数兆ドル規模の伝統的資産をトークン化し、DeFiへ:JPモルガン【Consensus 2022】

米銀大手のJPモルガン・チェースは、分散型金融(DeFi)プロトコルが暗号資産以外の資産から利回りを得ることができる方法を見出したようだ。

テキサス州オースティンで開催された「Consensus 2022」で同行のグローバル決済ネットワーク子会社、Onyx Digital Assetsの責任者タイロン・ロバン(Tyrone Lobban)氏は、同行の機関投資家向けDeFiのプランに触れ、トークン化資産の可能性を強調した。

「いずれ、米国債やマネーマーケットファンド(MMF)などをトークン化し、DeFiの担保として使用する可能性があると考えている。最終的な目標は、それら数兆ドルもの資産をDeFiに取り込むことで、そうなれば我々は、取引、借入・貸付のための新しいメカニズムであるDeFiを機関投資家の資産のスケールで利用できる」

機関投資家向けDeFiはつまり、暗号資産のパーミッションレスな融資担保に顧客の本人確認(KYC)規制を課すことを意味する。すでにAave Arcのような革新的なサービスが手がけており、最近発表されたタイの大手銀行サイアム商業銀行とDeFiプロトコル、コンパウンド(Compound)の機関投資家向けサービス、Compound Treasuryが連携したサービスも始まっている。

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伝統的な資産のトークン化を取り入れたJPモルガンのプランは、より大きな規模となる。Onyx Digital Assetsは、銀行グレードのDeFiを実現するために2つの補完的なパーツを考えているとロバン氏は述べた。

1つ目は、同行のブロックチェーンベースの担保決済システム。決済には、同行のJPMコインを使用し、すでに決済高は3500億ドルにのぼるという。

2つ目は、最近発表された「プロジェクト・ガーディアン(Project Guardian)」。シンガポール金融管理局(MAS)が主導し、JPモルガン、DBS銀行、マーケットノード(Marketnode)などが参加、トークン化された債券と預金で構成されたパーミッションド流動性プールを使い、機関投資家向けDeFiに取り組んでいる。

これらのDeFiへの取り組みは、パブリックブロックチェーンを使い、Aave Arcやファイヤーブロックス(Fireblocks)などの取り組みと多くの点で類似したパーミッション構造を持つ。1つの違いは、プロジェクト・ガーディアンでの顧客情報の検証は、DeFiプラットフォームや暗号資産ネイティブのカストディ会社ではなく、参加している大手金融機関が行っているとロバン氏は指摘した。

検証可能な信用情報

もう1つの違いは、W3Cの検証可能なクレデンシャル(信用情報)のような、デジタルIDを使ったパーミッションドDeFiへの新しいアプローチだ。

「我々は、IDを特定し証明する方法として、検証可能なクレデンシャルを使いたいと考えている。これは例えば、現行のAaveの方法とは異なる。検証可能なクレデンシャルは、アドレスのホワイトリストを必ずしも維持することなく、流動性プールへのアクセスを提供するために必要な判断基準を導入することができるため、興味深い。チェーン上に保持されないため、この種の情報をブロックチェーンに書き込んだり、ガス代(取引手数料)を支払うなどのオーバーヘッドは発生しない」(ロバン氏)

JPモルガンは、パートナーとなるDeFiプラットフォームを決めていないものの、複数のオファーは認識しているという。「高いTVL(Total Value Locked)を持つ、よく知られたところになるでしょう。だがまだ、どこかは決まっていない」。

ロバン氏によると、過去2年半、JPモルガンはブロックチェーンとデジタル資産の観点から、デジタルIDを密かに調査してきたという。

「KYCベースのアクセスを可能にするIDレイヤーをDeFiの前に置くことができれば、DeFiプロトコルは、必ずしも現在行っていることに多くの変更を加えることなく、そのまま機関投資家をサポートできるはずだ。個別にパーミッションド・プールを立ち上げ、既存のプロトコルに手を加えるのか? それとも独創的な手段で行うかだ」とロバン氏は述べた。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:JPMorgan Wants to Bring Trillions of Dollars of Tokenized Assets to DeFi