2021年、米コインベース(Coinbase)は上場申請書類に近い将来ではないが、現実的な脅威について書いている。
DEX(分散型取引所)だ。
当時、DEXは小さな悩みの種、無視できる問題であり、存在を脅かすものではなかった。だが今、DEXはコインベースの顧客層を削り取るようなものに進化している。理由を考えてみよう。
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弱気相場
コインベースは多くの現金を保有しており、セルシウスやスリー・アローズ、ボイジャーに投資していない。同社株は機関投資家にとって依然として魅力的だ。確かに株価はビットコインよりも大きく下落している。これには規制など他の理由があるが、ここでは問題ではない。
現在の弱気市場は、コインベースの上に暗い、嵐のような雲がかかっていることを意味する。ビットコインにとって、2万1000ドル付近での盛り上がりは、2021年はじめの強気相場とはまったく違う。
しかし、コインベースにまつわる懸念はこれが理由でもない。
同じ取引高
カイコ(Kaiko)のデータを見ると、今、代表的なDEX「ユニスワップ(Uniswap)」の取引高は、コインベースとほぼ同じ。
Uniswap and Coinbase now have nearly equal daily volumes.
— Clara Medalie (@Clara_Medalie) July 18, 2022
27% in January–> 49% today. pic.twitter.com/DmqLjiocoP
1日あたりの取引高は、コインベースが12億ドル、ユニスワップが11億4000万ドル。イーサリアムのネットワーク手数料の大幅な低下と、ステーブルコイン取引におけるDEXの役割が拡大したことが要因とカイコは記している。
ただし2021年の売上高を見ると、コインベースは78億ドル、ユニスワップは5億3400万ドルに過ぎない。
この数字の違いは大きく見えるだろう。だが重要なポイントは効率性だ。コインベースの従業員数は3700人強、ユニスワップは53人。
取引高は同じレベルに近づきつつあるが、売上高の違いは事業構造の違いだ。DEXは、各取引を実現する流動性プロバイダーに手数料を支払う必要がある。手数料は、取引高の大きな取引ペアは0.05%、それ以外は0.3%〜1%になる。
異なる事業構造
ユニスワップは取引高ではコインベースに並びつつあるが、双方は異なるプロダクトだ。コインベースは個人投資家が簡単に参入でき、取引できることをベースにしている。先進的な機能を提供しているが、ユニスワップを目指しているわけではない。
一方で、ユニスワップはユーザーフレンドリーなプラットフォームではなく、コインベースの主要マーケットである個人投資家を狙っているわけではない。間違いなく、パワーユーザー向けだ。
だがもし、個人投資家が暗号資産市場の回復に参加できなければ、コインベースの取引高と売上高は成長を見込めない。もし投機家たちが大きく投資するなら、ユニスワップの取引高は大きく伸びる。
表面的には、双方が真に競合することはないといえるかもしれない。だがコインベースは申請書類に以下のように書いている。
「我々は、増え続ける分散型でノンカストディアルなプラットフォームと競合している。そして我々のビジネスは、もしそれらと効率的に戦うことができなければ、悪影響を受ける可能性がある」
「そうしたプラットフォームは、市場参入にあたって規制されていないことが多いため、立ち上げコストや参入コストが低く、運用コストや規制コストが最小限に抑えられている」
|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:First Mover Asia: Is DEX Efficiency a Threat to Coinbase Long-Term?; Bitcoin Sinks Below $22K