暗号資産は冬だけど、NFT業界は夏!? 日本企業がチャンスを掴む方法とは?【イベントレポート】

NIKEやGUCCI、ルイ・ヴィトンなど誰もが知る世界的ブランドの参入、BAYCなど新進気鋭のプロジェクトの台頭と、話題に事欠かないNFT業界。暗号資産(仮想通貨)の価格が下落する中でも、6月下旬にニューヨークで開催されたNFTイベントでは、多くの参加者がNFTの世界的な広がりを確信した。

アニメ、ゲームなどヒットコンテンツを数多く持つ日本企業は、このチャンスにどう動くべきなのか?いち早く取り組みを始めたキーマンたちが経験を共有し、これからの展望を話し合うオンラインイベント「NFTビジネスの激流を乗りこなす! 国内から世界へ〜挑戦の最前線」が6月17日に開催された。

NFTプロジェクトを相次いで送り出すテレビ朝日IoTv局IoTvセンター先端コンテンツビジネス班の井木康文氏、メタバース用アバターNFTをきゃりーぱみゅぱみゅとコラボさせ、米最大の音楽フェスに送り込むことに成功したBeyondConcept CEOのmekezzo氏、HashKey DX・BC事業部長の李英臣氏が登壇し、目まぐるしく変わるNFTの最新トレンドや、国内企業にとっての注意点を話し合った。

イベント協賛のHashKey DXは香港を拠点とするブロックチェーン総合企業HashKeyグループの一員。東京に拠点を持ち、日本国内企業向けにNFTやWeb3、メタバースなど、ブロックチェーンに特化したコンサルティング・サービスを展開している。

イベント主催はbtokyo membersで、coindeskJAPANがメディアパートナー。N.Avenueの神本侑季社長がモデレーターを務めた。

「日本発の世界トップレベルNFT」に期待

イベントの冒頭、HashKey DXの李氏が紹介したのが、このカオスマップだ。

李氏は「1年前に作ったものと比べると分野も増え、新規プレイヤーが続々と参入している。NFT業界の成長速度、拡大の速さに驚いた」と振り返る。

李氏は、NFT業界の現状について、海外市場はオープンに展開されているが、国内市場は比較的クローズド。国内では参入しているプレイヤーも時代を作るイノベーター企業が先陣を切っている状況だ、と説明する。

では、日本企業の勝機は、どこにあるのか?李氏の現状分析はこうだ。

「日本には優れたコンテンツや日本文化などの『ブランド力』はあるが、国内市場は暗号資産やWeb3に慣れておらず、グローバル市場での戦略もまだ見えてきていない。一方、海外は暗号資産取引が普及し、技術進化や新プロジェクトなどイノベーションが活発。しかし、市場の高まりのわりにプロダクトの品質が追いついていない」

つまり、国内企業にも十分チャンスがある、という見解だ。李氏は「日本発の世界トップレベルNFTも生まれると期待している」と述べた。

「激流に飲み込まれないために……」矢継ぎ早に展開するテレ朝

一方で、昨年末から矢継ぎ早に新規プロジェクトを打ち出しているのが、テレビ朝日だ。井木氏によると同社では海外NFT市場の盛り上がりを受けて2021年1月頃から各セクションでの情報収集を開始。昨年4月以降、プラットフォーマーや技術会社、業界団体、弁護士、会計事務所、IPホルダーなど約60社以上と情報交換をして、2021年12月に第1弾のNFT販売にこぎつけたという。

「コンテンツの制作力、発信力、IPホルダーとのネットワーク」に強みがあるテレビ局。そのパワーを活かせる「NFT」とは何なのかを「いま、模索している」と井木氏は語る。

第1弾は『コンバトラーV』など懐かしの東映アニメのイラストを、LINEブロックチェーンでコレクティブルNFTにしたもの。続いて、年末特番『もしアニ〜もしも芸能人がアニメを作ったら〜』で制作されたショート動画をNFT化し、オリジナルアニメ『リーマンズクラブ』のデジタル原画NFTも販売した。

これらはマンガ・アニメのNFTに特化したマーケットプレイス「FanTop」上で売り出した。さらに世界最大のNFTマーケット「OpenSea」にも進出。『お願いランキング』のNFT挑戦企画では、オークション形式で販売した人気漫画家・玉越博幸氏のNFTが0.5ETH(当時約20万円)で落札されたという。

息継ぐ間もない展開だ。井木氏は「NFTはテレビ局のビジネスと相性がよく、社内の理解が素早く得られた」と述懐。「激流に飲まれないためには、速く泳ぐしかない」と力を込めた。

李氏から「今後、どんなNFTを展開していくのか?」と問われると、井木氏は「番組・イベントとの連携など、テレビ局ならではの展開をしたいが、今はまだ答えが見えているわけではない。NFTが持っている色々な可能性を試していきたい」と語った。

独自プロジェクト「メタアニ」が成功した理由とは?

