Mergeでイーサリアムはフォークするのか──リスクフリーでETH PoW獲得を狙うトレーダーの動き

イーサリアム(ETH)の先物市場は8日に「バックワーデーション(逆ザヤ)」となり、3カ月先物は2020年3月の新型コロナウイルス感染拡大による暴落以来、スポット(現物)価格に対して最も大きなディスカウント(割引率)となった。

Skew(スキュー)のデータによると、バイナンス上場の3カ月先物はスポット価格に対して年率6%のディスカウントとなり、OKExとFTXでは4%超のディスカウントとなった。

今回のバックワーデ ーションは、トレーダーが「Merge」による価格の乱高下から強気のスポット市場の投資を保護し、ハードフォークの可能性から安全にフリーマネーを得るためにショートポジションを取ったことが原因のようだ。先物市場は通常、資産の時間的価値と保有コストを表し、スポット市場よりも価格は高くなる。バックワーデーションに対して「コンタンゴ」と呼ばれる。

イーサリアムが分裂する可能性

9月19日に予定されているMergeを前にイーサリアムは上昇しているが、アップグレードがスムーズに行われるとは限らない。

例えば、中国人著名マイナーのチャンドラー・グオ(Chandler Guo)氏はMergeに反対している。この動きが活発化すれば、イーサリアムブロックチェーンはフォーク、つまり2つに分裂し、新しいPoSチェーンはイーサリアムをそのままネイティブトークンとし、これまでのPoWチェーンは独自のETH PoWトークンを立ち上げる可能性がある。そして、フォーク時にイーサリアムを保有していた者はETH PoWトークンを無償で受け取ることができる。

「現状は、フォークが起きた場合にETHPoWトークンを得るためにスポット市場を通じてイーサリアムをロングし、先物市場で投資をヘッジするという今、人気の取引からの需要を反映している」とGenesis Global Tradingのシニア・リサーチ・アナリスト、シニア リサーチアナリスト、エインスリー・ツゥー(Ainsley To)氏は述べた。

出典:Skew

シンガポールに拠点を置く暗号資産デリバティブ大手のQCP Capitalも先週、同様の見解を表明、「スポット市場でイーサリアムを保有すると、価格リスクを取ることなくETH PoWを獲得することができ、ロングポジションは先物をショートすることでヘッジdけいる」と述べている。

QCPは、このいわゆる「リスクフリー・トレード」に大きなポジションを保有している。Mergeが近づくにつれてバックワーデーションが大きくなることを期待し、同社はこのポジションをしばらく保持する意向をテレグラムで表明している。

イーサリアムブロックチェーンの共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は、ハードフォークの可能性がMerge後のPoSチェーンに永続的な影響を及ぼすとは考えていない。

しかし、BitMEX、Poloniex、OKExなど、一部の取引所は、フォークへの支持を表明している。トロン(Tron)の創設者ジャスティン・サン氏もフォークを支持し、Merge後に既存のイーサリアムブロックチェーンを支援すると表明している。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:Skew
|原文:Ether’s Deepest ‘Backwardation’ Since 2020 Crash Shows Traders Prepping for Ethereum PoW Split