2021年夏のNFTブームの際、スリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital:当時は運用資産残高が数百億ドルにのぼり絶好調だった)は、仮名のNFTコレクター、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ(Vincent Van Dough)とともにNFT投資ファンド、スターリー・ナイト・キャピタル(Starry Night Capital)を立ち上げ、1億ドル(約136億円)の資金調達を目指した。
だが暗号資産市場が下落するなか、スリー・アローズは破産を申請、スターリー・ナイトはわずかな資金しか集められず、唯一の機関投資家は投資の減損処理を明らかにしている。
ダップレーダー(DappRader)によると、スリー・ナイトの現在の保有資産は420万ドル(約5億7000万円)。コインメトリクス(CoinMetrics)のリサーチャー、カイル・ウォータース(Kyle Waters)氏によると、スターリー・ナイトはNTF購入にこれまで2100万ドルを費やし、ときに1回あたりの購入額が数百万ドル規模に及んだという。一時期はNFTマーケットプレイス「SuperRare」の取引高の10%を占めたと同氏はツイートしている。
スターリー・ナイトのヴィンセント・ヴァン・ゴッホ氏にコメントを求めているが、返信はない。
現在、ファンドはNFTをSuperRareから新しいウォレットに移動させていると、ある有名なNFTコレクターはツイート。バーゲンセールが始まるのではないかとの憶測を呼んでいる。
100%減損処理
昨年夏、スリー・アローズとスターリー・ナイトは、イギリスのデジタルアセットファンド、KR1から500万ドル(約680億円)の出資を受けた。
KR1の6月30日付けの収支報告書によると、スターリー・ナイト・キャピタルへの500万ドルの出資は、英領バージン諸島で登録されたスリー・アローズ・ファンド(Three Arrows Fund)での「Class Starry Night Shares」の購入を通して行われたという。
シンガポール、英領バージン諸島、ケイマン諸島の認可企業を調査したところ、スターリー・ナイトという名前の企業はなかった。
KR1は、Starry Night Sharesを100%減損処理し、資産から完全に取り除いたと述べた。KR1の広報担当者は、それ以上のコメントを控えた。同社の株価は年初から80%近く下落している。
低迷するNFT市場
スリー・アローズの破産処理が始まり、スターリー・ナイトの資産評価が行われるなか、注目はスターリー・ナイトが保有するNFTがいくらで売却できるかだ。
ダップレーダーの評価は420万ドルだが、暗号資産市場は下落からまだ回復しておらず、この低い評価でさえ、まだ危ういかもしれない。
NFTデータサイトのNonFungibleによると、この3カ月、NFT二次市場(流通市場)はスターリー・ナイトが昨年、NFTを買い集めていた頃と比べると大幅に低迷している。
2022年8月12日、NonFungibleによると、NFTマーケットはピークを迎え、週あたりの一次市場でのNFT販売数は約74万6000件、二次市場での販売数は約50万6000件に達した。
だが、それは強気相場のときの話。今は一次市場も二次市場も明らかに状況は変わった。週あたりの1次市場の販売数は約6万件、二次市場は約13万4000件に減少している。
またNFTの平均価格もこの3カ月で68%減少し、628ドルとなった(NonFungibleのデータ)。顕著な例をあげると、ツイッターの前CEO、ジャック・ドーシー氏の初ツイートのNFTは、一時290万ドル(約3億9000万円)で取引されたが、今はわずか280ドル(約3万8000円)に過ぎない。
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:スターリー・ナイトが保有するNFTの1つ(SuperRare)
|原文:Three Arrows Wanted a $100M NFT Collection. Instead, It’s Worth Less Than $5M