BeyondConceptが展開しているNFTプロジェクト「Metaaniメタアニ」は、

メタバースでアバターとして使えるNFT。その大きな特徴の一つがNFT保持者に「商用利用権」が与えられることだ。これは海外の超人気プロジェクト「BAYC」と共通する手法で、ファンを引きつける理由のひとつとなっている。

mekezzo氏は「メタアニのホルダーには、権利を使ってアパレル・グッズを販売し、お小遣い稼ぎをしている人もいる。ゲームへの利用など、ライセンスを公開することで新しい展開が生まれている」と語る。

「メタバースでのNFT活用がトレンド」というmekezzo氏。同社では、NFT作品を展示する独自のメタバースも提供。保有者は国内が中心だったが、VTuberのキズナアイやきゃりーぱみゅぱみゅとのコラボに成功したことで注目され、海外ユーザーも増えてきているという。

mekezzo氏は、海外展開を見据えるなら、グローバルでのトレンドを追いかけること、英語ネイティブで情報展開・コミュニティ醸成を図ることが重要だと語る。クリエイターは日本国内にいる場合でも、Discordでのコミュニティ運営・モデレーターを担当するのは海外在住のNFTフリーク、というケースが成功しているケースを良く目にするそうだ。

コミュニティ運営は、何もユーザーとの間だけで必要なのではない。mekezzo氏は「(プロジェクトを成功させるには)他のNFTプロジェクトとの『横のつながり』も重要。けっこうウェットな関係性もあり、『あの人のやっているプロジェクトなら信頼できる』といった形で、信頼して購入してくれるケースも多々ある」と語る。

こうした発言を受けて、井木氏から「キズナアイやきゃりーぱみゅぱみゅとのコラボを成功させられた秘訣は?」という質問が。

mekezzo氏は「メタアニは総額1.3〜1.5億円ぐらい売り上げているプロジェクト。キズナアイさんとのコラボは5分で売り切れ、うん千万円ぐらいの売上が立った。1年前くらいはIPホルダー側も『NFTで自分のIPが、毀損されないか』を懸念していたので、そのあたりのケアが必要だった」と振り返ったうえで、「最大のポイントは、メタアニの特性がコラボ相手の特性と合致しているかどうかだった。先方にメタアニのアバターを気に入ってもらえたことが大きかったと思う」と返答していた。

コラボを実現できるかどうかは、NFTそれ自体の持つパワーだけでなく、NFTの魅力をきちんと説明できる説得力、そしてコラボ相手と自社コンテンツとの相性など、さまざまな要素が絡み合っているようだ。

暗号資産の価格は「冬の時代」の様相だが、国内のNFT人気は根強い模様。mekezzo氏の耳には「逆に、安くなったから買い時」「欲しかったあのプロジェクトを買える」といった声も聞こえてくるそうだ。新規参入者も増えてきており、「NFT市場自体は冬ではなく、夏かもしれない」とmekezzo氏は語る。

李氏は「投機目的だけの人は逃げたかもしれないが、NFTそのものに価値を見出している人は所有を続けている。取引量自体もそこまで下がっていない」と見解を述べていた。

NFTの未来とは?その価値は何なのか?

世界中で盛り上がりを見せているNFTだが、まだ日常レベルまで広がっているとは言えず、皆が持っているイメージも千差万別なのが実際のところ。そうなってしまう理由の一つは、NFTの持つ多様性・可能性の幅が著しく広いというところにある。李氏は「価格高騰や市場拡大の”裏”にあるNFTの価値。それが何なのかを理解することが、とても重要だ」と話す。

では、NFTの価値とは? 李氏はそれを「使用価値」「コレクション価値」「生産価値」「配当価値」の4つに分類する。

使用価値とはたとえば、NFTを買えばゲームやコミュニティに参加できる、NFTに付いている商用利用権が使える、SNSやメタバースでアバターとして使える、といったもの。ほかに収集欲を満たす「コレクション価値」、Play To Earn系ゲームなどのトークンを生み出す「生産価値」、Airdropで新たなトークンやコインを手に入れられる「配当価値」がある。

李氏は「単に海外で流行ったプロジェクトを模倣するだけでは、長続きしない。プロジェクトを作る側としては、自分が達成したいビジョンを思い描いたうえで、NFTにどんな価値を付け加えるかを考えるべきだ」と警鐘を鳴らす。

一方で、NFTに付け加えられる「価値」には、さまざまな制約もある。たとえば日本国内でサービス展開をするには、国内法に則ったものにする必要があるからだ。

李氏は、NFTや暗号資産をめぐる日本の状況について、「確かに現状では海外よりも法規制が厳しい。しかし、国が『新しい資本主義』を提唱しており、将来的には変化すると見ている。いま、Web3はめちゃくちゃ熱い。品質がいいサービスがでてきたら、参入する人もどんどん増えてくるだろう。これまで暗号資産ユーザーではなかった人が、STEPNをプレイし始めるといった流れも出てきている。暗号資産やWeb3が日常生活に入り込んでいくと期待している」と述べた。

この論点について、mekezzo氏は「海外ではNFTとFTを絡めたエコシステムを作るプロジェクトがスタンダードになっている。しかし、国内の法制度では同じ設計は難しい。(暗号資産などのFTを絡めない)NFTだけで市場は成り立つのか?」と問いかけた。

この質問に対し、李氏は「確かに日本国内ではFTの上場などは難しい。日本の運営会社でも、サービスは海外展開、海外で上場というパターンを試しているところもあると思う。ただ、NFT単体でも市場は成り立つと考えている。そのためにはNFTの特性を活用し、そのNFT自体の価値を高めていくことが重要だ」と応答。mekezzo氏も「投資目的だけでなく、ファンがNFTを所有していることそれ自体に価値を見出してくれる環境が生まれれば、もっとNFT全体の可能性が広がっていくと思う」と期待していた。


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文・編集 CoinDesk Japan編集部広告制作チーム
画像 btokyomembers/株式会社HashKey DX /株式会社テレビ朝日/株式会社BeyondConcept