NBAスターが世代を超えた富を築くためにWeb3を使う

米スポーツ誌『スポーツ・イラストレイテッド』の2009年の報道によれば、元NBAプレイヤーの約60%は、引退後5年以内に破産する。この問題は、NBAだけに限ったことではない。

元NFLプレイヤーの78%も、引退後わずか2年で破産、あるいは経済的な困窮状態に陥ると報じられている。このようなアスリートの過半数が、有色人種コミュニティ出身であり、そのようなコミュニティが偏って資源不足であることを考えると、成功し、これらのコミュニティに金銭的に投資できる最高の立場にいる人たちが、自らの財産を維持、拡大させるのに苦戦しているというのは、深刻な問題だ。

Web3が経済的メリットを伴うテクノロジーとして台頭するに伴って、プロのアスリートには、引退後の人生における悲しいパターンを変えるチャンスがある。NBAプレイヤーは全体として、新しいテクノロジーをすばやく採用し、多くの場合、新興のテクノロジーを大衆が採用するのを先導することができるのだ。

2008年北京オリンピックで、ラブロン・ジェームズ選手がアメリカ男子バスケットボールチーム全員にBeats by Dreのヘッドフォンをプレゼントした時の、マーケティングブームが好例だ。当時多くの人がただのアスリートだと考えていたジェームズ選手は、新興の革新的プロダクトに静かに初期投資。7億ドルもの莫大な経済的見返りを手に入れることとなった。

「安値で買って、高値で売る」は長年、株式市場における指針となってきた。ジェームズ選手は2008年のオリンピックで、このモデルを上手く活用したのだ。現在、Web3やメタバース、暗号資産(仮想通貨)業界はまだ形になる途上であり、投資家のほとんどもまだ初期の投資家。NBAプレイヤーのますます多くも、その一員となっている。

プロになってから数年以内にチャリティー団体を始めるNBAプレイヤーの多くが、高報酬の時期を伸ばし、コミュニティを豊かにする取り組みへと資金を注ぎ込もうと、自らの立場を利用している。

アスリートとWeb3の連携

NBAロサンゼルス・クリッパーズの4年目テランス・マン(Terance Mann)選手は、売り切れた1万のノン・ファンジブル・トークン(NFT)コレクションからWeb3ゲーム企業へと転身したChibi Dinosとパートナーシップを結んだ。マン選手は確立されたNBA市場における自らの新しい立場を活用し、新興のWeb3ゲーム市場へと進出。自らのブランドを確立し、自らが大切に思うコミュニティに恩恵をもたらそうとしている。

レブロン・ジェームズ選手がWeb3に進出したのも、自身のチャリティー団体とクリプト・ドットコム(Crypto.com)とのパートナーシップを通じてだった。

「ブロックチェーンテクノロジーは、私たちのエコノミー、スポーツ、エンターテイメント、アートの世界、そして私たちが互いに関わり合う方法に革命をもたらしている」とジェームズ選手は声明で語り、「私が生まれ育ったようなコミュニティが、取り残されないようにしたいのだ」と続けた。

ジェームズ選手の「I Promise」学校では、生徒たちにブロックチェーンという新しい市場を紹介し、不利に置かれた若者たちの人生における不平等さを減らすための長期的戦略の一部として、ブロックチェーンテクノロジーの基本を教えている。

私たちのプロジェクト「ランブル・コン・リーグ(Rumble Kong League)」もまだ新しいものだが、ブロックチェーン分野へと進出し始めた定評のある企業を、投資の価値がある持続可能な未来を示唆する先駆者と見ている。

例えば、スポーツ賭博のドラフトキングス(DraftKings)だ。彼らは「スポーツがブロックチェーン普及の主な推進力」になり、「デジタルコレクション品がそのプロセスの重要な一部」になると信じている。ジェームズ選手の助けを借りて、ナイキがロブロックス(Roblox)のメタバースに進出したのも、そんな一例だ。

Web3テクノロジーは明らかに、ブランド、アスリート、彼らが大切に思うコミュニティにとって価値あるものだ。NBAプレイヤー、ケビン・デュラント選手のサーティー・ファイブ・ヴェンチャーズ(Thirty Five Ventures)の一部であるケビン・デュラント・チャリティー・ファウンデーション(Kevin Durant Charity Foundation:KDCF)は、スポーツ、ビジネス、文化の交わる場において、アスリートの観点からの深いストーリーを届けるメディア「ボードルームTV(Boardroom TV)」の親会社でもある。

