最近の暴落を受けた暗号資産(仮想通貨)界隈では、希望に満ちたメッセージが出回っている。
分散型金融(DeFi)に関するニュースレターを手がける「Bankless」のドノバン・チョイ(Donovan Choy)氏は、ニュースレターの見出しで「CeFiは崩壊。DeFiは壊れなかった」と主張した。
暗号資産ヘッジファンドのパンテラ・キャピタル(Pantera Capital)の創業者兼CEOのダン・モアヘッド(Dan Morehead)氏は、苦戦する中央集権型レンディングプロトコルのセルシウス(Celsius)、ブロックファイ(BlockFi)、ボイジャー・デジタル(Voyager Digital)を、誤って分散型金融に分類したウォール・ストリート・ジャーナルの記者を非難し、「DeFiは素晴らしく機能した」と主張した。
さらに、暗号資産取引サービスを提供するシェイプシフト(ShapeShift)の創業者エリック・ボーヒーズ(Erik Voorhees)氏は、DeFiの「価格は下落」しているが、「システムが崩壊」している兆候はほとんどないと語った。
この業界での議論の大半と同じように、この見方は部分的には正しいが、誤解を招くものでもある。
確かに、中央集権型の構造が、危機に陥った様々な貸付業者の破滅の大きな要因の1つであった。顧客が預け入れた資産をカストディし、再担保することによって、再投資されたローンの価値が下がり、レバレッジを解消しなければならなくなった時に、返すことのできない大量の借り入れを生み出したのだ。
対照的に、メイカー(Maker)やアーベ(Aave)などのDeFiプロジェクトにトークンを貸し出した人たちはおおむね、必要な時にローンやコラテラルを自動的に償還するスマートコントラクトによって守られている。
Banklessの共同立ち上げ人であるライアン・ショーン・アダムス(Ryan Sean Adams)氏が指摘した通り、CeFiがDeFiからのローンだけは返済しているのは「コードによってローンの返済を強制されているから。法律でも、弁護士でも、裁判所でもなく」、コードによってなのだ。
しかし、DeFiとCeFiの失敗の間のつながりは、見た目以上に強い。事の発端であるテラがDeFiプロジェクトであった、というだけではない。DeFiユーザーにとって、DeFiトークン価格の暴落がローンのデフォルトとあまり変わらないということだけでも、DeFi創業者たちによる詐欺や「ラグプル(資金の持ち逃げ)」によって、何十億ドルもが失われた、というだけの話でもない。
本当の問題は、DeFiプロジェクトが提供していた高い利回りの相互関係、その利回りが基盤としていたトークン価格が「値上がりするばかり」という持続不可能な見込み、そしてそこから生まれたCeFiとDeFiの投機の複雑な相互関係なのだ。
システム全体を改善する
DeFiは、金融の世界に多くをもたらすことができる。DeFiスマートコントラクトが、このような極めて厳しい市況においても、価格はともかく「システム」を維持するために、約束通り機能したという事実は、より堅固で実用的なシステムを築く基盤となる優れた概念実証である。
スキャンダルに次ぐスキャンダルの中でも、ウォール街の中央集権型仲介業者が1世紀以上にわたって、グローバル金融システムからお金を取ってきたことを思い起こせば、よくわからないゲートキーパーよりも、市場に価格や金利を設定させることのメリットを見出すのは簡単だ。
しかし、現在のような作りでは、DeFiは非常にボラティリティが高く、あらゆる操作に対して脆弱だ。DeFiサービス向けのセキュリティを手がけるイミューンファイ(Immunefi)の報告書によれば、市場低迷の最悪の時期がやってくる前、2022年第1四半期には、Web3全体で詐欺やハッキングの被害額は13億ドルにものぼった。
資産のカストディやローン返済のモデルがどれほど分散化していても、プロジェクトのコードが攻撃に対する脆弱性を抱えていたり、原資産であるトークン価格が短期間で激しく下落しがちであれば、既存システムの競合としての現実性はほとんどない。
つまり、DeFiに安全性と安定性をもたらすための努力が必要なのだ。
投機や桁外れの値上がりの見込みが生み出す裁定取引のチャンスではなく、何か具体的なものを基盤に利回りを確立できるよう、実世界でリターンを生むようなユースケースがあれば良い。
さらに、分散化の恩恵を台無しにしてしまわないような形で、正式の規制と自己規制を組み合わせた、実効性のある規制の枠組みを考案する必要もある。
市場で大規模なレバレッジ解消が起こっている時期に、CeFiよりもDeFiがうまくやっているという事実は、より安全な規制と投資保護のシステムを構築するための、基盤となってくれるだろう。
真に管理が分散化されているとみなされた場合、自らのシステムに対するコントロールを手放したリーダーたちにコンプライアンスを課すのではなく、コードの監査、バグへの懸賞金、そして厳格なテストに重点を置いたシステムとするべきだ。
一方、CeFi組織に対しては、伝統的金融の世界で確立された仲介業者に適応されるのと同じ水準の規制を求めるべきである。
システム全体が機能するためには、これらの異なる世界の相互関係を理解する必要がある。片方を切り捨て、もう片方だけに注力しては、暗号資産金融プロジェクトは、昨今の醜態を繰り返すことになってしまうだろう。
|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
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|原文:CeFi Broke. But DeFi Is Not Without Blame