直近の暗号資産市場の下落は、投資家の不安をいっそう煽り、コインベース(Coinbase)などの業界大手ではレイオフが続いている。さらに今、最も人気のステーブルコインを発行しているテザー社にまたも問題が浮上しつつある。
CoinGeckoによると、米ドル連動型ステーブルコインのテザー(USDT)は過去48時間で約16億ドル(約2150億ドル)が払い戻され、流通供給量は昨年10月以来となる708億ドルまで低下した。
テザー(USDT)は5月に崩壊したテラ(Terra)ブロックチェーンのアルゴリズム連動型ステーブルコインのテラUSD(UST)とは財務構造が異なっている。だがUSDTについては以前から、裏付け資産と、大きな危機の際に払い戻しが履行されるかどうか疑問視されている。
「暗号資産への信頼感は依然として低く、一部のトレーダーは(USDTを発行する)テザー社がテラのUSTと似た運命をたどることを懸念している」とオアンダ(Oanda)のエドワード・モヤ氏は述べた。
暗号資産市場が下落し、複数の業界大手が財政危機に直面しているため、恐怖が市場を覆っている。かつて100億ドル以上の顧客資産を保有していた暗号資産レンディング大手セルシウス(Celsius)は、取り付け騒ぎを恐れて、顧客資金の引き出しと取引を停止し、負債を立て直すために弁護士を雇い入れた。暗号資産ヘッジファンド大手のThree Arrows Capitalも危機にさらされている。
テザー社の最高技術責任者パオロ・アルディーノ(Paolo Ardoino)氏は、同社は損失を出さずにセルシウスへの投資を清算し、Three Arrows Capitalには投資していないと述べた。
ステーブルコインのテザー(USDT)を裏付ける準備金については、以前から市場の懸念となっている。テザー社は保有するコマーシャルペーパーとデジタル資産投資についての詳細を明らかにしていない。テザー社のウェブサイトによると、準備金は約710億ドルにのぼる。
5月に当時、ステーブルコインとして3番目の規模を誇っていたテラUSD(UST)がゼロ近くまで暴落し、ステーブルコインの安定性に対する投資家の信頼が揺るがされたことで、テザー(USDT)は100億ドル(約1.8兆円)を失った。
テザーから流出した資金の一部は、テザーに次ぐ2番目の規模を持つ米サークルのUSDコイン(USDC)に移動したと当時モヤ氏は述べていた。USDCはより安全な選択肢と受け止められている。
高止まりしているインフレ率と景気後退懸念が金融市場を圧迫し、暗号資産市場の時価総額は2021年1月以来、初めて1兆ドルを下回った。
下落の中で、トロン(Tron)ブロックチェーンの7億ドル規模の時価総額を誇るステーブルコインのUSDDは一時ドルペッグを失い、トロン創設者のジャスティン・サン(Justin Sun)氏が安定性を守るために20億ドルの準備金を投入すると公言したにもかかわらず、まだ回復していない。
テザー(USDT)はドルペッグを概ね維持しているものの、1ドルをやや下回って取引されており、売り圧力が価格を押し下げているようだ。当記事執筆時点では、99.8セントとなっていた(日本時間16日12時30分頃には、99.9セント)。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:CoinMarketCap
|原文:Tether Sees New Wave of Redemptions as Fear of Market Contagion Spreads