スマートコントラクト・プラットフォームとは何か【基礎知識】

CoinDeskインデックスでは2021年12月、デジタル資産業界を定義するための基準を設定するため、デジタル資産分類基準(DACS)を発表した。

時価総額でトップ500のあらゆるデジタル資産は、DACSの定義に従って何らかの業界に分類され、少なくとも1つの業界で1つの業界グループを構成、そして少なくとも1つの業界グループで1つのセクターを構成している。

現在DACSで定義されるセクターは6つ。通貨、コンピューティング、DeFi(分散型金融)、デジタル化、カルチャー&エンターテイメント、スマートコントラクトプラットフォームだ。

スマートコントラクトプラットフォームセクターはDACSの中で2番目に大きなセクターで、2022年4月時点で約5760億ドル規模のデジタル資産市場の33.1%を占める、80の資産が含まれている。

DACSを構成するセクターの2022年4月30日時点での時価総額比率
出典:CoinDeskインデックス

当記事では、スマートコントラクト・プラットフォーム・セクターの定義、構成、デジタル資産分野における重要性を考察することで、その詳細を掘り下げていく。

スマートコントラクト・プラットフォーム・セクターの定義

スマートコントラクト・プラットフォームとは、分散型アプリ(Dapp)を開発するための基盤を提供するブロックチェーンだ。Dappは、事前に設定された条件が満たされると実行されるもので、分散型金融やその他のブロックチェーンアプリケーションの運営や成功に欠かせない。

スマートコントラクト・プラットフォームを実現する大切な機能が2つある。まず、カスタムスマートコントラクトを開発できるような、開発者フレンドリーなプログラム言語との互換性。

次に、取引のファイナリティ(確実性)と、ネットワーク全体のセキュリティを確保するために、ブロックを定期的に検証するノードのネットワークが維持するコンセンサスメカニズムだ。

DACSの用語集では、スマートコントラクト・プラットフォームを次のように定義している。

スマートコントラクトとは、コントラクトの条件を実行するコンピュータ化されたブロックチェーンプロトコルである。スマートコントラクトは、双方がコントラクトの条件を満たした場合、自動的に実行されるようにするコンピューターノードを表す。これによって、トラストレス(信頼できる第三者不要)なピアツーピアの取引が可能になるのだ。

スマートコントラクト・プラットフォーム資産は、分散型アプリケーション、レイヤー2スケーリングソリューション、自律分散型組織(DAO)、他のカスタムプロトコルの開発のために作られている。

すべてのプラットフォームは、ビザンチン・フォルト・トレラント性を活用する独自のオープンソースユーザー・マイナーインセンティブの仕組みを持っている。

さらにあらゆるプラットフォームは、プラットフォーム上での開発に向けた支払いのためにネイティブトークンを活用。流動性を提供し、ネイティブトークンと、プラットフォーム上で開発された新しいトークンとの間の相互運用性を実現している。

ビザンチン・フォルト・トレラント性:ビザンチン将軍問題(相互に通信しあう何らかのオブジェクト群において、通信および個々のオブジェクトが故障または故意によって偽の情報を伝達する可能性がある場合に、全体として正しい合意を形成できるかを問う問題)が発生しても全体として正しく動作するシステム(Wikipedia)

スマートコントラクト・プラットフォーム・セクターの業界グループ

スマートコントラクト・プラットフォーム・セクター内の業界グループは、資産が他のチェーンとの相互運用性を持つかどうかによって決まる。シングルチェーンと、マルチチェーン/パラチェーンという2つの業界グループが存在している。

シングルチェーン業界グループには、あらゆる取引が主要な分散型台帳に記録されるレイヤー1ブロックチェーンが含まれる。シングルチェーンでは、取引能力を高めるために、主要ブロックチェーンに接続されたままのレイヤー2スケーリングソリューションが活用できる。

マルチチェーン/パラチェーン業界グループには、複数の並行するブロックチェーンと、クロスチェーン相互運用性を可能にするスマートコントラクト・プラットフォーム資産が含まれる。

これは、外部の並行するチェーン「パラチェーン」のためのスロットを可能にするリレーチェーンによって構成することが可能だ。リレーチェーンでは、セキュリティやブロック実行をプールすることが可能で、各パラチェーンは、それぞれ固有のスケーラビリティ水準を実現できる、独立した、個別に検証されるブロックチェーンとなる。

スマートコントラクト・プラットフォーム・セクター内では、シングルチェーンの方がより開発が進んでおり、時価総額の約90.6%を占めている。しかし、相互運用性に対する需要の高まりを受けて、マルチチェーン/パラチェーン業界グループ内にも、30のデジタル資産がある。

スマートコントラクトプラットフォームセクターの業界グループ内訳
(シングルチェーン:90.6%、マルチチェーン/パラチェーン:9.4%)
出典:CoinDeskインデックス
業界グループ時価総額
(ドル)
資産数時価総額比率
シングルチェーン522,339,090,9865090.6%
マルチチェーン/パラチェーン54,172,131,547309.4%
スマートコントラクトプラットフォームの業界グループデータ
出典:CoinDeskインデックス

スマートコントラクト・プラットフォーム・セクター内の業界

スマートコントラクト・プラットフォーム・セクター内において、各業界グループは現在、単独の業界から構成されている。そのため、セクターの業界構成は、業界グループ構成と同じだ。しかし、セクターが成長するに伴って、さらなる業界が登場してくることも考えられる。

スマートコントラクト・プラットフォーム・セクター内の主要資産

スマートコントラクト・プラットフォーム・セクター内には80のデジタル資産があるが、イーサ(ETH)がセクター全体の半分以上を占め、トップ10の資産がセクターの90.6%を占めている。

シングルチェーンの中では、イーサ以外に主要な資産は、それぞれ独自のブロックチェーンとDappエコシステムを持つカルダノ(ADA)とソラナ(SOL)。

他のパラチェーンのハブとして機能するレイヤー0リレーチェーン、ポルカドット(DOT)と、一連のサブネットワークのための主要ネットワーク、アバランチ(AVAX)は、マルチチェーン/パラチェーン業界に含まれる主要資産である。

スマートコントラクトプラットフォームセクター内の主要資産
出典:CoinDeskインデックス

結論

スマートコントラクト・プラットフォーム・セクターは、高水準の開発とリソースを惹きつけるイノベーションにとって、豊かな環境を育む傾向がある。

これらのプラットフォームは、ネットワーク効果、分散型コンセンサスメカニズム、様々なプログラム言語との互換性を活用し、クリエイティブで革新的な開発者たちが、分散型取引所(DEX)、レンディングプラットフォーム、NFTマーケットプレースなど、幅広い目的のためのプロトコルを開発することが可能になっている。

スマートコントラクト・プラットフォームは、デジタルエコノミーの基盤として機能する。これらのプラットフォーム上で築かれたDappは何百万人ものユーザーを惹きつけ、個人が自らの資産や取引に対してより大きな所有権を握れるよう個人に力を与え、幅広いチャンスを秘めた、急成長するエコノミーを作り出している。

さらに、ネットワーク効果を通じて、正の強化サイクルも促進する。より多くのDappが幅広いスマートコントラクト・プラットフォーム上で開発されるに伴い、新しいユーザーがネットワークへのアクセスを得るためにネイティブトークンを購入・利用する。

こうして、ブロックチェーン上で実行される各プロトコルのための、取引ベースの決済レイヤーとして機能するプラットフォームは、収益と需要の高まりから恩恵を受ける。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:The Smart Contract Platform Sector Explained