KDCFは今年5月、暗号資産(仮想通貨)取引所のコインベースと共同で、成長を続けるブロックチェーンやWeb3業界について学ぶことを熱望するマイノリティの学生たち50人に「クリプト大学(Crypto University)」での学びのチャンスを与えた。このような取り組みは、デュラント選手がKDCFを通じて運営する複数のコミュニティエンパワメント活動へとも還元される。経済的なエンパワメントであると同時に、認識を広めることでもあるのだ。

40年前、音楽業界の実力者ジミー・アイオヴィン(Jimmy Iovine)氏は、ブラックカルチャーを、ビジネスを推進する影響力の豊かな源泉であると正しく認識した。

アイオヴィン氏は、音楽レーベル「インタースコープ・レコーズ(Interscope Records)」を通じて、多くの有色人種アーティストや、資源不足のアーティストの発掘に時間と資金を費やした。その中には、ドクター・ドレーや50セント、エミネムなどが含まれる。

文化の源泉に継続的に力を与える

アイオヴィン氏の取り組みは幅広く認められ、尊敬を集めていたが、Web3エコノミーは、究極のオープンAPIであるブロックチェーンを活用して、アスリートやアーティストが自分のNFTコレクションなどから直接報酬を得ることを可能にし、仲介者などの必要性を除外することができる。

ブロックチェーンテクノロジーの力を活用するNFTミュージックは、垣根を越える音楽の人気のおかげで、初期の普及と、メインストリームでの理解の間のギャップを埋める革新的な用途だと考えられている。アートも、確立された世界において、NFTやWeb3アートに買い手とクリエーターが価値やチャンスを見出すことのできる分野の1つだ。

クリエターエコノミーは、経済的な起爆剤を歓迎する準備は整っている。自らの作品から経済的報酬を得ることのできない飢えたアーティストという長年の問題は、すぐにでも正すことができるのだ。

スマートコントラクトを通じて、アーティストは将来的な取引から分け前を自動的に受ける販売条件を設定できる。例えば私が、ランブル・コン・リーグのプロフィール画像NFTを、69.60ドル相当の0.05イーサ(ETH)で販売するとしよう。

そしてオークションハウスのサザビーズが私からそのNFTを買って、来年の強気相場で800ETH(110万ドル相当)で売却する。私がスマートコントラクトに15%のリベート条項を含めていたとしたら、交渉や面倒ごとなしに、16万7037ドルを受け取ったと、即座に通知を受け取ることになるのだ。

ブラックカルチャーは間違いなく人気があり、ビジネスを促進する。しかし、多くの企業に1年で何十億もの利益をもたらす一方で、ブランドアイデンティにインスピレーションを与えた源は、のけ者にされてしまう感じだ。

Web3テクノロジーは、十分にサービスを受けていないコミュニティ、十分な金銭的見返りを受け取っていない業界、そして新興のテック市場の間の架け橋として、目に見えるブラックカルチャーのリーダーたちに力を与えることで、その溝を埋めるための手段を生み出している。

このビジョンは具体的なものだが、有色人種コミュニティだけに恩恵を与えるのではなく、アーティスト、コレクター、ニューヨーク州ブルックリンなどの十分なサービスを受けることのできていない有色人種の人たちが住む都市の生徒たちなどを含め、これらの業界の影響を受けるあらゆる人たちに恩恵をもたらす。

私たちは、皆が同じチームの一員であると感じており、ランブル・コン・リーグで開発中のメタバースバスケットボールリーグを通じて、NBAアスリートや自分たちのコミュニティに力を与える準備ができている。これから10年で、私たちが正しかったかがどうかが証明されるだろう。

マーカス・ブラッシェ(Marcus Bläsche)氏は、選手、ファン、ブランドのためのメタバース内のバスケットボールリーグ「ランブル・コン・リーグ(Rumble Kong League)」の共同創業者兼CEOである。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Rumle Kong League
|原文:Why NBA Athletes Are Turning to Web3 to Build Generational Wealth