2021年に成長したNFTマーケットも2022年5月以降の荒波に抗うことはできず、1日あたりの平均利用者数と、平均取引件数はともに微減、1日あたりの平均取引量に至っては68.7%の大幅減少となった。
世界最大規模のNFTマーケットプレイス、OpenSea(オープンシー)のデータを見てみると、その減速の様が見てとれる。
イノベーションは止まらない
マーケットが苦境にあろうとも、イノベーションが止まることはなさそうだ。
オープンシーは「Seaport Protocol(シーポート・プロトコル)」に移行し、NFTの売買にかかるガス代(手数料)をおよそ35%程度削減することを可能にした。
香港ハンセン指数で有名なHang Seng Indexes社は、ハンセン中国メタバース株式指数をローンチし、メタバース事業に関わる騰訊控股(テンセント)などの中国企業のパフォーマンスを追えるようにした。
また、「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」や「CryptoPunks」など多数の人気NFTコレクションを手がけるYuga Labsは、ブランディング・リードとして、老舗オークションハウスのChristie’sにてNFTを担当していたノア・デイヴィス(Noah Davis)氏を迎えると発表した。
NFTコレクションのランキングをリードするYuga Labsをはじめとして、これらのNFTマーケットを支えるイノベーションは、絶えず勃興・発展している。
資金調達は依然好調
苦しい環境にありながら、NFT関連の資金調達も依然健在だ。
Solana(ソラナ)ベースのNFTマーケットプレイス「Magic Eden(マジック・エデン)」は、業界で2022年6月最大の資金調達ラウンドを終えた。
coindesk JAPANの記事において報じられたように、評価額は16億ドル、2021年9月の創業ながら見事1億3,000万ドルの調達に至った。
その他にも、The Wildcard Allianceの4,600万ドル、Stripe for NFTsの2,600万ドル、Alchemyの2,500万ドル、Cryptoysの2,300万ドル、Zaigazooの1,700万ドル、ScienceMagic.Studiosの1,000万ドルなど、計10件のNFT関連の資金調達が見られた。
まだまだNFTマーケットに対する投資家の期待は高そうだ。
千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社し、2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。主な著作に『仮想通貨とWeb3.0革命』(2022年 日本経済新聞出版社)。
※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。
|編集・構成:佐藤茂
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