Polygonのハッカソン:日本の受賞者のアイディアとビジョン

東京・原宿でPolygonが主催した開発者向けイベント「Tokyo Hacker House」が7月1日〜3日までの日程を終え、閉幕した。

Polygonはイーサリアムのスケーリング問題解決のために開発されたL2ソリューション。取引速度や手数料の安さに強みを持ち、すでに29000以上のdAppsが開発され、130万以上のユーザーがウォレットを所持、1日あたり6万件のトランザクションがあるという。

Polygonでは、そのコミュニティをさらに活性化させるため、dApps開発支援に力を入れている。

今回100人以上のエンジニアが招待された「Tokyo Hacker House」のハッカソンでは、NFT、DeFi、メタバース、ゲームの4分門でそれぞれ最優秀プロジェクトが表彰され、総額1万ドルの賞金が贈られた。

審査基準は「クリエイティビティ、実装、ユニークさ」の3点で、6人の審査員が採点。審査員を務めたPolygonのSandipan Kundu氏は「参加作品はどれもレベルが高く、結果はものすごく僅差だった」と話していた。

NFT観賞植物の可能性

Metaplantsの開発メンバー

NFT部門でトップになったMetaplantsは、「観賞植物を枯らしてしまった」という残念な体験から生まれた、リアルに存在する植物と連動するNFTだ。

植物NFTのグラフィック・状態は、プロが預かって育てているリアル植物の生育状況によって変化する。各種データはPolygonチェーンに記録され、所有者はメタバースで観賞できる。長く育成していると「子株」が生まれる、といった仕掛けも考えているそうだ。

面倒な「給与支払」のストレスを軽減

Kanjyoの開発メンバー

DeFi部門で受賞した「Kanjyo」は、DAOなどの報酬支払い・べスティングをコントラクトで自動化し、その実績をもとにした借り入れにも活用できるようにするというソリューション。

開発者のyasek氏は「(DAOなどの)給与支払いやトークン授与(ベスト)のストレスを軽減し、その給与支払い情報を元にした借り入れを実現できないか、という観点で作ったプロダクト。リアリティある実体験からの問題提起と課題解決だったので、そこが評価してもらえたのでは」と話していた。

MMORPGの「物々交換」を再現

42Cryptoのメンバー

メタバース部門では「チーム42Crypto」が受賞した。

かつてのMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲームの略)で存在した「アイテム物々交換」のスタイルを、メタバースのNFT取引でも再現するプロダクトを提案した。

複数のアイテム交換を一括でスピーディに、ガス代削減にもつながるという。4分のデモ時間内に複数アイテムの取引を成立させ、チェーン上に書き込むことに成功していた。メンバーたちは「技術力を評価してもらえたと思う」と喜びを語っていた。

「ゼロ知識証明」活用のゲーム

Kurorin氏

ゲーム部門は、「ゼロ知識証明」を利用した数字当てゲームが受賞。開発者のKurorin氏は「Polygonが得意とする技術を活用したゲームをフルオンチェーンで作ったことが評価されたのではないか」と感想を述べていた。

受賞者のうち、Metaplants、42Crypto、Kanjyoチームには副賞として、7月6日から8日まで沖縄県那覇市で開催される招待制のスタートアップカンファレンス「IVS NAHA」への参加権と航空チケット、宿泊費などが提供された。現地では投資家へのプレゼン機会などが提供される予定だという。

「冬の時代」の心構えは?

イベントでは、開発者たちが、どんな心構えで「冬の時代」に臨むべきかも語られた。ゲストトークに登壇したマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ・元所長の伊藤穰一氏は、「バブルのときにできた関係は浅くなりがち。いまは、しっかり人間関係を作って、プロダクトをBUILDするのに良いタイミング」と回答。

伊藤氏は「セロテープ」を開発した3Mが景気後退の中でも売上を伸ばしたエピソードを紹介し、「役に立つものは不況でも伸びる」と指摘。Web3プロダクトのユーティリティを向上させていくことの大切さを強調していた。

また、JPYC代表の岡部典孝氏は、DeFiをテーマにしたトークで、「最終的には効率が良い方が勝つ。エンジニアとしてはそちらの未来に賭けたい。我々は未来を信じて、DeFiに向き合うべきだ」と、ルールが未成熟の分野に挑む際に、エンジニアが持つべき心構えを語っていた。

この逆風の中でも、きっちりと前進する人たちこそが、未来のWeb3を形作っていく。総勢300人以上が参加したPolygonの「Tokyo Hacker House」。そこに集まったプロジェクトからは「さまざまな課題を、ブロックチェーン技術によって解決していくのだ」という、エンジニアたちの覚悟が感じられた。

|取材・テキスト・撮影:渡辺一樹
|編集:佐藤茂