6月の暗号資産(仮想通貨)マーケットは、5月に引き続き厳しい環境となった。ビットコイン(BTC)とイーサ(ETH)についてはそれぞれ40%、47%の下落を記録し、両暗号資産とも一時10カ月ぶりの安値をつけた。
ドージコイン(DOGE)や柴犬トークン(SHIB)などのミームコインやメタバース関連の銘柄については、それぞれ18%、29%の下落にとどまるなど、相対的には健闘したものの、多くの投資家にとっては厳しい6月となった。
手数料収入が増加したDeFiプロジェクト
グラフからわかるように、DeFiトークンの価格は6月に軒並み下落し、AAVE(Aave)やCRV(Curve DAO Token)に至っては月間47%の下落と苦しんだ。
一方で、6月中旬以降に一時的な暗号資産マーケット全体の復調に合わせ、SNX(Synthetix)やUNI(Uniswap)などの一部のトークンは、急激に回復した傾向が見てとれる。
DeFiプロジェクト毎の手数料収入を以下の表で見てみよう。
実は、BalancerやdYdXについては1カ月間の手数料収入がそれぞれ58%、22%増加している。SNXやUNIのトークン価格上昇の原因もまさに、この手数料収入の一時的な回復であった。
CurveやAave、Lido Financeなどは、それぞれ77%、56%、42%の手数料収入減となってしまっており、DeFi全てにおける傾向ではないものの、イーサリアムベース最大のDEX(分散型取引所)、Uniswap(ユニスワップ)の健闘は市場参加者にとって非常に心強いものであったろう。
切磋琢磨するレイヤー1とレイヤー2
これらDAppsを支えるのはイーサリアムだけではない。
「イーサリアムキラー」とも呼ばれるレイヤー1ブロックチェーンのSolana(ソラナ)を開発するソラナラボ(Solana Labs)はAndroid OSを搭載した独自のスマートフォンを発表した。「Saga」と呼ばれるそのスマートフォンにはWeb3アプリの開発キットを搭載する計画だ。
一方のレイヤー2ソリューションも負けていない。その代表格のPolygon(ポリゴン)は、カーボン・ニュートラル達成に向けた取り組みを進めている。6月20日、オンチェーンのカーボン・マーケットのパイオニアとして知られる、KlimaDAOとの提携を発表した。
40万ドル相当のトークン化されたカーボンクレジットをPolygonが購入し、それを償却した。発表によると、この影響は温室効果ガス10万4,794トンの削減に相当するという。Polygonはこの取り組みを継続し、過去にさかのぼってネットワーク全体をカーボン・オフセットする指針を示した。
今後もレイヤー1、レイヤー2の動きに注目だ。
千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社し、2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。主な著作に『仮想通貨とWeb3.0革命』(2022年 日本経済新聞出版社)。
※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。
|編集・構成:佐藤茂
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