「暗号資産の冬」にビットコインに投資する理由【コラム】

ビットコイン(BTC)の世界に冬がやってきた。私にとっては2度目の「ビットコインの冬」となるが、この先も何度もこんな季節がやってくるだろう。

こんな寒さの厳しい時には、史上最もボラティリティの高い資産の1つであるビットコインを保有する意義を疑問に思うことがあるかもしれない。値上がりしている時のボラティリティは気にならないが、値下がりしている時のボラティリティには不安になってしまうものだ。

そんな時は、ビットコインの強み、ビットコイン保有の長期的メリットがリスクをはるかに上回ることを思い出せば良いのだ。

逆境を生き抜く

ビットコインは誕生以来、何度もその値段を50%以上下げている。その内4回が、長期的な暗号資産(仮想通貨)の冬へとつながった。

ビットコインは、これまでのすべての暗号資産の冬から、しっかりと回復して見せている。そのことは私たちに、今回もビットコインは冬を凌げるという自信を与えてくれるのだ。

特にビットコインは、暗号資産市場の他のプロジェクトに比べて、市況の変化に対して一段とレジリエントであった。

現在トップ20のデジタル資産を考えてみよう。そして5年間時計を巻き戻し、前回の強気相場の始まりまで戻ってみよう。当時のトップ20トークンのうち、今でもトップ20に残っているトークンはどれくらいあるだろうか?2度の価格サイクルを経て、ビットコインと比べて、かつての栄光を取り戻したトークンはどれほどあるだろうか?

Stratis、bitshares、bytecoin、golem、steem、saicoin、bitconnectなどは、今では時価総額でトップ100にも入らない。過去のデータを見てみれば、時価総額トップ10のトークンでさえも、ここ数年で大幅な変動を経験したことがわかる。

現在取引されるデジタル資産のうち、ビットコインは13年前の誕生以来、時価総額トップを保ち続けているのだ。そしてその間、5年ごとに魅力的な投資リターンを提供してきた。

ポートフォリオ強化

歴史的リターンと言えば、私は2019年に出版した本『Why Buy Bitcoin(ビットコインを買う理由)』の中で、歴史的価格データにもとづいて、分散投資のポートフォリオにビットコインを含めるリスクとメリットの分析を紹介した。

現在のポートフォリオ理論は、「全体は部分の総和に勝る」という考えを支持している。ビットコインは、他の多様な資産とともに、様々な経済的シナリオから投資家を守り、そこから利益を得る助けになるのだ。

最近の値下がりの後でも、多様化したポートフォリオにビットコインを含めることのメリットが、分析で証明されている。数字ははっきりと、ビットコインが分散投資のポートフォリオに価値をもたらすことを示しているのだ。

ゴールドに勝る

ビットコインは投資先として、数え切れないほどのメリットを持っているが、最もはっきりしたものは「デジタルゴールド」としての側面だ。

金(ゴールド)同様、ビットコインは通貨資産であり価値の保管手段である。人々が愛してやまない希少性というゴールドの性質を、ビットコインも持っている。

しかし、通貨のとりわけ重要な多くの性質という点では、ビットコインはゴールドに勝る強みを数多く持っていると言える。移動しやすさ、分割しやすさ、没収しにくさ、安全性、プライバシーなどだ。

ゴールドと異なり、ビットコインは数の制限なく、電子的に送ることができる。金塊と異なり、小さな単位に分割するのも簡単だ。ビットコインはまだ新しいもので、サイバー攻撃の脅威に耐性を持っている訳ではないが、安全に守るのが難しい金塊とは対照的に、暗号化されたデジタルウォレットに安全に保管することはできる。さらにゴールドとは異なり、ビットコインは支払いを直接監視する銀行や政府といった第三者抜きに、やり取りが可能だ。

ビットコインのメリットをもう1つ。現在ゴールドの合計価値の4%に満たないビットコインには、成長の余地が多く残されているのだ。

自分で自分の銀行になれる

大半の人はまだ、ビットコインそのものを所有する心の準備はできていないだろう。暗号資産取引所でビットコインを購入するよりは、例えば上場投資信託(ETF)といった形で投資することを好むはずだ。

時間とともに、より多くの人たちが先見の明を持ち、ビットコインそのものを保有したがるようになるだろう。この先の経済的混乱を見越して、没収が極めて困難で、インターネット接続のあるところならどこでも動かせる資産に、自分の資産の一部を配分することの価値を認識するはずだ。

ビットコインには、資産を保管する仲介業者が必要ない。極端な経済状況における銀行の取り付け騒ぎのような心配のある法定通貨とは異なり、誰でもが自ら所有している状態を維持することができる。

真のリスク

投資としてのビットコインについて、私の気持ちを揺るがせるものはあるかと聞かれることがある。短期的には注目するべきは、次の3つの点のみだ。

1. システムの技術的不具合

ビットコインについて、私の考えを変える可能性のある数少ない出来事の1つは、システムの技術的不具合だ。ビットコインネットワークが取引ブロックを定期的に処理できなくなったら、それは大きな赤信号となるだろう。

私がビットコインを注視してきた過去5年間では、今のところそんな事態にはなっていない。しかしもしそうなったら、評価を改めることになるはずだ。

2. 規制

デジタル資産に対して、より厳しい規制がやってくるだろうか?それは間違いない。だからこそ、規制の観点から言えば、今ほどビットコイン保有に良い時はないのだ。

私は証券専門の弁護士ではないが、私の分析によれば、証券業界で証券かどうかを見極めるのに使われる基準「ハウィー(Howey)テスト」にもとづいて、明確に証券ではない唯一の主要デジタル資産がビットコイン。米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長も同意見のようだ。

関連記事:「ビットコインはコモディティ」SEC委員長の考えは正しいか?

3. 政府の動き

米連邦準備制度理事会(FRB)が、過去80年間に溜め込んだ負債をきれいにするために、経済を不況に追い込むと考えているのなら、ゴールドやビットコインのように供給量の決まったハードマネー資産は避けた方が良いだろう。米ドルが1番だ。

しかし、FRBは2度目の世界大恐慌をもたらすことは選ばず、負債に対処するためのより現実的な道はインフレだと考えているなら、ビットコインはあなたのポートフォリオに居場所を見出せるだろう。

私の考えでは、政府は2020年代にインフレを抑え込むのに苦戦するはずだ。ビットコインが、ポートフォリオで最も重要な資産となるほどかもしれない。

私の見立てが当たった場合、今ビットコインに投資しなければ、ここ10年で最も重要な資産に投資しそびれたことを、ひどく後悔することになるかもしれない。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:The Case for Investing in Bitcoin During Crypto Winter