内閣府令が早ければ今秋にも改正され、日本国内の信託銀行による暗号資産(仮想通貨)の管理が可能になる。
金融庁の発表によると、今回の改正案は今後1カ月程度のパブリックコメント期間を経て、今年の秋頃に施行される見通しだ。
国内において、ビットコイン(BTC)やイーサ(ETH)などの暗号資産のカストディ業務は、信託会社のみが対応でき、信託銀行による管理は禁止されてきた。府令の改正後、信託銀行はそれぞれが個別の手続きを行い、管理体制の確認を当局が行った上で、暗号資産のカストディ業務が可能となる。
ビットコインなどの仮想通貨や、法定通貨に連動するステーブルコイン、債券や不動産に紐づくセキュリティトークン(ST)を含むデジタル資産の動向は、世界的に変化が激しく、日本においても規制面で機動的な対応が求められている。
6月には、ステーブルコインを規制する改正資金決済法が成立した。銀行や資金移動業者、信託会社は、日本円に連動するステーブルコインを発行することが可能になる。
国内の信託銀行はデジタル資産を管理する上でのリスクを十分に対応できると判断され、今回の府令改正に至った。例えば、三菱UFJ信託銀行は、ブロックチェーンを基盤技術にするデジタル資産を発行・取引できるプラットフォーム「Progmat(プログマ)」と、それに付随するウォレットの開発を進めてきた。
Progmatを利用することで、企業はデジタル証券(ST)を発行し、日本円に連動するステーブルコインによる決済を行うことができるようになる。株券に付随する優待券や、チケット、会員証がNFT(非代替性トークン)として発行されれば、Progmatのウォレットで保有することが可能となる。
北米市場の動向
北米では既に、バンク・オブ・ニューヨーク・メロンなどの大手信託銀行が仮想通貨のカストディ業務を行っている。
ヘッジファンドや年金基金、一部の事業会社は、徐々に仮想通貨市場に参入してきている。しかし、米証券取引委員会(SEC)は依然、一定の暗号資産規制を敷いている。
例えば、ビットコインとイーサの先物価格に連動するETF(上場投資信託)は、金融規制当局の承認を経て、米国の証券取引所で取引されているが、SECは仮想通貨の現物に連動するETFの上場を認めていない。
米国で仮想通貨の資産運用を手がけるグレイスケール・インベストメンツは、同社が運用する適格投資家向けのビットコインファンドを、現物ベースのETFに変更する申請を行っていたが、SECは29日、この申請を却下。SECはこれまでに、ビットコイン現物ETFの上場を計画した他の複数の申請を却下してきた。
米ドルに連動するステーブルコインにおいては、ノンバンクのテザー社が発行するUSDTと、同じくノンバンクであるサークル社が発行するUSDCの2つが最も大きい。両ステーブルコイン共に、米ドルや米国債、コマーシャルペーパーなどで構成される資産バスケットに紐づけられ、米ドルに連動するよう設計されている。
海外の仮想通貨の取引市場では、この2つのステーブルコインが広く利用されている。
|編集:佐藤茂
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