「歴史は繰り返すことはない。しかし、韻を踏むことならよくある」と、いくつもの名言を残したマーク・トウェインは言った。
この言葉は、テキサス州オースティンで先週開かれた米CoinDeskのイベント「コンセンサス 2022(Consensus 2022)」を表現するのにぴったりのようだ。今年のコンセンサスは、新型コロナウイルスのパンデミックによる2年連続でのオンライン開催を経て、2019年以来初めてとなる対面イベントとなった。
2018年との類似
私が今年のコンセンサスと韻を踏んでいると感じるのは、2018年のもので、ニューヨークのヒルトン・ホテルで開催された。1万7000人強が集まった今回のコンセンサスまでは、参加者9000人近くと、コンセンサス 2018が、CoinDesk主催の最大の対面イベントだったのだ。
あふれかえる参加者に加え、コンセンサス 2018では、かなり派手でこれ見よがしな富の誇示が特徴的だった。ある起業家は、会場前に2台のランボルギーニを駐車。そのために彼は、ニューヨーク市に莫大な料金を払った。
船上で派手なパーティーも開かれ、ニューヨーク・ポスト紙は、「クリプトブロ(独善的で横柄な暗号資産支持者の男性)」がニューヨークを乗っ取っていると、否定的な記事を掲載した。
コンセンサス 2018のタイミングも、とても意義のあるものだった。「暗号資産の冬」と呼ばれる時期が始まってすでに数カ月経った頃に開催されたのだ。新規コイン公開(ICO)バブルは派手に崩壊し、個人投資家の多くが無一文となった。パーティーは盛り上がっていたが、業界にあふれていたあぶく銭は枯渇しつつあるという、漠然とした認識があった。
そこがもちろん、コンセンサス 2022と韻を踏んでいる点だ。今年のイベントは、テラのステーブルコインUSTの暴落を含め、暗号資産市場と伝統的市場の双方での大幅な急落の後に開催された。人々はすでに、当たり前のように「冬」という言葉を使っている。
それでも、2018年同様、今年のコンセンサスを満たすエネルギーは熱狂的なものだった。
後援や参加のために使われたマーケティング予算が、暴落が始まる前にすでに合意済みだったからかもしれない。あるいは、暗号資産に対する止められない関心のためかもしれない。分散型金融(DeFi)や自律分散型組織(DAO)、ノン・ファンジブル・トークン(NFT)などの新しいコンセプトも加わり、2018年よりもより幅広い参加者を惹きつけていたのだ。
冬を歓迎
どちらにしても、このような低迷期を何度も経験している様々な古株たちが今年のコンセンサスで見せた、楽観的で、この低迷を歓迎しているとでも言える雰囲気が、最も印象的だった。
そのような見解を最もよく表していたのは、モーガン・クリーク・キャピタル・マネージメント(Morgan Creek Capital Management)の創業者兼最高投資責任者マーク・ユスコ(Mark Yusko)氏のステージ上での発言だろう。彼は「冬はベンチャー投資に最適の時期だ」と言ったのだ。
ユスコ氏によれば、低調な時期こそ、意義のあるプロジェクトで重要な開発作業が行われ、評価額はより妥当なのだ。メインストリームのメディアが関心を失い、投機や盛り上がりから解放された中で、エンジニアや起業家たちは集中して開発作業に没頭できる。
それこそが、前回の暗号資産の冬に起こったことだった。DeFiやNFT、ビットコインのライトニング・ネットワークやイーサリアムで使われるZKロールアップなど、レイヤー2ブロックチェーンのスケーリングシステムにおいて、大きな進展があった。
多くの人が、2019年のコンセンサスが最も楽しかったと、語ってくれた。参加者の数は5000人近くまで減ったが、会話の質は高く、プロジェクト開発や、困難だが大切な開発の作業が伴っていた。
2023年のコンセンサスも、同じようなパターンになるかは分からない。今年より大規模になるだろうと、私たちは期待している。しかし、究極的には上昇傾向にある暗号資産の盛衰はしっかりと定着したもので、コンセンサスでの体験も、そのことを反映している。
500人ほどが参加した1番最初に開かれた2015年のコンセンサスは、暗号資産の冬の初期バージョンの最中に開かれた。この頃、暗号資産取引所マウントゴックスのハッキング事件などにより、価格が低迷していたのだ。
その後、2016年のコンセンサスでは、ブロックサイズ論争が最高潮に達したとして有名となり、2017年のものは、2018年にバブル崩壊することになるICOをめぐる興奮の高まりが象徴的だった。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:CoinDesk
|原文:Consensus Compared: Why 2022 Feels Different