NFTを担保にお金を貸す“NFT-Fi”:法的保護を考える【米国編】

個人的にどう感じているかは別として、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)を無視することは、ほぼ不可能になってきている。最近の低調にもかかわらず、NFTの総売上高は、今年末までに900億ドル(約12.4兆円)を超えそうだ。ちなみに2021年の総売上高は、400億ドルという記録的な数字だった。

そのような成功によって、NFTエコシステムには、新たな参加者たちからの関心が寄せられている。貸付業者だ。

この新規参加者たちの登場によって、NFTの新しい役割も生まれた。担保だ。

NFTを担保にしたローンであっても、中古車ローンであっても、一企業の数百万ドルの借入による資金調達であっても、貸付側と借入側の動機は一貫している。

貸付側は、借り手に一時的に資産を提供する見返りに、元金に加えて課される利子を受け取る。借り手は、資産を売却せずに済む形で、流動性のある資金源を即座に欲しているため、利子を払うことをいとわない。

貸し手の保護

各資産クラスによって異なるのは、貸し手が借り手の債務不履行からどのように守られるか、という点だ。中古車市場においては、借り手が債務不履行に陥れば、貸し手は車の所有権を手にする。

担保付き融資規制(主に米国統一商事法典の第9編)という深い基盤が、借り手が協力するか否かに関わらず、車の所有権の移譲がきちんと行われるという自信を、貸し手に与えている。

では、NFTにはどんな担保付き貸付規制が適用されるのだろうか?

理論的にも、スマートコントラクトの実行においてもシンプル(借り手が返済しない場合、NFTは借り手のウォレットから貸し手のウォレットへと移動する)だが、NFTを担保として使うことに対する法的保護は、貸し手の担保権の「対抗要件」を含む複雑な問題だ。

NFTは自動車ではなく、現行の米国統一商事法典(UCC)のもとでは、「アート」ですらない。「一般無形財産」という、分類が困難な担保に最もよく使われるUCCによる財産カテゴリーか、証券や証券に類似した金融資産を意味する「投資財産」とされる可能性が高い。

NFTが一般無形財産とされた場合、貸し手が対抗要件を示すための最もシンプルな方法は、NFT所有者の所在地とされる州において、UCCの与信公示書を提出することだろう。

車の所有者の実名と住所を突き止めることはシンプルかもしれないが、デジタルネイティブで、しばしば意図的に匿名なNFTの世界において、貸し手が「MoonBoiBallz99」の所有するNFT「Bored Ape」の担保権の対抗要件を示すために、正確な与信公示書提出のための州を見極めるのは、困難かもしれない。

このようなハードルによって、与信公示書の提出はよくても現実的ではないソリューション、最悪の場合、無駄足となるのだ。

投資財産と分類されたNFTの対抗要件を示すことの方が、暗号資産に特化した貸し手や借り手には適しているかもしれない。投資財産の担保権は「コントロール」によって対抗要件が示される。

UCCによれば、貸し手は(1)NFTが貸し手のウォレットに直接預け入れられる(これは借り手にとっては好ましくないかもしれない)、あるいは(2)NFTが第三者に送られ、貸し手と借り手、その第三者の間で合意が締結される場合に、コントロールを獲得できる。

この3者間合意のもとで、借り手は貸し手にNFTの担保権を与えるが、NFTは第三者の特定のアカウント(あるいはウォレット)に保管される。その第三者は、貸し手の指示にのみ従うことに合意し、貸し手はNFTの「コントロール」を手にし、担保権の対抗要件が完成する。

このような三者間合意はしばしば「アカウントコントロール合意」と呼ばれ、第三者が銀行や銀行のような組織となる、伝統的貸付エコシステムでは一般的だ。しかし、暗号資産やNFTの世界では銀行は多くの場合、信頼できる仲介者というよりは「敵」とみなされるため、NFTを担保とした貸付をしっかりと確立するには、この空白を埋める新しいプロジェクトが必要となってくる。

レンディングの新しいモデル

すでに、NFTレンディングの世界に足を踏み入れたチームがいくつか存在している。彼らはさまざまなモデルを持ち、確かな保護や、法律によって提供されると考えられる保護のレベルも幅広い。

最も有名な例は、南アフリカのプロジェクト「NFTfi」である。分析企業デューン・アナリティクス(Dune Analytics)によると、NFTfiはその誕生以来、1万3000件近くのローンを実行し、貸付額は合計で、2億1200万ドルを超えている。

NFTfiにおける貸し手と借り手の間の合意は、両者が「署名」するスマートコントラクトに完全にもとづいているが、法的保護の観点から、このようなコントラクトがどれほどしっかりしたものなのかは、一見するとよくわからない。

NFTfiのシステム上では、貸し手にも借り手にも、言葉による明確な合意は提示されないが、全ローンの20%以上で債務不履行が発生している中でも、債務不履行を受けて担保となったNFTの移譲が失敗したとは、報告されていない。

ここ数カ月で、他にもNFTレンディングプラットフォームが登場し始めている。その一例が、12月にパンテラ・キャピタル(Pantera Capital)主導で1500万ドルのシリーズA資金調達ラウンドを完了したアーケード(Arcade)だ。これからも、さらに多くのプラットフォームが登場してくるだろう。

NFTfiのように、主にオンチェーンサービスのものもあれば、Nexo.ioのように、より繊細な店頭型アプローチ(借り手の正式な申請プロセスを含む)を提供するものもある。どんな方法であれ、このような新しいプラットフォームのどれほどが、貸付合意の法的執行性に重点を置くかは、不透明だ。

どんな市場でも同じことだが、議論するのに値する問題、見出しを飾るほど大きな問題が出てくるまでは、厳格な法的保護を求める声が上がらないかもしれない。その時が来たら、暗号資産や担保付き貸付専門の弁護士は、UCCを引っ張り出してきて、ブロックチェーンと貸付の固有な交わりを理解する準備を整えなければならない。

ジェフ・カラス(Jeff Karas)氏は、弁護士事務所Anderson Kill所属の弁護士である。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:NFTs Are Now Collateral for Secured Loans. Are You Legally Protected?