有できるだけでなく、支払いの受け入れのコストも抑えられるのだ。
ビットコイン決済インフラを手がけるオープンノード(OpenNode)を使えば、ビットコインブロックチェーン上でも、(ビットコイン決済のスケーリングを目的に作られた)ライトニング・ネットワーク上でも支払いが可能。手数料は取引の1%だ。
さらに、ストライプ(Stripe)とオープンノードは先日、パートナーシップを発表。これによって企業は、クレジットカードでの支払いを直接ビットコインに変えることができるようになり、ドル・コスト平均法の側面が強化される。
さらに突き進めるならば、事業主はBTCPay Severのような無料のオープンソースソフトウェアを使って、ビットコインによる支払いを受け入れる独立した方法を確立することもできる。
これには、自分でビットコインノードを実行する必要すらないのだ。ボルテージ(Voltage)のような会社に、アウトソーシングが可能だからである。オープンノードはさらに、ライトニング・ネットワーク上での流動性を管理するためのプラグ・アンド・プレイオプションも提供している。
BTCPay Serverやボルテージなどのセットアップには一段と手間がかかるが、驚くほど効率的で、低コストだ。ライトニング・ネットワークを小規模事業主が活用するところに、大きなビジネスチャンスがあると、私はみている。
ライトニングを通じての流動性へのアクセスは、フロー(Flow)、マグマ(Magma)、ゼロフィールーティング(Zero-Fee-Routing)などのサービスによって、この先劇的に向上するだろう。
税金
税金はどうだろう?アメリカでは現在、ビットコインでの支払いをした消費者への課税において、キャピタル・ゲイン、あるいはロスが適用される。しかし、支払いに使用するツールが、ドルとビットコイン切り替えの機能も提供するので、このような潜在的問題は解消される。
この点で、最も人気の高いオプションはストライク(Strike)だ。ストライクを使えば、課税対象になるは心配なく、従来の銀行に接続し、ライトニング・ネットワークのビットコインオンチェーンインボイスで支払いが可能だ。
ビットコイン決済に伴う課税対象となる事象は、まもなくなくなると私は考えている。共和党のシンシア・ルミス上院議員(ワイオミング州)が提案した「Responsible Financial Innovation Act(責任ある金融イノベーション法)」は、600ドルまでの支払いへの課税免除をもたらすものだ。
データ企業のエクスペリアンによれば、スモールビジネスの取引の平均は84ドルであるため、この法律が可決されれば、ほとんどすべてのスモールビジネスの取引が課税対象から外れることになる。
年間で1万5000〜3万ドルを節約し、さらに成長するにつれてその節約分が拡大することを望まないスモールビジネスなどあるだろうか?さらにその資金が複利をもたらし、購買力を失うのではなく、拡大させていくとしたら?そうなれば、どんな決断やイノベーションが可能になるだろうか?どれほどの雇用を生み出せるだろうか?
スモールビジネスが現在のエコノミーから受ける苦痛を和らげられる唯一の方法がビットコインだと、私は信じている。さらに、起業家精神にあふれた新たな成長の原動力をもたらす手段ともなるのだ。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:How Bitcoin Could Power a New Wave of Small Business Innovation