5月の暗号資産(仮想通貨)マーケットは、全てのセクターにおいて下落幅が17%を超える大幅下落の月となった。1つのきっかけとなったのは、テラUSD(UST)だった。
アルゴリズム型ステーブルコインであるテラUSDは、仮想通貨LUNAを裁定取引することで供給量を調節し、1UST=1USDに価格を保つようにアルゴリズムが設計されていた。
5月11日、そのペッグが突如外れ、LUNAの循環供給量が22,000%も増加、その時価総額は99%下落し、5月12日までにLUNAの価値は0.1ドル以下まで急落した。
ドルペッグが崩壊する以前のテラUSDとLUNAは、仮想通貨の時価総額ランキングにおいても上位10位以内の常連だったため、その暴落がマーケット全体に及ぼす影響は大きく、全セクターでの大幅下落へと発展した。
特にレイヤー1、メタバース、ミームコインのセクターの下落幅はそれぞれ43%、42%、39%とその他セクターと比べても総崩れとなった。一方で、ビットコイン(BTC)とプライバシーコインは、それぞれ17%、19%の下落にとどまった。
直近1年間のパフォーマンスを見てみよう。
メタバースのセクターは、ボラティリティが高まり目先苦しい展開ではあるものの、依然として前年比+395%のパフォーマンスを見せており、マーケット全体に対して大きくアウトパフォームしている。
これらセクターは、ディセントラランド(MANA)、サンドボックス(SAND)、アクシー・インフィニティ(AXS)、エイプコイン(APE)、そしてステップン(GMT)を含む。
ビットコインとイーサリアムに関しては、1カ月間の騰落率がそれぞれ-17%と-31%を記録し、リスク調整後リターンとしてのシャープレシオはビットコインが-4.2と、イーサリアムの-6.1をアウトパフォームした。
復調するビットコインドミナンス
5月に入り、ビットコインのドミナンス(仮想通貨マーケット全体に対する時価総額の割合)は39%から43%まで上昇した。
過去を振り返ると、今回のケースと同様に相場全体の下落局面において、ビットコインのドミナンスが上昇することが傾向として確認できる。
千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社し、2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。主な著作に『仮想通貨とWeb3.0革命』(2022年 日本経済新聞出版社)。
※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。
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